SaTo_yu99’s blog

主に戦術的な視点からサッカーに関する執筆をしています。 Manchester United🔥

22/23 CL決勝 インテル vs マンチェスター・シティ 戦術マッチプレビュー

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両者の現状

両者共に直近でのカップ戦を制しており、負傷者に関してもインテルはコレアのみ、シティはいないなど、盤石の状況で決勝に臨む。

予想されるフォーメーションとスカッドは以下の通り。

直前の怪我や相手への対策として他のところが別の選手となったり、そもそも違うシステムを採用したりする可能性もなくはないが、恐らく争点となるのは両者一つずつだろう。

インテルは3センターがムヒタリアン、チャルハノール、バレッラになるか(CLミラン戦)、チャルハノール、ブロゾビッチ、バレッラになるか(CIフィオレンティーナ戦)である。

シティは左SBをアカンジとするか(直近)、アケとするか(シーズン通して)である。

 

試合の見どころ(個人的考察)

シティの攻撃/インテルの守備

5-3-2のミドルプレスからIHが出て5-2-3

インテルが、2トップと3センターで相手2センターを消すかたちで中央封鎖する5-3-2のミドルプレスをベースとすることは、間違いないであろう。

完全に中を締めた陣形を作ってサイドへ誘導。

2トップ脇のスペースに、IHが縦スライドで出て行って牽制し、残りの2枚(AC、逆サイドIH)で中央のスペースを埋めつつ、近くのCBが縦スライドしてライン間の相手選手をマンツーマン気味に捕まえる。

このようにして、中央封鎖した状態からサイドへ誘導し、近くの相手選手を捕まえることで、ボールサイドへ圧縮するスタイルの守備を行う。

ストーンズが偽CB化する3-2-4-1

シティはグアルディオラが何か奇策を考えていなければ、いつも通り、ストーンズが偽CB化して2センターを形成、WGで幅、IHでライン間を取る3-2-4-1で組み立てるはずだ。

中盤を使った内経由のレイオフ(CB→CH or IH→CB)を使ったり、CBからロングパスでの大きな展開を使うなど、プレスの的を縛らせずにポゼッション。

保持をベースとしつつ、幅とライン間を使いながら相手ブロックを揺さぶることで、スライドのズレを作って空いたところから段階的に前進する。

このように、配置的優位性(→3バックと2センターで安定して組み立てつつ幅とライン間を使った打開)だけでなく、プラスアルファとしてシティに足りなかった質的優位性(→ハーランドの加入もあり個の能力の高さを活かした打開)も兼ね備えており、これらを合わせて攻撃を行う。

 

オールコートマンツーマンの3-2-1-4のハイプレス

ベースはあくまでミドルプレスだが、オフェンシブサードでハイプレスを行うときはWBが相手SBまでジャンプする3-2-1-4となり、オールコートマンツーマンで圧力をかける。

 

ハーランドとデブライネを活かす4-2-1-3

人を捕まえに来るハイプレスに対しては、ギュンドアンが下がって2センターを形成し、デブライネがトップ下気味となるGK+4-2-1-3の配置に。

後ろに重めの配置となるが、それによって相手6枚を釣り出し、その背後の広大なスペースで数的同数を生成することに成功。ロングボールも使いながら、デブライネとハーランドの質的優位性を活かして疑似カウンター気味に前進し、そのまま一気にゴールへ。

ただでさえ、個人の能力がずば抜けて高いデブライネとハーランドを数的同数を止めることは容易でないが、彼らは関係性も抜群だ。ハーランドが裏抜けを狙って相手CBを引っ張り(深さ)、自由に動くデブライネがその手前で引き出す(ライン間)かたちや、ハーランドがフォルス9気味に降りてポストし(ライン間)、デブライネが二列目から飛び出す(深さ)かたちなど互いに深さとライン間を上手く使いながらアドリブ的にゴールへ向かうことも。

 

撤退して5-3-2のブロック

撤退してリトリートになっても、ミドルプレス時同様中央封鎖した5-3-2でブロックを作る。

相手としてはやはり中央からの前進が難しいため、サイドを起点にしようとする。しかし、CBとWBにプラスで、横スライドしたIH、ACやプレスバックしたCFが加わるので、サイドでも数的有利の状態で守備対応が可能となる。

基本的に、内側の相手選手を捕まえつつ、ボールホルダーに1枚そしてサポートに1枚とWB、CB、IHの3枚で対応しているため、ドリブルでもパスでも簡単に崩されることは滅多になく、強固なブロックで守る。

 

三列目が前に出てより厚みをつける3-1-5-1(1-3-5-1)

フィニッシュワークでもビルドアップ同様、3-2-4-1をベースとして幅とライン間を使いながら相手ブロックを揺さぶることで、スライドのズレを作って空いたところから段階的に崩すが、三列目(特にストーンズ)が前に出てライン間に入ってより前に人数をかける3-1-5-1気味となることも。(その分、SBも前に出て三列目の脇のスペースに入る1-3-5-1っぽくも)

相手からすると、三列目からの飛び出しはプレスバックするのか受け渡すのかマークが曖昧化し、対処をするのが難しくなる。

これを利用してストーンズやロドリが内側をランニングしてポケットへ侵入、そこからのクロスや折り返しでシュートというかたちも今季のシティではしばしば見受けられる。

また、三列目からの飛び出しが気になると、元々ライン間にいるIHのマークが外れる。

そうすると、長年シティの十八番であるIHのポケットへのランニングや、下げてアーリークロスのパターンの崩しが行える。

他にも同じ3-1-5-1ではあるが、WG(主にベルナルド)が内側に入りマーカーを引っ張ってピン留めすることで大外を空け、オーバーラップしてフリーのウォーカーへ展開というかたちになることも。

 

インテルの攻撃/シティの守備

4-2-3-1のハイプレス or 4-4-2→4-1-1-4のハイプレス or 4-4-2のミドルプレス

 

  • 4-2-3-1のハイプレス

採用する可能性として最も高いのは、中盤を逆三角形にして相手中盤三角形をそれぞれ捕まえる4-2-3-1のハイプレスであろう。

5-3-2に対して、4-2-3-1にすればそれぞれ全員がある程度マークが明確になるからだ。(PL最終節では5-3-2のブレントフォード相手に4-2-3-1でプレッシング)

詳細は後述にあるが、インテルは可変して4バックを作るため、開いていない相手CB側のWGが外切りで圧力をかけ、連動してSBがジャンプしWBまで出るかたちでプレスをかけることで、高い位置での即時奪還を狙い、保持の時間帯を増やす

 

  • 4-4-2→4-1-1-4のハイプレス

今季ベースとしている通常時のスタイルはデブライネが前に出る4-4-2のハイプレスだ。

4-4-2から、2トップで圧力をかけつつ、CH(主にギュンドアン)が縦スライドして相手ACを捕まえ、絞ったWGと残りのCH(主にロドリ)でバランスを取る4-1-1-4にしてプレスをかけることで、高い位置での即時奪還を狙い、保持の時間帯を増やす。

 

  • 4-4-2のミドルプレス

CLということを考慮して慎重に試合へ入る場合は、デブライネが前に出て2トップで相手ACを消す4-4-2のミドルプレスを採用する可能性も捨てきれない。(CLマドリー戦、バイエルン戦など)

2トップがスプリットして圧力はかけずに、ある程度の非保持の展開も良しとし、前がかりで出てひっくり返されることを防ぐ

 

左肩上がり or 右肩上がり or 偽CB化の4-2-4

インテルは、低い位置でのビルドアップ時に、GKを含めた後ろ5枚を作るため、状況に応じた多様な可変方法で4バック化する。

 

  • GK+左肩上がりの4バック

バストーニとダンフリースがSB化し、ディマルコが前に出るアシンメトリーの4バックの配置に可変する。

 

  • GK+右肩上がりの4バック

ダルミアンとディマルコがSB化し、ダンフリースが前に出るアシンメトリーの4バックの配置に可変する。

 

  • GK+偽CB化する4バック

両WBがSB化し、アチェルビが前に出て偽CB化することで相手CFをピン留めする4バックの配置に可変する。

 

保持をベースとする訳ではないが、ハイプレスの相手に対しては、GKも含めながら下から繋ぎ、相手を釣り出して疑似カウンターを狙う。

この時に配置として特徴的なのは、敢えて相手FWライン背後やライン間、幅に人が立たないことである。

段階的に前進する上で、相手FWライン背後は絶対に欠かせないスペースとなるが、そこを敢えて空けておく。

瞬間的に降りたIH経由で逆サイドへ展開したり、前に出てマークを外したACへ落としたりしてプレス回避する。

空けたスペースへ瞬間的に降りるため例え相手中盤がマンツーマンで捕まえていたとしても、どうしても遅れが生じてしまうため、相手としては対応が非常に難しい。

ライン間でも同様で、絶対に欠かせないスペースを敢えて空けておく。

瞬間的に降りたCF経由で逆サイドへ展開したり、前に出てマークを外したIHやACへ落としたりしてプレス回避する。

空けたスペースへ瞬間的に降りるため、同様に相手CBが出て行って対応するのは難しい。

このように、恣意的に空けたスペースへ瞬間的に降りるIHやCFを経由したレイオフなど、徹底して3人目の動きを活用するのが特徴である。

幅でも原理は同じで、WBが低い位置に立つことで相手SBをジャンプさせて釣り出し、絶対に欠かせないスペースを空ける。

WBからのロングフィードやCF経由のレイオフを使ってプレスを回避し、そのまま疑似カウンターへ。

 

常に動的な配置であり、初めから整理された配置ではないため、瞬間的に降りるのが遅れたり、レイオフのパス先を間違えたりするとハイプレスにハマってしまうこともある。

そうなると、前線と後方を大きくスプリットさせてて、ジェコ、ダンフリース、ラウタロルカクなどヘディングやポストプレーに強い選手を目掛けてロングフィードを蹴る。

前線で収められれば広大なスペースでの少人数vs少人数となるので一気にチャンスになるし、収められなくとも際どい競り合いをすれば、ボールがこぼれ前に出たIHがセカンドを回収してショートカウンターでチャンスを作るといった攻撃パターンも持ち合わせている。

このように、相手、味方共に間延びした状態から深い位置でCFがポストし、後ろからIHやWBが出てくるといったロングフィードを活用するスタイルの前進も。

 

4-4-1-1から5-4-1のブロック

撤退すると、WGが下がってデブライネとハーランドが若干前残り気味となる4-4-1-1のブロックを形成する。

大外へ展開されると、ボールサイドのWGがプレスバックして最終ラインに加わり、中盤がスライドしてスペースをケアする5-4-1気味になることも。

 

3-1-4-2→中盤が落ちて4-2-4

前進すると、可変せずにWBで幅、IHでライン間を取る3-2-4-1をベースとする。

ただ、GK含めた低い位置でのビルドアップ同様に、4バックを作ってFWライン背後やライン間を空ける配置に可変することが多い。基本的にはブロゾビッチかチャルハノールが落ちて4-2-4気味の配置となる。

そして再三述べているように、恣意的に空けたスペースへ瞬間的に降りる選手を経由したレイオフを使って、奪いどころを限定させず。

配置を整理して静的な配置での保持をするというよりかは、特に中盤3枚が常に動く動的な配置での保持を行うため、決まった配置は無く人はどんどん入れ替わる。

このようにしてポゼッションしながら、瞬間的にできたズレや3人目の動きを使ってゴールへ向かう。

 

シティのポイント

IHの流動的なポジショニング

シティの崩しはIHが要となるが、そこをマンツーマンで捕まえられてしまうはずだ。

そこで、IHが流れたり、飛び出したりと流動的なポジショニングを取れば、マンツーマンから抜け出すことができる。

WGで相手WBをピン留めした手前のスペースにIHが流れることで、フリーでボールを引き取って外経由で前進をサポートすることは効果的だろう。

また、ハーランドのフォルス9の動きで相手CBを釣り出し、その背後にできたスペースにIHが二列目から飛び出すことで、ラインブレイクして一気にゴールへ向かうこともできるだろう。

 

質的優位性

相手は5バックであるため、例えテンポ良くパスを回して揺さぶれたり、ロングパス使った大きな展開をできたりしたとしても、数的同数であり、マークは明確化されたままである。

そこで重要となるのは、グリーリッシュのドリブル突破、デブライネやギュンドアンのポケットへのランニング、デブライネや両WGからの高精度なクロス、ハーランドを中心とした前5枚のボックス内での動き出しなど個人の能力の高さを活かした質的優位性だ。

当然のことだが、個々のところの勝負で優位性を作れれば、マークは曖昧化する。

そして、今のシティの前線はそれをできるだけの選手が揃っている。

 

ショートカウンター

前述したように、インテルは恣意的に相手FWライン背後やライン間を空けながら動的な配置でビルドアップを行う。

ただこれは逆を言えば、中盤が空洞化しているとも取れる。

そのため、中央で上手くインターセプトできれば、相手のフィルターが少ない状態で素早くポジティブトランジションに移行できる。

この時、相手WBは高い位置を取って相手3バックが開くため、CB間やCB脇のスペースを使って直線的なショートカウンターでそのままゴールへ向かえるだろう。

 

インテルのポイント

3センターの強度・運動量

インテルの戦術上、タスクが非常に多く、最も広範囲に動いてハードワークしなければならないのが中盤3枚である。

ビルドアップで低い位置まで降りてレイオフをしたかと思ったら、フィニッシュワークではそこから時にCFを追い越すかたちで前線へ飛び出す。

また、プレッシングでは2トップ脇のスペースまで縦スライドして牽制したかと思ったら、ブロック時はWBのサポートや相手IHのマークを行うこともある。

更には間延びさせた中盤で、フィフティーのセカンドボールを回収することも重要な役割である。

途中の選手交代はあるだろうが、3センターの強度や運動量は絶対に鍵となるはずだ。

 

配置のズレを活かした疑似カウンター

シティ相手には、インテルのように洗礼された疑似カウンターは非常に効果的だ。

ただ、シティ相手とはいえ、釣り出してない状態でシンプルなロングボールだと、そこまで分が良くない。

そのため、WGの外切りで出るプレスであれば、WBで相手SBを釣り出し、IHの飛び出しやCFの裏抜けでその裏のスペースを使うべきであろう。

2トップが出るプレスであれば、ACで相手CHを釣り出し、ロングボールや斜めのパスを使って空いたIHを使うべきだ。

 

プラス1枚の攻撃参加

5バックであるため、若干であるものの重たい配置となる。

CBのオーバーラップ(or インナーラップ)や、IHとWBの飛び出しなど後ろからのプッシュアップは最後の崩しのピースとして違いを作ることができる。

バストーニ、ダルミアン共に攻撃力も高いCBとして定評があるため、ドリブルで持ち運んでのアーリークロスや、オーバーラップやインナーラップからボックス内への侵入を上手く活かせると、より厚みのある攻撃を行える。

再三述べているように、二列目からの飛び出しはとても有効的だ。

2トップであるので、相手CBはどうしてもそこを気にせざるを得ない。

2トップが相手CBをピン留めするかたちとなれば、飛び出したWBやIHはフリーでシュートを打つことができるはずだ。

また、斜めのパスやレイオフで相手のマークを外せれば、ブロゾビッチやチャルハノールはミドルシュートも強烈であるため、バイタルからでもゴールを狙うことができる。

 

 

 

さとゆう (@SaTo_yu99) / Twitter

 

6/9

 

 

カタールW杯 ブラジルvsクロアチア 〜最優勝候補ブラジルの敗退と、クロアチアの勝負強さ〜

 

 

守備🇭🇷・攻撃🇧🇷

🇧🇷 ダニーロが偽SB化する3-2-4-1

ミリトン含めた3バックを形成、LSBダニーロが内側に入って、WGで幅、IHでライン間を取る3-2-4-1に可変。

2CB中心に段階的に前進しつつ、アイソレイトされたWGと、狭いスペースで違いを生み出せるIHで崩す。



🇭🇷 モドリッチを前に出す4-2-3-1のミドルプレス

モドリッチが前に出て中盤三角形を形成し、相手中盤逆三角形をそれぞれ捕まえる4-2-3-1に。

ハードワークできる両WGはそれほど前に出ず、相手WGまでプレスバック。



🇧🇷 SBとCBの立ち位置のズレ

元々は2-3-2-3に可変していたため、若干不慣れということもあったであろうが、SBとCBの立ち位置に若干のズレが生じていた。

このような可変の場合、本来はLCBが開き、LSBはACと2センター化する必要がある。

そうすることで、相手中盤が偽SBを捕まえに出ててきたら、ライン間のIHへボールを送れる。

相手WGが絞ったら、CBがその脇のスペースを持ち運ぶことが可能に。何よりWGをアイソレイトでき、高い位置で相手SBと1vs1の状況を作れる。

誰も偽SBを捕まえにこなければ、フリーのLSBにボールを送って中央から前進できる。

しかし、ほとんどこのようなかたちにはならず、ダニーロの絞りは甘く、チアゴシウバが開かない立ち位置になっていた。

このポジショニングの誤差によって、中々段階的に前進ができず。

ダニーロがチアゴシウバの前に立つため、ライン間のネイマールへのパスコースは遮断され、ドリブルで持ち運ぶスペースも消失。

また、チアゴシウバが外は開かないので、CB(チアゴシウバ)からWG(ヴィニシウス)へのパスコースが繋がらないことも多くなり、パスで相手MFラインを超えることが難しくなっていた。

ライン間でパスコースを受けれないため、ネイマールが降りてきて左サイドが渋滞することも

 

🇭🇷 ブラジルのWGへの対策

システム上、CBとCFのところ以外は噛み合うかたちとなるが、逆を言えば、SBは強力な相手WGと1vs1の状況となってしまう。

そこで、SBは極力タイトに出て行きながらも時間を遅らせ、運動量の高い中盤とプレスバックするWGで挟み込んで対応。

強力な相手WGとSBが1vs1の状況に内側の中盤が開いたCB、SB間のスペースを埋め、ハードワークできるWGがしっかりプレスバックして挟み込むことでボール奪取

 

🇧🇷 対角なフィード、ドリブル突破、コンビネーションなどで前進

配置的優位性は作れずにいたが、それでも質的優位性で前進できるのが、ブラジルの強み。

前述したように、CBからWGへのパスコースが繋がっていないため、ショートパスでラインを超えることが困難に。

ただ、正確なロングフィードを蹴れるチアゴシウバとマルキーニョスから相手SBの背後に走るヴィニシウスへといったかたちで、一気に前進。

また、降りたネイマールが自らドリブルで剥がして、相手MFラインを突破するかたちも何度か成功。

低すぎる位置まで降りるネイマールただ、ステップを使ったドリブルで相手を剥がすドリブルで相手MFラインを越えることに成功


更には、瞬間的なコンビネーションでブロックの間を割ってゴールへ向かうことも。

🇧🇷 前に出るカゼミロとそこへのIH降り

質に頼った前進が多かったが、流石はブラジルなだけあって、徐々に配置的優位性も使ってボールを保持するように。

具体的には、カゼミロが前に出てマーカーのモドリッチを引き連れていく。

敢えて、相手FWライン背後に人を置かず、中央にスペースを作る。

恣意的に空けた中央のスペースへIHが瞬間的に降りてレイオフを使ったり、ターンしたりすることで中盤マンツーマンの守備は攻略し始めた。カゼミロが前に出ることでマーカーのモドリッチを引き連れ、スペースを作るできたスペースへパケタが瞬間的に降りてレイオフ再度パケタがボールをもらい、前向きでプレー

 

守備🇧🇷・攻撃🇭🇷

🇧🇷 ネイマールが前に出る4-2-3-1のミドルプレス

ネイマールが前に出て中盤三角形を形成し、相手中盤逆三角形をそれぞれ捕まえる4-2-3-1から、WG(左のヴィニシウス)が出て圧力をかけてハイプレスへ移行。

🇭🇷 インテリジェンスと技術力に優れた流動的な3センターによる組み立て

GSから継続して、攻撃配置は特に決めず、瞬間的且つ流動的に降りるブロゾビッチ、コバチッチ、モドリッチの3枚を起点にビルドアップする。

 

🇧🇷 前方と後方の乖離、奪いどころの未設定

ヴィニシウスのスプリントをスイッチとして、ミドルプレスからハイプレスへ移行するのが、ブラジルの守備スタイル。

GSでは、割とこのかたちで即時奪還できていたが、中盤のインテリジェンスと技術力が高く、流動的であるクロアチアに対しては思うようにハマらず。

原因は主に2つ。

前方と後方の乖離と、ネイマールのハードワーク不足である。

まず、前方と後方の乖離について。ヴィニシウスが出て行ったとき、4トップは前に出て行くものの、2センター+4バックは連動していないことが多々見受けられる。

4枚で圧力をかけて奪取できたり、ロングボールに逃げてくれたりすれば、それで良い。

しかし、SBやCHが縦スライドしていないため、中盤を経由されてしまうと、中央から簡単にプレス回避されてしまう。

撤退して6枚でブロックを形成しても個人の能力が高いため、ある程度守ることはできるが、この試合のように非保持の時間帯が長くなり、中々得意の攻撃を行うことができなくなる。(ボール支配率49%)

もう一つのネイマールのハードワーク不足について。攻撃面で多大な貢献をするネイマールだが、守備面では穴になってしまうことが。

守備時、彼は1stライン(FWライン)に入ることが多い。ただ、ハイプレスをかけるチームにとって、1stラインの役割は非常に重要だ。

なぜなら相手CBに圧力をかけることも、相手中盤を消すことも行わなければならないからであり、そこを外してしまうと、一枚ずつプラスがずれて簡単に回避されてしまうからである。

もし、ネイマールを守備免除させるのであれば、シンプルなタスクを与えるか、ハイプレスを行わないかだろう。

しかし、そのようなことはしないため、ネイマールがマークを外したところを起点に回避されてしまう。

ヴィニシウスが前に出てプレスをかける前に出ていくも、降りてきたコバチッチを誰も捕まえておらず、簡単にターンされてしまう(パケタは遠すぎて縦スライドできない、近くのネイマールはハードワークせず)またもコバチッチを離してしまいワンツーを使われ、簡単に相手MFラインに侵入されてしまう

降りたモドリッチに対してそのままカゼミロが縦スライドして捕まえに出るパシャリッチは誰も捕まえておらず、カゼミロ背後のスペースにボールをつけられて展開されてしまう

パケタは降りたコバチッチまで捕まえに出ていけず、自由に運ばれてしまうボールサイドに圧縮したり、中央を封鎖したりもしていないので、簡単に展開されてしまうモドリッチが自由にボールを持てる

 

このように、奪いどころがしっかりと設定されていないので、上手くプレスをかけて圧力をかけたり、牽制したりすることができず苦戦。

また、前方と後方が乖離していると、フィフティーのボールも中々回収できず、セカンドボールを拾われて二次攻撃に繋げられてしまっていた。

 

🇧🇷 左肩上がりのハイプレス

GK含めたビルドアップに対しても同様に、相手中盤をマンツーマンで捕まえつつ、ヴィニシウスが前に出るかたちで圧力をかける。

 

🇭🇷 ユラノビッチへの頭越しのパス

ブラジルの左肩上がりのハイプレスに対して、そのときに浮いてくるRSBユラノビッチを起点とするかたちで再三プレス回避することに成功。

パシャリッチが高い位置で相手SBダニーロをピン留めすることで、相手WG背後から相手SBまで右サイドに広大なスペースが生まれ、そこを推進力が持ち味のユラノビッチがドリブルで運んで前進。

外切りでCBまで出てくるヴィニシウスに対して、浮いたユラノビッチへパシャリッチで相手SBをピン留めしてスペースを作り、そこをユラノビッチが運ぶ一気に運んでクロスまで


相手SBがジャンプしてユラノビッチまで出てくる場合は、その背後のスペースへクラマリッチが流れ、ボールを引き出して前進。

リヴァコビッチから浮き球で相手WG背後のユラノビッチへ相手SBダニーロが縦スライドしてきたため、ダイレクトでその背後に流れたクラマリッチ

 

また、GKを含まないビルドアップの時も同様なかたちでゴールへ。

前に出たヴィニシウスの背後へミドルパスパシャリッチが引き取り、モドリッチ経由でフリーのユラノビッチへ外から大外へのクロス

1stラインが機能しないブラジルに対して、ゲート間を抜ける縦パスを簡単に前を向いたコバチッチから一気に大外のユラノビッチへ

CBから降りてきたモドリッチヴィニシウスが前に出て圧力をかけるが、後ろは連動しておらず、モドリッチは簡単にターン開いたパシャリッチと前に出たユラノビッチで2vs1の構図に

 

🇭🇷 5vs2で安定して保持

中盤がそれぞれ降りるので、ライン間に人がいなくなるなど配置が整理されていない状況は多いが、相手2トップに対しては2CB+3センターの5枚で数的優位を作り、安定してポゼッションできる。

 

🇧🇷  CB、SB間の広がり

ロングボールで大きく展開されると、CB、SB間が開いてスペースができてしまい、そこのスペースを流れた相手CFに使われてしまったり、SBと相手WGが1vs1になってしまったりする場面が。ミリトン、マルキーニョス間が開いてしまい、そこをプルアウェイしたクラマリッチに使われてしまう

サイド to サイドで展開される4バックがスライドするわけでも、CHがカバーに入るわけでも、WGがプレスバックするわけでもないので、ミリトンが晒されてしまう

 

🇭🇷 サイドからのクロス

配置を整理して段階的に崩すわけではないクロアチアのフィニッシュワークでの武器は、やはりクロス攻撃。

ブロックの外からでも、相手DFラインと相手GKとの間や、大外など多種のボールを蹴り、中央の高さを活かしてゴールへ。(高身長のWGパシャリッチもCF化してボックス内へ)

 

修正〜3-2-4-1→2-3-2-3へ〜🇧🇷

チッチはビルドアップ時、後方の配置を修正。

ミリトン含めた3バックを形成してダニーロが内側に絞る3-2から、ダニーロミリトンがそれぞれAC脇に入る2-3に。

 

🇧🇷 CBからWGへのパスコースが直結

この配置修正によって、ようやくCBからWGへのパスコースが繋がり、パスで相手MFラインを超えられるように。

 

🇧🇷 SBのインナーラップ

また、低い位置での組み立てと被カウンター時のストッパーが主な役割だったSB(特にミリトン)が積極的に前に出て攻撃参加。

SBが内側からランニングするため、相手WGのプレスバックを防ぎ、WGのアイソレイトに成功する。

内側を走るSBに対して、相手WGがマークを外していれば、そこを使ってポケットへ侵入することが可能に。

また、相手WGが捕まえ付いて来れば、内側にスペースが生まれ、WGがカットインして侵入することが可能となる。

RSBミリトンがインナーラップそのままポケットへ侵入し、クロス

CBからWGへパスコースが繋がっているため、パスで相手MFラインを超えるミリトンがインナーラップ、それによってアントニーがアイソレイトミリトンの攻撃参加によって相手WGはアントニーにプレスバックできず、空いた内側のスペースへカットイン

 

🇧🇷 SB経由で内側からの組み立て

後ろのヴィニシウスも気になるパシャリッチは内側のダニーロまで出ていけずダニーロはターンしてドリブル、ブロゾビッチがコースを消しに来たことでマーカーのネイマールがフリーに

 

修正後の展開

🇭🇷 WGも下がってリトリートで対応

合理的な修正をおこなったブラジルに押し込まれ、決定機を作られるようになってしまったクロアチアは、撤退し、WGも下がって時に最終ラインに吸収される5-4-1気味のリトリートに。

引き分け狙いであわよくば一点を、というようなゲームの進め方で持ち堪える。

 

🇧🇷 引いて守るブロックに対してバイタルの有効活用

相手が引いて守るようになったため、CBも高い位置を取り、かなりクロアチア陣内に押し込んで保持する展開となった。

CBやSBも高い位置を取るなど押し込んで攻め続けることで、相手ブロックのラインの縦幅はどんどんコンパクトになり、1列化していく。

それによって空いてくるのはバイタルエリア

相手WGはサイドを警戒して最終ラインに吸収され、そうなると相手MFライン全体も自然と下がるため、中央(相手MFライン前)は手薄に。

サイドを使って横へ揺さぶることで、より中央にスペースを作る。最終的に空いたバイタルからミドルシュートを打つかたちでチャンスを作った。

アントニーが2人の間を割って入るドリブルを使い、前に出てそのままインナーラップしたカゼミロへクロスはファーサイド横に揺さぶられたことで相手守備ラインは1列化バイタルへ出て行ったパケタがシュート

WGも下がったブロックであるため、相手MFラインと相手DFラインは同一化前に出たカゼミロがバイタルでフリーに

SBと下がったWGでアントニーに対応マーカーのWGペリシッチアントニーの対応することで、フリーとなったミリトンがバイタルへ出て行き、シュート

延長戦の得点シーンも同じかたちから。

4-5-1のブロックから両WGが下がって6-3-1となったクロアチアのブロックに対して、ネイマールがワンツーを2回使って手薄となった中央から打開した。

 

🇧🇷よりプレスが空転

前半からプレス(特にハイプレス)が機能していない場面が多く見受けられたが、運動量の問題もあってか、ますますプレスは空転し、あまりハイプレスをかけられないように。

CBからモドリッチへ縦パスマーカーのカゼミロが縦スライドしておらず、モドリッチにフリーでターンされ、ヴィニシウス背後のユラノビッチへ送られてしまう

ACが落ちて、IHがFWライン背後にポジショニングするクロアチア2CBをリチャーリソンが、ACをネイマールが見るかたちがベースであるが、流動的に人が入れ替わりモドリッチに対してカゼミロがジャンプするのか、ネイマールがカバーシャドーで消すのか、どっちつかずゲート間を通されて簡単にターンされるWGロドリゴの背後にいるユラノビッチへ

 

🇭🇷 リヴァコビッチのファインセーブ

PK戦だけでなく、流れの中でも度重なるファインセーブでゴールを死守した。

 

🇭🇷 同様の攻撃

前半同様、3センターを起点にヴィニシウスが出てくることで浮くユラノビッチを使って前進、フィニッシュまで。

囲まれても剥がせるコバチッチから展開出てきたヴィニシウスの背後にいるユラノビッチへ

リチャーリソンがプレスバックするも、1stラインの守備が機能してないので、CBが深い位置まで持ち運べるコバチッチを経由して逆サイドへ展開モドリッチとブロゾビッチが余裕を持ってパス交換、そこへヴィニシウスがスプリントして出てくる出てきたところで、外で浮くユラノビッチへヴィニシウスが二度追いするも、ネイマールがマークを外しているため、モドリッチ経由でフリーのブロゾビッチへブロゾビッチから再び、逆サイドへ展開相手2トップ脇のスペースをコバチッチが持ち運ぶ

 

 

 

フルマッチ

https://abema.app/6yDz

 

 

さとゆう (@SaTo_yu99) / Twitter

 

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カタールW杯 日本 vs ドイツ 戦術マッチレビュー 〜日本はどのようにしてドイツを負かしたのか?〜

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前半

プレッシング🇯🇵 ・ビルドアップ🇩🇪

🇩🇪 左肩上がりの3-2-4-1

攻撃時はラウムとニャブリで幅、ムシアラとミュラーで幅を取る左肩上がりの3-2-4-1に可変する。

3バックと2センターで安定して組み立てつつ、幅とライン間を使って段階的に前進。



🇯🇵 4-4-2のミドルプレス

鎌田が前に出て前田と2トップを形成、相手2センターをカバーシャドーで消しながら相手3バックにも牽制をかけるミドルプレスを採用した。


🇩🇪 カバーシャドーの回避でCHを経由

CB→ワイドCB→CHといった斜めのパスや、CB→ライン間の選手→CHといったレイオフを使って簡単にカバーシャドーを回避し、CHまでボールを送れていた。

斜めのパス

 

レイオフ

このようにして、日本の1stライン(FWライン)を簡単に攻略。

キミッヒとギュンドアンに全くプレッシャーがかからないので、彼らは自由にプレー。

ライン間に縦パスをつけたり、大外へ展開したり、ドリブルで持ち運んだりと様々な方法で、2ndライン(MFライン)を攻略した。

 

🇯🇵 配置上のズレ

ドイツが可変して左肩上がりになることは、予めわかっていたが、日本はそれに対していつも通り何も対策をしなかった。

そこで生じた配置上のズレは4つ。

MFラインにおいて、伊東はシュロッターベックまで出て行くのか、それとも幅を取るラウムに付いて戻るのかという問題。

また、前田がリュディガーまで出て行くとき、田中はライン間のミュラーを捕まえるのか、それとも縦スライドしてキミッヒを捕まえるのかという問題。


DFラインにおいては、両SBがそれぞれライン間の選手を見るのか、それとも幅を取る選手を見るのかという問題が発生。

 

🇩🇪 シュロッターベックの持ち運びと、ミュラーの流れ

段階的にラインを超えて前進するドイツは、当然ながら横へ揺さぶって日本の2トップ脇をワイドCBが持ち運ぶ。

名将中の名将ハンジフリックが戦術を落とし込んでいるだけあって、このときに日本の守備に生じたズレをドイツはピンポイントに突いていく。

WG(伊東)が出てこない左サイドは、徹底してシュロッターベックが持ち運ぶ。そのとき、中央のギュンドアンやムシアラ、外のラウムなど角度ができているパスコースはたくさんあり、そこへのパスで2ndラインを超えて、フィニッシュワークへ。

 

逆にWG(久保)が出てくる右サイドは、ズーレが簡単には持ち運べない。そこでライン間にいたミュラーが外へ流れる。ニャブリが長友をピン留めすることで、ミュラーをフリーにし、そこからプレスを回避。

また、田中がスペースではなく、人を意識して出て来ると、それによって空いたスペースにCHが飛び出したり、CFがフォルス9の動きで降りてきてボールを引き取る。

このように、相手の出方によって臨機応変に対応しながら、合理的に前進。

 

🇯🇵 4-4-2 or 4-1-4-1におけるハイプレス時のマークの問題

ハイプレスもデザインを特にせず、ミドルプレス時のまま2トップ+前に出た久保の3枚で圧力をかけるかたち。

ドイツは世界最高のGKノイアーも含め、6枚で組み立てるため、3vs6の構図となってしまう。

カバーシャドーを使いながら前田がチェイスするも、斜めのパスであったり、ノイアー経由で逆に展開されてしまったりして、悉くプレスを回避されてしまった。

CH経由で逆へ展開

 

余りにも容易に相手CHへボールが入ってしまうので、田中が自らのマークであるミュラーを捨ててキミッヒまで縦スライドする4-1-4-1気味の陣形となることも。

しかし、そうすると、DFラインの前には遠藤1枚となってしまい、そこから前進されてしまう。

田中がミュラーのマークを捨てて遅れて出て行く1vs2の構図を作られてしまい、キミッヒを経由して遠藤の脇のスペースでボールを引き取られてしまう

 

また、田中が縦スライドしてキミッヒを捕まえようが、捕まえまいが、ずっとシュロッターベックのところは空いてるので、ノイアーを経由して逆に展開され、そこから持ち運ばれてしまうことの解決にはならず。


ほぼ全てプレス回避されてしまっていたので、前半終了間際に田中と遠藤の両方とも縦スライドして、2センターで相手2センターを捕まえるようなオールコートマンツーマン気味のプレスを。

オールコートマンツーマンなので、後方の広いスペースでも数的同数(4vs4)となるが、流石のドイツはそれも上手く利用。

下から段階的に繋がず、ロングボールを使って前へ飛ばし、疑似カウンターで一気にフィニッシュまで持ち込むといったかたちで前進され、オフサイドで助かったものの、あわや失点といった場面も。

広大なスペースで3vs3

 

ブロック🇯🇵・フィニッシュワーク🇩🇪

🇯🇵 プレス時同様、配置上のズレ

プレッシングで起こっていた配置上のズレの問題は、そのままブロックにも同じ影響を与えた。

前述した通り、伊東のところと相手CHのところをどうするのかということだが、流石にブロックになると、そこはある程度明確に。

伊東と2トップともに前に出ず、それぞれラウムと相手2センターを監視する。


ただ、どこまで付いて行ってどこでマークを受け渡すのかは不明確。

彼らが前に出たとき、そこまで付いていくのは現実的で無い。(特にFW)

キミッヒは前に出てカバーシャドーを回避前田が献身的なプレスバックでよく戻ったが、展開されて回避されるとCHは完全にフリー

 

🇩🇪 前線での優位性+カバーシャドー回避した三列目からの飛び出し

4バックに対して、5トップ気味となるため、前線では常に数的優位であり、更にそこへ三列目からCH(特にギュンドアン)が飛び出していくので、6vs4の構図に。

 

🇩🇪 内と外を使った合理的な崩し(配置的優位性)

CB→幅→内側、ライン間といったように相手のブロックを外に広げてから内を使う崩し。

CB→ライン間→大外といったように相手ブロックを狭めてから外を使う崩し。

 

🇩🇪 ライン間での技術の高さを活かした瞬間的な崩し(質的優位性)

特にフィニッシュワーク時は、ライン間にたくさん人を置く配置となる。

段階的に前進しつつも、最後のところでは、狭いスペースでフリックやレイオフなどのダイレクトを交えたパスワークや細かいドリブルなど選手の能力の高さを活かしたアドリブ的なプレーで崩すことも多い。

持ち運んだギュンドアンが3人密集したゲート間を抜くパス大外でフリーの2枚は使わず、

再び狭いライン間へパス

ムシアラが細かいタッチでターンしてシュートへ

 

🇩🇪 これら全てを組み合わせたフィニッシュ

キミッヒが前に出てカバーシャドーを抜け出し、そこへ斜めのパス

フリーで保持し、大外のラウムまで展開

ギュンドアンが三列目から飛び出す

フリックして3人目の動きをしたムシアラへ

 

ミュラーが流れて、その空いたスペースにハヴァーツがフォルス9の動きで降り、レイオフ使ってミュラー

この時、ニャブリで相手SBをピン留め、ミュラーがフリーで持ち運び、前に出てカバーシャドーを回避したキミッヒへ

中→外→中で揺さぶって、完全にフリーとなったキミッヒから大外のラウムへ展開

 

リュディガーからゲート間を通すパス

キミッヒが狭いスペースでターンしてライン間のムシアラへ

レイオフギュンドアン

中→中と繋いで相手ブロックが狭まったところで、大外のニャブリまで展開

ダイレクトのワンツーで剥がして中央へ

 

ビルドアップとフィニッシュワーク🇯🇵・プレッシング🇩🇪

🇩🇪 4-2-3-1でボールサイドに圧縮するハイプレス

絞った逆サイドWGとトップ下で相手中盤を捕まえ、ボールサイドWGが圧力をかける4-2-3-1でボールサイドに圧縮するハイプレスによって、全く日本にビルドアップを行わせず。

 

🇯🇵 ロングボールを多用せざるを得ない組み立て

SBは低い位置で張ったままであり、ライン間にはトップ下しかないという配置を可変させないため、パスコースは無く、圧力がかかるとロングボールを使って逃げるかたち。

 

🇯🇵 2トップの献身性とスピードを活かしたカウンター

プレッシングの型が決まっていない中でも、鎌田、前田共にスプリントして積極的に圧力をかけつつ、深い位置まで献身的にプレスバックを。

そこでボール奪取できると、前田、伊東のスピードを活かしてカウンターで一気にゴール前まで行けることも。

プレスバックした鎌田とデュエルの強い遠藤で挟み込んでボールを奪取可変でラウムは高い位置を取っているため、伊東の前に広大なスペースが

 

鎌田のプレスバックでボール奪取

 

 

後半

修正① 〜4-2-3-1から5-2-3へのシステム変更〜🇯🇵

🇯🇵 オールコートマンツーマン気味のハイプレス

久保に変えて冨安を投入、5-2-3のシステムに。

システムを変更したことにより、3-2-4-1のドイツに対して、配置が噛み合い、完全にマークが明確化するように。

先制されて後がない日本は、横パスやバックパスを合図に自分のマーカーに対してどんどん出ていくハイプレスをかけた。

前半、誰が付くのか不明確であった相手CHに対してもCHが積極的に縦スライドして牽制また、シュロッターベックに対しては伊東が圧力をかけ、ラウムに対しては酒井がジャンプ

 

マンマークで付いていくため、CBであってもマーカーに対して前に出て行って対応し、近くの選手で圧縮するといったように、タスクがはっきりしたことでかなりボール奪取できるように。

また、オールコートマンツーマンであるため、前線も数的同数であり、ポジティブトランジションからそのまま一気にショートカウンターへ移行できることも。

広大なスペースで3vs3

 

同様にして、GK含めたビルドアップに対しても超ハイプレスをかけて回収。

 

降りてボールを引き出すムシアラに対して、マーカーの板倉が徹底的に付いて行ってボール奪取。

 

前田がリュディガーに対して圧力をかけ、そのままリュディガーへのパスコースを切りながらノイアーまで二度追い。

 

🇩🇪 システム変更への戸惑い

全てが噛み合っておらず、楽勝にゲームを進めていたドイツは、システム変更に伴う急なハイプレスとワールドカップ初戦ということも相まってか、らしくないミスを連発するように。

 

🇩🇪 瞬間的なクオリティーによる回避

それでもドイツは、今大会最高レベルの完成度を誇るチーム。

相手の配置から逆算した段階的な前進には手こずったものの、選手個人のテクニックの高さを活かして、瞬間的に相手のマークを剥がすことで前進。

オールコートマンツーマンの守備であるため、逆にマーク1枚さえ剥がせれば、前線の広大なスペースで数的優位もしくは数的同数を作れ、そのまま一気にゴールへ向かうことが可能である。

一度は日本のプレスにハマるも、素早くセカンドボールを回収プレスを空転させられれば、前に出てきていたCBやWBのエリアに大きな穴ができる広大なスペースで数的優位の状況


また、日本が同数で前に出てくるようになったことで、瞬間的なコンビネーションなど質的優位性を活かした崩しがより破壊力を発揮。ミュラーが推進力のあるドリブルで2枚剥がす

 

5バックで完全にスペースを埋めたブロックに対して、ムシアラがカットインし、単独で突破

 

縦パスに対して、ハヴァーツがポストプレーで落とし、ムシアラが前向きで受けるといった3人目の動きを使った高度なレイオフ相手CHを剥がしたことで中央にスペースができた数的優位の状況下で、シュートを選択するも、ポストに直撃

 

同数でハメにくるハイプレスに対して、下から繋がず、ロングボールを使って前へ飛ばし、疑似カウンターを試行三列目から出てきたキミッヒが相手最終ライン背後へ落とすパス

 

🇯🇵 権田のスーパーセーブ

システムを変えて配置が整理されたとはいえ、ドイツの瞬間的なクオリティーの高さを活かした攻撃により、再三決定機を作られていた。

ドイツのXgは3.53とデータ上では3点以上入っていてもおかしくなかったが、それらの決定機を全てセービングし、PK以外での得点は許さず。

 

🇯🇵 ブロック時の問題も解決

前述したように、マークが明確化したため、配置のズレが解消。

 

🇯🇵 攻撃時は3-2-4-1

森保監督は枚数を合わせるといった単なる守備改善として、5バックを採用しただけであろうが、それは思いがけず攻撃にも良い効果となった。

森保監督に、段階的な組み立てや合理的な前進といった戦術を考えはないので、再現性のある攻撃は殆ど見受けられない。

よって当然ながら、原則的に幅やライン間を取ることもなければ、可変も行わない。

ただ、5-2-3というシステムは、攻撃時WBで幅、WG(シャドー)でライン間を取る3-2-4-1となるので、可変せずともポジショナルプレーを行いやすい配置となるのである。

デザイン性が無いため、自らで前進できず、トランジション時のショートカウンターオンリーだった前半とは打って変わって、3バックと2センターで組み立てながら、幅、ライン間、深さを使った段階的な前進を行えるように。

 

ボールサイドに圧縮するドイツのハイプレスに対して、前半はロングパスで逃げることしかできなかったが、3バックで繋ぎつつ、GKも経由して逆へ展開、そこからパスorドリブルを使って相手1stラインを超えられるように。

実際、データで見ても、前半は19%だった支配率が、後半スタートの46分から2点目を奪った83分までの間は40%と2倍以上になっている。

 

修正② 〜攻撃的な交代と最適解の合致〜

🇯🇵 幅とライン間に最適解の選手を起用+CHの飛び出し

前に記載したように、森保監督に、段階的な組み立てや合理的な前進といった戦術を考えはないため、選手起用も単純であることが多い。

この選手交代も恐らく、酒井や長友などよりも攻撃力が高いという理由で三苫や堂安を投入したのであろう。

 

ただ、結果的に突破力の高い三苫、伊東が幅、ボールを引き出したり内側を走る能力の高い南野、堂安がライン間を取り、浅野で深さを作るといったそれぞれの選手が最も能力を発揮できる最適解の布陣となった。

CBから幅を取るWBへのパスコースが繋がっており、ここでもパスで相手MFラインを超えられたアイソレイトした三苫が前を向いた状態で相手SBと一対一の状況、その内側を南野がランニング

 

1トップ脇からCBが持ち運んだとき、ライン間のWG、幅を取るWB、前に出た鎌田と角度のあるパスコースが多く存在、そこから2ndラインを超えてフィニッシュへといった前半ドイツが行っていた攻撃に近いかたちでフィニッシュへ。


🇩🇪 ピッチ内での意思分裂、集中力欠如

ゲームの流れが日本に傾いてる中、通常通り攻撃的なスタイルを貫くのか、1点を守り切って試合を終わらるのか、ピッチ内で意思統一が行えていなかったようにも。

実際、ボールサイドに圧縮するハイプレスは明らかに連動性を欠くようになり、後ろの4-2で守るような場面もあった。

 

🇯🇵 浅野のスーパーゴール

絶妙なトラップとニアをぶち抜くシュート

ドイツからすると、ラインコントロールを大幅にミス

 

 


フルマッチ

https://abema.app/LuNa

 

 

さとゆう (@SaTo_yu99) / Twitter

 

11/25

21/22 CL決勝 リヴァプール vs レアル・マドリー 戦術マッチプレビュー



※ ⭐︎は可能性大

 

両者の現状

リヴァプールは、チアゴが出場できるのかが微妙。サラーはPL最終節に途中出場、ファンダイクとファビーニョは暫く出場はないが、恐らくはスタメン起用が可能であろう。

一方のマドリーは、現段階で欠場者はいない模様。最終節もアラバは召集外であったが、先発が予想される。

 

リヴァプールのスタイル

リヴァプールの戦術

https://sato-yu99.hatenablog.com/entry/2021/10/28/235328

 

マドリーのスタイル

マドリーは、最高のタレントとクラブの格を軸にチームを作り、論理的な戦術や合理的且つ段階的な崩し(段階的優位性)を取り入れているというよりも、圧倒的な技術力や組織力、そしてスピリットの部分も含め、良い意味で「理不尽」という言葉に尽きる。

瞬間的なコンビネーションによる崩し、各選手のスーパーな技術と創造性による攻撃や、カバー範囲の広さ、インテンシティの高さ、対人の強さを活かした守備など攻守共に個人のクオリティーの高さ(質的優位性)での解決をベースとした選手の個性の色が強いチームである。

 

・ビルドアップ

前述したように、デザインを重視した段階的な組み立ては行わないため、これといって決まった配置が無いことが特徴的である。各選手の能力が優れているので自然と可変した時に多くの役割を熟せることによって、流動的且つアドリブ的なスタイルを成立させている。

配置が整理されていなくても、アドリブ的なコンビネーションや技術力と推進力を持ったドリブルなどで剥がしてたり、瞬間的に最適なポジションに出て(降りて)ボールを引き出したりして前進させる。

また、CBからドリブルでの持ち運びでラインを越えたり、降りたIH含め後方からのロングボールで一気に前進することも可能である。

カウンターを得意とするマドリーは、自陣においてGKを含めた組み立てから前進し、そのままゴールに迫ることも多い。ベースシステムのままの場合、シンプルにヴィニシウスの背後を狙ったり(疑似カウンター)、IHの展開力を起点に局面を打開する。

ただ、前述したように、流動的且つアドリブ的なポジションチェンジをスムーズに行えるのがマドリーの強みである。典型的なのはIH(特にクロース)がCB脇まで降りて回避の起点となるかたちだ。降りたIHでボールを落ち着かせ、そこから高いキック精度を活かして配球する。
IH降りに応じて相手中盤選手も付いてくると、それによって出来たスペースにベンゼマが降りてボールを引き出し(モドリッチが流れる or カゼミロが出て行く or メンディーが内側に入ることも)、前進する。

更にはGK含めて4バックを形成し(右肩上がり、左肩上がりの両方とも可)、WGやSBが内側に入って中間ポジションを取ることで回避の起点となるかたちも可能。各選手が大幅にポジションを変えることで相手を撹乱し、外から内に入った選手(主にメンディー、バルベルデモドリッチ)が自ら中盤でフリーになったり、大外の味方選手(主にヴィニシウス、カルバハル)をフリーにしたりできる。

 

・フィニッシュワーク

フィニッシュワークもビルドアップ時と同様にアドリブ的な崩しが殆ど。ミドルシュートや、サイドからのクロスとそれに対してボックス内への飛び込み、

WG(特にヴィニシウス)をアイソレイトさせて内側を走る選手へパス又は自らドリブル突破などのかたちに加えて、瞬間的なコンビネーションでの打開といったように個人のクオリティーの高さを活かした攻撃でゴールへ迫る。

能力の高い選手たちが要所で高い技術を発揮することを前提としているが、そんな最高の選手が揃う中でも別格なのが、ベンゼマモドリッチだ。彼らはオフザボール、オンザボール共に世界最高レベルの選手であり、マドリーの「理不尽」を一番体現している選手である。完璧に形成された相手のブロックや全く点が入るような状況ではない場面をベンゼマのスーパーゴールやモドリッチの超高精度パスなど彼ら二人の想像の範疇を超える技術だけで打開する場面も少なくない。

 

・プレッシング

試合によってはプレスをかけずに撤退してリトリート気味に守ることも多いが、試合の流れ上、単発的にプレスをかける場合はハイプレスを採用。

4-1-4-1(相手が中盤三角形の場合)、又はモドリッチが前に出る4-2-3-1(相手が中盤逆三角形の場合)で相手中盤をマンツーマン気味に捕まえるかたちとなる。

セットした陣形からボールホルダーへの圧力のかけ方はアドリブ的で、主に2パターンある。

一つは、RWG(バルベルデ)が相手SBへのパスコースを消しながらボールホルダーへプレスをかけるパターン。(基本的にLWGヴィニシウスはカウンターに備え守備を軽減させているため、走力の高いRWGバルベルデ側からプレスをかける)

ビルドアップ能力が高い相手の場合はGKを使ってWG(バルベルデ)の頭越しのパスで相手SB(左)へボールを送られた場合は、ボールの移動中にSB(カルバハル)がジャンプして出て行ってプレスをハメる。

このとき後ろはスライド3バックを形成して(逆サイドSBが絞って)カバー、ボールサイドのWG(バルベルデ)がプレスバックしてボールホルダーを囲い込む、といったように全体のスライドを徹底して圧縮する。

もう一つは、CF(ベンゼマ)がどちらかのサイドへ限定し、IH(主にモドリッチ)が相手中盤(自分のマーク)へのパスコースをカバーシャドーを使って消しながらプレスをかけるパターン。

IH(主にモドリッチ)が前に出るのに連動して、ACやCBが空いてる相手選手まで縦スライドしつつ、WGも中切りのプレスをかけることでボールをサイドへ誘導する。

 

・ブロック

試合の状況や相手の配置によって様々な陣形に変化する。(プレスをかけず、最初からセットしてブロックを敷くことも)

主なかたちとしては、モドリッチが前に出つつ下がった両WGと2センターで4枚を形成する4-4-1-1、RWG(主にバルベルデ)が下がってWB化し絞ったヴィニシウスと前に出て牽制もかけるモドリッチを含めて3センターを形成する5-1-3-1、ベースシステムのままの4-1-4-1、がある。

どのシステムにおいてもヴィニシウスがカウンターに備えて守備負担が少なく、その分を個人の守備能力の高さと、前に出て牽制するモドリッチ、走力を活かして上下動するバルベルデでカバーするアシメントリー気味となる傾向がある。

守備スタイルも攻撃スタイル同様、アドリブ的な対応で解決する。

そのため、配球どころを上手く牽制できない、ライン間にどんどんボールを供給されてしまう、大外が空いてしまうなど守備陣形の設定不備によってミスマッチが起こり得ることも珍しくない。

ただ、簡単に前進されたとしても、ボックス内でのクロス処理や、身体を張ったブロック、クルトワのファインセーブなど個人での対応含めて最後のところは破らせない守備対応でゴールを守る。

主にコンパクトなブロックとダイナミックなブロックの二つのパターンがある。

一つは、4バックをコンパクトにしてSBが内側の相手選手へ、WGがプレスバックして大外の相手選手へ対応する(バルベルデをWB化して最初から5バックで対応する)パターンである。

もう一つはプレッシング時同様、パワーとスピードを兼ね備えたCBが積極的に縦横スライドするパターンである。(ジダン期のベースのパターン)

ライン間やポケットのスペースまで積極的にCBが出て行て後ろから相手を捕まえで対応するだけでなく、流れ上、時には大外まで出て行って対応することもある。

このとき、基本的にカゼミロが下がってCB化して(時にはバルベルデやSBが熟すことも)、スペースを埋める。

 

 

試合の見どころ(個人的考察)

マドリーの攻撃 / リヴァプールの守備

⭐︎CFとIHで相手中盤を捕まえる4-3-1-2のハイプレス

リヴァプールが前からプレスをかけることは間違いないだろう。

恐らく、両IHで相手IHをそれぞれ捕まえつつ、CFで相手ACを捕まえることでファビーニョを余らせて、WGから外切りで圧力をかける4-3-1-2でハイプレスを採用するはずである。

ACカゼミロ脇のスペースに相手IHが降りたとしても、縦スライドで捕まえに行くだろう。

スクロールして配置をずらされる(バルベルデ内側、ベンゼマ降りなど)と、そこをファビーニョで対応するはずだ。

GKクルトワを使ってWGの頭越しのパスで相手SBまでボールを送られてしまうこともあるかもしれないが、ボールサイドSBがジャンプして全体が横スライドするなどらしい連動が徹底したプレスで簡単には自由を作らせないはずである。

 

アドリブ的なポジションチェンジとそこでの瞬間的な技術力

マドリーといえども、リヴァプールの連動したインテンシティの高いハイプレスを選手の瞬間的な技術だけで剥がすことはかなり困難であるはずだ。

中盤をマンツーマン気味に捕まえにくる相手に対して、大幅にポジションを変えることで相手にどこまで付いて行くのか、誰が付いて行くのかという選択を常に迫れるかがポイント。具体的には、クロース降りにマークのヘンダーソンはどこまで付いて行くのか、ヴィニシウスが背後を狙うことでピン留めしている場合でもアーノルドは縦スライドするのか、カゼミロが前に出たときにマネはどこまで付いて行けるのかが鍵となりそうだ。

そうした状況下においてのボールサイド圧縮を無効化するクロースのダイナミックな展開、瞬間的に出て行くモドリッチや瞬間的に降りるベンゼマのボールの引き出しは、より一層プレス回避の起点となり得る。

 

⭐︎個人の能力の高さを活かした質的優位

予想ではリヴァプールが保持する時間帯が続くと思う人が多いだろう。

ただ、少ないチャンスの中で確実に点を取るということに関して、マドリーは一番優れているかもしれない。

特に、相手の弱点とマドリーの強みが噛み合わさるのは、左サイドにおける崩しだろう。

幅を取るヴィニシウスのところでは一対一においてかなり質的優位性を作ることができる。

その上、ベンゼマが流れたり、モドリッチが飛び出したりすることによる瞬間的なコンビネーション(オーバーロード気味)も併されば、鉄碧のリヴァプールの守備を崩すことが十分可能であろう。

また、RWGサラーのプレスバックの状況によっては内外を走り分けられるLSBメンディーの攻撃参加で数的優位を作れるのかが鍵となりそうだ。

ただ、前述したように戦術的、論理的に崩すよりも、結局はモドリッチベンゼマが「理不尽」に点を取るということが一番現実的であり、それを期待しているマドリディスタも多いはず。

一方、リヴァプールのCB陣は、パワーとスピードを兼ね備えて対人守備にもカバーリング守備にも優れており、それこそ「理不尽」に守れるだけ能力を持っている。

そんな相手に対して、ベンゼマモドリッチを中心とする攻撃をどれくらい行えるのか注目だ。

 

リヴァプールの攻撃 / マドリーの守備

CF脇にIHが出て行く4-1-4-1のミドルプレスの場合

特に可変させず、初期設定の配置のまま、CFベンゼマがカバーシャドーを使ってファビーニョを監視。

そのため、深追いすることはできず、ベンゼマの脇のスペースにはIH(クロース、モドリッチ)が出て行って牽制する。

出て牽制するIHと2トップ化、スライドしたACカゼミロ含めて4枚となる一時的な4-4-2となり、中央とボールサイドをケアできる。

 

ライン間へのポジショニングと開いたゲート間を通すパス (vs4-1-4-1)

4-1-4-1を採用すると、CL決勝トーナメント以降もDFラインとMFラインの間が拡張し、そこにポジショニングする相手選手を誰が捕まえるのかが曖昧となることが多いマドリーに対して、マティプやファンダイク、状況によってはチアゴやアーノルドからのゲート間を通すくさびのパスは非常に効果的となる。

それに合わせてフォルス9の動きでマネが降りると、ACカゼミロはそっちが気になってスライドしきれない可能性が生まれる。

リヴァプールはビルドアップの配置を細かくデザインしないため、常にライン間に人を置きつつ、誰がどのタイミングで顔を出すのかによってスムーズに前進できるかどうかが決まってくるだろう。

 

⭐︎モドリッチが前に出る4-4-1-1のミドルプレスの場合

数ある守備設定の中でも、一番可能性が高いのは直近のCLでも採用したモドリッチを前に出す4-4-1-1であろう。

相手の中盤の陣形に合わせて、2センターで相手IHを監視、モドリッチがACファビーニョをマンツーマンで捕まえ、ベンゼマがボールホルダーに牽制をかける。サイドに誘導すると、ボールサイドの相手中盤(この場合チアゴ)を2センターの片方(この場合クロース)が出て行ってマンツーマン気味に、同様に連動してボールサイドの相手WGをSBがスライドして捕まえ、WGが中切りで牽制する。

4-1-2-3のシステムのリヴァプールに対して、CFのところ以外マークが明確化する陣形であり、よってライン間にどんどんボールを送り込まれる課題も同時に解決できる。

相手とのシステムの噛み合わせとマドリーの個人能力が高さを考慮すると、この守備設定を採用する可能性が高い。

 

2センター間を狙ったフォルス9、カバーシャドーを抜け出すレイオフ、WGのドリブル突破 (vs4-4-1-1)

リヴァプールが可能とする前進方法は主に3つ。

まずはCF(マネ、フィルミーノ、ジョタ)のフォルス9の動きによるプレス回避。相手2センターは両IH(チアゴヘンダーソン)を監視するため、当然距離が開いてしまう状況もでてくる。

フォルス9の役割を得意とするCFマネにとって、広がった2センターの間のスペースまで降りてボールを引き出し、前進する起点となることは難しくないはずだ。

次にレイオフを使ってファビーニョを経由するプレス回避について。いくら賢く狡猾に守備をできるベンゼマとはいえ、CB2枚を相手に上手く牽制し続けるのは困難だ。(そもそもミドルプレスであるため、積極的なボール奪取を目的としていない)

そのため、卓越した足元の技術力を兼ね備えているマティプやファンダイクからドリブルで持ち運ぶ機会は多くなるはずである。

CFベンゼマを外してCBから持ち運ぶと、出てくるのはモドリッチ

マンツーマン担当のファビーニョをカバーシャドーで消しながら、持ち運びに対しても牽制をかける。

そのため持ち運んだCBから直接ファビーニョへボールを送ることは難しいが、IH or 内側に入ったWG、SBを中継してファビーニョまでボールを送ることは可能。

このようにレイオフを上手く活用することができればカバーシャドーを回避し、中央でフリーとなったファビーニョを起点に前進することができる。

最後にWGの突破による前進について。相手MFラインを超えた場所でWGが横幅いっぱいに幅を取っている状態で、後方から正解なロングフィードを送ると、相手WGのプレスバックは遅れてアイソレイトした状況で相手SBと一対一の状況を作ることができる。

メンディー、カルバハル共に対人守備に強く、アラバ、ミリトンのカバーリング対応も素早いため、普段のように簡単には抜き去れないだろう。しかし、個の能力だけで相手を圧倒できるテクニックとスピードを兼ね備えた突破力のあるトップオブトップのWGディアス、サラーであれば、彼らの突破を起点に前進し、そのままゴールへ迫ることも可能であるはずだ。

 

IH(チアゴ)が降りる可変によるサイドでの数的優位 (vs4-4-1-1)

IHがAC脇のスペースもしくは最終ラインまで降りることによって、相手のマークをズラすことが可能になり、誰がどこまで出て行くのか迷いを生じさせられる。

マンツーマンで捕まえられる場合、配置から逆算したポジショニングを取り続けることが攻略の鍵となる。(準決勝でシティのベルナルドがこの役割を行ったことでマークが崩壊)

選手の特性と普段の役割からすると、この役割はチアゴの方が適正か。(勿論、ヘンダーソンでも可)

アゴが降りても、守備の要であるカゼミロはそこまで付いて行きずらい。

アゴが降りたことで相手WGが牽制に来れば、SBとWGで数的優位を作ることが可能に。(逆サイドも然り)

モドリッチが牽制に来れば、前述したようにレイオフを使ってファビーニョ経由で回避し、前進することが可能となる。

 

バルベルデをWB化する5-1-3-1のリトリートの場合

配置上、5トップ気味になることは少ないもののリヴァプールの攻撃力を踏まえると、バルベルデを下げ後ろ5枚で埋めて撤退する5-1-3-1も考えられなくはないはずだ。

リヴァプールの時間帯がかなり長くなってしまうだろうが、二列目で牽制をかけつつ、後ろは5枚で各レーンを埋め、プラスでカゼミロが掃除するようなかたちでスペースを消せば、ボールを持たせて攻めあぐねさせることができる。(リヴァプールはリトリートした相手を段階的に攻略することに余り得意でない)

また、前残り気味のポジションを取るであろうヴィニシウスが背後を狙い、そこへ正確なパスを送り込めるモドリッチがいることによって、ただ守り続けるだけでなく、喉元に刃を突きつけながら守ることができる。(ロングカウンターでそのまま一気にゴールへ迫ることも)

 

瞬間的な降りと連動した飛び出し、手前からのアーリークロス (vs5-1-3-1)

リヴァプールが可能とする崩しの方法は主に2つ。

一つは相手CBを釣り出し、その空いたスペースを使う崩しである。各レーンを埋める相手に対して、相手CB前にいる選手が瞬間的に降りて相手CBを釣り出し、ポストやフリックでその背後のスペースにボールを送る。(特にマネ、フィルミーノ)

これに連動して、WGがダイアゴナルに走り込んだり、中盤が二列目から飛び出したりすれば、中央から一気にゴールまで迫ることができる。(特にサラー、ディアス、マネ、ジョタ、ヘンダーソンファビーニョ)

もう一つは相手GKと最終ライン間に落とすようなアーリークロスを使う崩しだ。主にWGのアイソレイトなどで相手を引っ張った状態で手前の選手へボールを戻す。

すると、相手DFとしては一回目線をずらされ、尚且つ後ろ向き(ゴール方向へ)の体勢となっている中で後ろから動きをつけて走り込んでこられるため、対応することが厳しくなる。

特に、アーノルドのクロス精度は、世界最高クラスであり、相手のブロックが整っていたとしても防ぐことは困難なはずだ。


最後のところで破らせない守備対応

簡単に前進されたとしても、ボックス内でのクロス処理や、身体を張ったブロック、クルトワのファインセーブなど個人での対応含めて最後のところは破らせない守備対応でゴールを守れるのが、マドリーの強みの一つである。

 

モドリッチを前に出す4-4-1-1のハイプレスの場合

常時ハイプレスをかけ続けることは考えにくいが、流れ上、GKまでプレスをかけに出る場面は何度かあるはずだ。

そのときはリヴァプールの配置に合わせて、モドリッチが前に出る4-2-3-1で相手中盤をマンツーマン気味に捕まえるかたちとなり、パターンは二つに分かれるだろう。

RWG(バルベルデ)が相手SBへのパスコースを消しながらボールホルダーへプレスをかけるパターンと、CF(ベンゼマ)がどちらかのサイドへ限定し、IH(主にモドリッチ)が相手中盤(自分のマーク)へのパスコースをカバーシャドーを使って消しながらプレスをかけるパターンである。

前者の場合、ビルドアップ能力が高い相手の場合はGKを使ってWG(バルベルデ)の頭越しのパスで相手SB(左)へボールを送られると、ボールの移動中にSB(カルバハル)がジャンプして出て行ってプレスをかけ、後ろはスライド3バックを形成して(逆サイドSBが絞って)カバー、ボールサイドのWG(バルベルデ)がプレスバックしてボールホルダーを囲い込む、といったように全体のスライドを徹底して圧縮して高い位置でボールを奪取できる。

また、後者の場合も、IH(主にモドリッチ)が前に出るのに連動して、ACやCBが空いてる相手選手まで縦スライドしつつ、WGも中切りのプレスをかけることでボールをサイドへ誘導して高い位置でボールを奪取できる。

 

GK含めた組み立てでの回避、前線へのロングボール (vsハイプレス)

一人一人の個人能力が高いマドリーのハイプレスを掻い潜ることは簡単ではないが、プレスを空転させることができれば、擬似カウンターの状況を作れ、逆にチャンスになることもあり得る。

身体能力が高く、多少アバウトなボールを収めることも、裏に抜けてスピード勝負することもできる前線3枚にロングボールを送ることも回避策としては悪くないだろう。

段階的な回避方法としては、低い位置で失うというリスクは伴うものの、一度GKアリソンを経由すること。

モドリッチが出てプレッシャーをかけ、連動して後ろ(この場合カゼミロ)が縦スライドしたときに、空いてくるIH(この場合ヘンダーソン)までパスを送れるか、相手WG(この場合ヴィニシウス)が絞ったら外側のアーノルドまでパスを送れるかがキーとなってくる。

 

 

 

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PL 21節 チェルシー vs リヴァプール 戦術マッチレビュー 〜段階的 vs 瞬間的な攻防と戦術を凌駕する最高峰の試合強度〜

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両者の現状

現在世界最高峰であることに議論の余地は無く、全ての面で遥かに水準を超えている両クラブ。

勿論他クラブと比べれば、チェルシーは各選手の個の能力が高く、リヴァプールは配置を整理した段階的な戦術を用いることもあるが、特に合理的且つ段階的な戦術で配置的優位性を保つという点で世界一であるチェルシー瞬間的な個人の能力で質的優位性を保つという点で世界一であるリヴァプールという構図の対戦となった。

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チェルシーの戦術

https://sato-yu99.hatenablog.com/entry/2021/10/05/183634

リヴァプールの戦術

https://sato-yu99.hatenablog.com/entry/2021/10/28/235328

※PL21節 チェルシーvsリヴァプール DAZNハイライト

https://youtu.be/xz1xu_ydu5E

 

チェルシーの守備、リヴァプールの攻撃

⭐︎全体が左肩上がりに可変する4-4-2のプレスからボールサイドへ圧縮

f:id:SaTo_yu99:20220108000957p:plain常に相手の陣形に噛み合わせてプレスをかけるチェルシーは、リュディガーがLSB化、アロンソがLSH化して、プリシッチが2トップの一角となる4-4-2(相手GKまで出るときは4-2-4)のハイプレスを採用。(ユナイテッド戦やユベントス戦のように個人の能力が高い相手に対しては、2トップのところが数的不利となるが、4バックにして後ろの人数を余らせる)f:id:SaTo_yu99:20220108001533p:plainf:id:SaTo_yu99:20220108001508p:plain

 

f:id:SaTo_yu99:20220108001633p:plain4-3-3の陣形のままビルドアップするリヴァプールに対して、2センターで相手IH、両SHで相手SBを見つつ、2トップがカバーシャドーで相手ACを消すように中を切りながら圧力をかける。

このようにしてボールをサイドへ誘導。全体がスライドしつつ、近くの相手を捕まえてボールサイドに圧縮する。

 

⭐︎個の能力で優位性を活かしつつトランジションの局面を生成

個々の選手の能力が非常に優れているリヴァプールは、可変して陣形を噛み合わせてくるチェルシーに対して、正確なロングパスやテクニックとスピードを駆使したドリブル、瞬間的なコンビネーションなど質的優位性を活かしたアドリブ的な攻撃を行っていた。また、トランジションも非常に早く、圧力をかけてボールを奪うと両WGが直線的に走ることで最短距離でゴールに迫るような鋭いカウンターでも再三チャンスを作った。f:id:SaTo_yu99:20220108021848j:plain

f:id:SaTo_yu99:20220108002024p:plainまた、ジョタがフィルミーノ同様フォルス9動きで中盤まで降りることによって、同数で捕まえられていた状況から一時的に数的優位を作り出してボールを前進させており、1点目もこのかたちからゴールを奪うことに成功した。f:id:SaTo_yu99:20220108002055p:plainf:id:SaTo_yu99:20220108002132j:plainf:id:SaTo_yu99:20220108002202j:plain4-4-2でサイドへ誘導し、近くの選手を捕まえてボールサイドに圧縮するプレスで完全にハメられてしまったが、前に出たコバチッチのスペースにジョタが降りてボールを引き出すことでプレス回避。すかさず空いたスペースへマネがダイアゴナルに走ることで相手のミスを誘った。

 

リヴァプールの守備、チェルシーの攻撃

⭐︎4-3-3ベースから各ラインの連動したスライドでボールサイドへ圧縮

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攻撃時同様に確固たるスタイルのもとで、かっちりと形を決めずに臨機応変に対応するリヴァプール。この試合は4-3-3の陣形からFWライン、MFライン、DFラインそれぞれが巧みに連動して縦スライドと横スライドするハイプレスを採用しており、主にファビーニョが中央で余る通常のかたちミルナーが脇で余るかたちの二通りで対応していた。f:id:SaTo_yu99:20220108010804j:plainf:id:SaTo_yu99:20220108010501j:plain

f:id:SaTo_yu99:20220108011030p:plainファビーニョが余るかたちではSB(ツィミカス)がジャンプして前に出るスライド3バックでボールサイドへ圧縮する。

f:id:SaTo_yu99:20220108010944p:plain一方でミルナーが余るかたちではミルナーがそのまま出て行き、連動して中盤が横スライドすることでボールサイドへ圧縮する。

 

⭐︎外経由でのプレス回避と相手DFラインの背後

f:id:SaTo_yu99:20220108011211p:plain配置で優位性を作ることに圧倒的に優れているチェルシーは、中央を封鎖するリヴァプールに対して、幅を取って浮いてるWBを経由してプレス回避するだけでなく、そのまま前進して素早くフィニッシュワークまで持ち込むことを一貫して行っていた。

本来のチェルシーは、ボールを外から内、内から外に出し入れすることで相手ブロックを揺さぶって、相手陣形を狭めさせて幅を使い、広げさせてゲート間を使う攻撃と、FW3枚(WBを含めた5枚)が手前のスペースへ降りる動き、背後のスペースへ抜ける動きをすることで相手最終ラインを混乱させて、相手陣形を狭めさせて背後を使い、広げさせてライン間を使う攻撃を徹底している。

f:id:SaTo_yu99:20220108011353p:plainしかし、この試合では超ハイラインを少人数で対応するリヴァプールの守備の背後を狙うため、前線の選手の全員の矢印が前向きとなって裏を狙う直線的なランニングをすることと、WBがその背後のスペースへボールを送ることを徹底して縦に早い攻撃を行っていた。f:id:SaTo_yu99:20220108014912p:plain

 

前半 蹴り合い上等のリヴァプールが自らトランジションの状況を作り出すことで、試合を支配する展開

序盤からトランジションの早さとインテンシティの高さが尋常ではなく、目まぐるしくハイスピードに局面が変わるため、ボールが落ち着く状況が中々できず。f:id:SaTo_yu99:20220108011420p:plain

強度で上回るリヴァプールが合理的且つ段階的に攻撃するチェルシーにゲームをコントロールさせず、瞬間的な崩しから再三ゴールへ迫って2得点を奪うことに成功する。

 

⭐︎サラーが内側に入る配置やスライド3バックなど配置的な欠点と、その論理すら超越する個人能力の高さ

配置を整理してポゼッションを行うのであれば、個人的には左肩上がりの3-2-4-1又は3-1-5-1の陣形が最適解であると考えている。(配置を整理しないのであれば、一昨季のように可変せず4-1-2-3でも可)

f:id:SaTo_yu99:20220108011516p:plainf:id:SaTo_yu99:20220108011529p:plain端的に述べると、パス能力の高いアーノルドを含めた3バックを形成できる(フィニッシュワーク時は攻撃参加できる)点、突破力の高いサラーをアイソレイトさせられる点、ライン間でのプレーと判断が優れているマネとヘンダーソンを内側に配置できる点などの理由がある。

実際、基本的に左肩上がりの3-2-4-1の陣形に可変することが多いが、ビルドアップの配置を明確には決めていないため、強豪相手や完全にリトリートしてブロックを固める相手には配置が崩れてしまうことも。

※個人的に最適解と考える理由の詳細

https://sato-yu99.hatenablog.com/entry/2021/10/28/235328#フィニッシュワーク-3-2-4-1-or-3-1-5-1-or-2-2-5-1

https://sato-yu99.hatenablog.com/entry/2021/04/14/183921#最適解とは離れた選手の配置

f:id:SaTo_yu99:20220108011604j:plainこの試合でも3-2-4-1の陣形を作らないことが多く、ライン間に人がいない現象やヘンダーソン、アーノルドが幅を取る現象など最適解から離れた配置となってしまうことが。(上記にあるようにそもそも配置に囚われない瞬間的な攻撃がリヴァプールの特徴でもあるのだが)f:id:SaTo_yu99:20220108011643p:plain

ただ、一時的に整った配置で攻撃をすることもあり、そのかたちで得点を奪えたのが2点目のシーン。

f:id:SaTo_yu99:20220108011755j:plain①内側に入って3バックの一角になっているアーノルドへボールが渡る。(このときアーノルドにはライン間へ走るヘンダーソンと幅を取るサラー、バックパスのコースを作るコナテなどサイドに開いてるときに比べて複数のパスコースがある) ②アーノルドには当然相手SHが寄せてくるため、アイソレイトさせることができたサラーへボールを送る。③サラーの得意な一対一の状況を作り出すことができただけでなく、ヘンダーソンが内側を走って選択肢を増加させる。f:id:SaTo_yu99:20220108011823j:plain④相手DFの対応が素晴らしかったこともあってサラーは仕掛けずに一度中央へパス。⑤ヘンダーソンの走りとサラーへの対応で相手のブロック陣形にズレができる。⑥ブロックにズレができている中で一瞬ボールウォッチャーになった相手に対して、サラーの十八番である幅を取ったところからダイアゴナルな走りと内側に入ったアーノルドの十八番であるピンポイントなパスで完璧に崩すことに成功。

 

守備時も同様に配置が最適解ではないことも。

f:id:SaTo_yu99:20220108011850j:plainチェルシーはWBが高い位置を取れば5トップ気味となるので、4バックに対して常に数的不利の状況を作られてしまう。

各駅停車のショートパスでの繋ぎであれば持ち前の連動性の早さを活かしたスライドが可能であるが、CB→WB→FWとロングパスを2本使われたり、CB→CH→WB→FWと中盤経由でレイオフされたりしてしまうと、どうしてもスライドは間に合わなくなり、後手、後手の対応をせざる得なくなってしまう。

f:id:SaTo_yu99:20220108014747p:plainf:id:SaTo_yu99:20220108014441j:plainf:id:SaTo_yu99:20220108015109j:plainこのとき、ゾーンを意識した守備を行っているので、外経由で回避されるので中盤、特に中央で余っているファビーニョが無効化されてしまっていた。

一方で、ファビーニョが縦スライドしてミルナーが余るかたちだと、ツィミカスがジャンプして釣り出されたり、相手WGとWBに二対一の状況を作られることはなくなる。(ツィミカスが釣り出されたとしてもミルナーが内側をカバー)f:id:SaTo_yu99:20220108015300j:plainf:id:SaTo_yu99:20220108015416j:plainf:id:SaTo_yu99:20220108021441p:plain

しかし、後者の方を明確に設定することはなく、あくまで状況によっての対応に委ねていた。

 

後半 修正を加えたチェルシーに対して、選手の能力でカバーするリヴァプールという展開に

⭐︎直線的な背後への走りを加えてフォルス9+二列目からの飛び出しによる攻撃

流れを無視したセットプレーからコバチッチのスーパーゴールと相手の狙いであるトランジションでの勝利からのショートカウンターで立て続けに得点し、前半で何とか同点に追いついたチェルシー

リヴァプールのハイラインを少人数で対応する守備に対して、本来であれば外経由の回避から直線的な裏抜けでゴールを奪うことが可能であるはずだが、4バック(特にCB)の個人能力の高さと連動性の早さで解決されてしまうこともあり、思うような結果にはならず。

そのため、トュヘルは前5枚全員が相手DFの背後を狙う縦に早い攻撃のかたちを残しつつ、フォルス9の動きで降りたり、三列目から出て行ったりしてチェルシーらしくライン間でボールを引き出す動きも行うように修正。

f:id:SaTo_yu99:20220108015521j:plain手前のスペースへ降りる動き、背後のスペースへ抜ける動きが同時に行われることでライン間を拡張させ、より相手を混乱させるように。f:id:SaTo_yu99:20220108015830j:plainf:id:SaTo_yu99:20220108015852p:plainf:id:SaTo_yu99:20220108020629j:plain

5-3-2へシステム変更した後は、2トップがサイドの空いたスペースに流れてオーバーロードさせることでボールサイドで瞬間的に数的優位を作る攻撃でゴールへ迫った。f:id:SaTo_yu99:20220108020222j:plainf:id:SaTo_yu99:20220108020041j:plain

 

⭐︎中盤を捕まえる5-3-2にシステム変更し、より中を締めるような守備

左肩上がりの4-4-2のプレスもかなり効いていたものの、マークをつけずにカバーシャドーで消しているAC経由から時折回避されてしまっていたため、トュヘルはプレス陣形も修正。f:id:SaTo_yu99:20220108020906j:plainf:id:SaTo_yu99:20220108021024p:plainf:id:SaTo_yu99:20220108021237p:plain


f:id:SaTo_yu99:20220108020323p:plain相手の陣形同様中盤を3枚にしてそれぞれが相手を捕まえ、2トップで圧力ををかけるより中央封鎖したプレスに。

f:id:SaTo_yu99:20220108020349j:plainその分後ろは3バックとなるので相手と同数となってしまうが、ボールサイドのWBがジャンプして前に出ると逆サイドのWBが絞るようなスライド4バックで人数を担保してボールを回収するように。f:id:SaTo_yu99:20220108020450j:plain

 

⭐︎前半同様、個人能力の高さで解決

攻守共に修正したチェルシーによって、徐々に試合は相手のペースへ。

守備において、より段階的に崩されるようになってしまったが、最後のところやギリギリの局面で引き続き個人の能力の高さで何とか対応。

また、よりプレスがはまるようになってしまったが、ハマった状態をフリックやワンツー、レイオフ、スルーなどを用いた瞬間的なコンビネーションで回避し、逆に疑似カウンターからチャンスを作れるように。f:id:SaTo_yu99:20220108021555j:plainf:id:SaTo_yu99:20220108021637j:plainf:id:SaTo_yu99:20220108021711j:plain

 

まとめ

年明け早々のビッグマッチとなったこのカードは、スピード、インテンシティ、そしてパッションが最高に高く、早くも2022年最高の試合では?という声も上がるようなまさに世界トップの戦いの内容であった。

このような試合だと、戦術レベルもさることながら各選手のアスリート能力やテクニックレベルも頂点である。そのため、多くのチャンスシーンを見てもわかるように、配置やデザインの概念を超えて個人の能力で瞬間的に局面を制圧できるかが鍵となった。(勿論、高いレベルでの戦術の攻防や修正があっての話である)

ただ、このような世界最高峰の試合を行った両チームが様々な問題があってリーグ首位に立てていない現状がある。

11月に入ってから更に離脱者が増えてしまい、ベンチにフィールドプレーヤーが殆どいないような試合があったこともあってリーグ戦3勝6分1敗とここ2ヶ月はかなり足踏みをしてしまっているチェルシー

直近3試合が勝ち切れていない中で、アフリカネーションズカップが開幕して多くの主力を起用できなくなるリヴァプール

過密日程と離脱者の関係でここからより厳しい状況となる両チームが今後どのように勝利していくのか、注目である。

 

 

 

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2022/1/4

PL 16節・17節 マンチェスター・シティvsウルブズ・リーズ 戦術レビュー 〜 2-3-5だけじゃない!! シティの配置とビルドアップ方法 〜

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シティの現状と通常のビルドアップ

直近のライプツィヒ戦こそ敗れたものの、リーグ戦は現在五連勝で首位を走るシティ。

ここでは戦術に大きく変化があったウルブズ戦、リーズ戦の2試合をビルドアップをメインに分析していく。

 

※ 今シーズンのシティのビルドアップ戦術

https://sato-yu99.hatenablog.com/entry/2021/10/19/184728

 

ウルブズ戦

ウルブズの守備 後ろを同数にして中央を封鎖する5-3-2

5-2-3のシステムをベースとするウルブズは、シティ対策のためだったのかこの試合は中盤を増やして3センターにした5-3-2のシステムを採用。

サイドにはWBのみで、8人の選手で中央を封鎖するミドルプレスとリトリートの併用であり、非保持をベースとしつつ、奪ってから前線の個の能力を活かしたカウンターを狙いとするスタイルであった。

f:id:SaTo_yu99:20211223152559j:plain相手ACを2トップで消し、内側に入った相手SBにはIHの縦スライドと残り2枚の横スライドで中央のスペースを消しサイドへ誘導する。

また、5トップ気味となるシティに対しては、同数の5バックで内側のレーン(ハーフスペース)も埋めつつ、マークがはっきりしているのでライン間で受ける選手にも後ろから出て行って対応することが可能である。

 

シティの対策 2トップで相手CBをピン留めしてライン間を空ける4-2-2-2

ウルブズの守備に対して、より内側からの組み立てを狙うような4-2-2-2の陣形でのビルドアップを試行。

f:id:SaTo_yu99:20211223152502p:plainIHギュンドアンがライン間から降りてロドリと2センターを形成し、LIHが使うハーフスペースにはグリーリッシュが降りてベルナルドと共にライン間にポジショニング。通常は幅を取る両WGが内側に入って2トップとなる配置に変更した。f:id:SaTo_yu99:20211223153429p:plain

 

f:id:SaTo_yu99:20211223152427j:plainこの配置にしたグアルディオラの意図は、2トップで相手両ワイドCBをピン留めしてその手前のスペースを空けつつ、背後へ走ってライン間をより拡張させることである。f:id:SaTo_yu99:20211223154355j:plainf:id:SaTo_yu99:20211223154303j:plain

こうすることで、5バックによって閉じられた内側のレーン(ハーフスペース)をグリーリッシュとベルナルドで使うことが可能となる。f:id:SaTo_yu99:20211223153250p:plain

 

f:id:SaTo_yu99:20211223152336p:plainf:id:SaTo_yu99:20211223152318p:plainフィニッシュワーク時も同様で、ジェズスやスターリングが裏を狙ってボールを引き出したり、その動きに引っ張られた相手CBの手前のスペースをグリーリッシュやベルナルドで使うような崩しを基本としつつ、ベルナルドで相手CBをピン留めしてその内側をスターリングがダイアゴナルに走ることで背後のスペースを使う攻撃や、スライドしてボールサイドに圧縮する3センターの脇のスペースを内側に入ったカンセロが使う攻撃でゴールに迫った。

f:id:SaTo_yu99:20211223153704p:plainf:id:SaTo_yu99:20211223153917j:plainf:id:SaTo_yu99:20211223154019j:plainf:id:SaTo_yu99:20211223154031j:plain

 

ただし、このシステムには配置上誰も幅を取る人がいないという決定的な弱点がある。

f:id:SaTo_yu99:20211223152251j:plain押し込んだ状態でこそ、SBが前に出たり、IHやWGが流れたりして瞬間的に高い位置で幅を取ることがあるものの、基本的に人がいないことが多い。f:id:SaTo_yu99:20211223154509j:plainf:id:SaTo_yu99:20211223154516j:plain

中央では配置的優位性を作ることに成功しているものの、ポジショナルプレーにおける幅を取る選手の必要性を一番重視している監督でもあるグアルディオラにしては珍しく、整理されていない配置での攻撃となってしまっていた。

f:id:SaTo_yu99:20211223152146p:plainそのため、CBからの局面を変える大きな展開ができなかったり、SBがボールを持ったときの外側へのパスコースが無かったりとポゼッションをする中での弊害が出てしまい、ピッチ幅を使って相手ブロックを揺さぶるような攻撃はできず。f:id:SaTo_yu99:20211223155234j:plainf:id:SaTo_yu99:20211223155243j:plain

 

PL16節 シティvsウルブズ DAZNハイライト

https://youtu.be/FkXdqGxKCxM

 

リーズ戦

リーズの守備 オールコートマンツーマンの4-1-4-1

圧倒的な運動量の高さを誇るリーズは、いつも通り4-1-4-1のシステムから相手の陣形に合わせて各選手が担当を決めた徹底的なマンツーマン守備のスタイルを採用した。

ただ、ここでポイントとなるのは、単に全員がマンマークで守備をするわけではないということである。

f:id:SaTo_yu99:20211223152115j:plainまず、第一としてCFとCBのところだけは、相手と人数を変えてマンツーマンにならないようにしている。

オールコートマンツーマンは、積極的でハイリスクな守備スタイルであるため、最低限のリスク管理としてCBを一枚余らせる。

よって、CFだけは相手のCB二枚を一人で相手にしなければならない。

このCFの役割は非常に重要で、ボールホルダーではないCBへのパスコースを切りながらボールホルダーにスプリントして圧力をかけつつ、持ち運びに対してはプレスバックも行うというように、賢い守備と献身的な守備が求められる。(この役割をこなすのに適任であるバンフォードが不在であったが、彼以上のスプリント力を兼ね備え、PL屈指レベルでハードワークできるジェームズは、守備においては代役として適任であった)

f:id:SaTo_yu99:20211223152050j:plainそれでも、相手CBにドリブルで持ち運ばれたり、瞬間的に剥がさせるなどしてマークがズレてしまう場合もある。

このときは、WGかIHが対応することになる。

担当のマークへのパスをカバーシャドーで消しながらプレスをかけに出て行くパターンと、時間を稼ぎつつCFがプレスバックすると彼にマークを受け渡して自分がプレスをかけに出て行くパターンがオーソドックスなかたちである。

徹底したマンツーマン守備であるが、局面局面ではカバーシャドーやマークの受け渡しを行い、常にパスコースがない状況を作り出す。

 

シティの対策 配置から逆算する完璧なレイオフを多用した4-1-5

リーズの守備に対して、4-1の配置でのビルドアップを試行。

f:id:SaTo_yu99:20211223152022p:plain両IHベルナルドとデ ブライネが前に出てFW気味にポジショニング。通常は内側に入ってパスコースを増やす両SBが、ワイドに開いて低い位置で幅を取るような配置に変更した。f:id:SaTo_yu99:20211223161426j:plain

この配置だとSBとWGが縦関係になったり、ライン間に人がいなかったりとポジショナルプレーを徹底するシティとしては最悪の陣形となってしまう。

それでも敢えてこの配置にしたグアルディオラの意図は、マンツーマン守備の相手に対して、SBが開くこととIHが前に出ることによって中央のスペースを最大化することである。

f:id:SaTo_yu99:20211223151957p:plain恣意的に空けた中央のスペースへベルナルド、デ ブライネ、フォーデンがそれぞれ不規則且つ瞬間的に降りてレイオフを使うこと、そして必ずどこかで浮いているフリーの一人にパスを通すことを徹底。

 

リーズにおける基本のプレス(2CB vs CF)の場合、ビルドアップ法は大きく分けて二通り。

相手CFがCBへのコースを消しながらスプリントしてくるので、基本的にCBからCBへパスを送ることは困難となる。

そこで、マンマークで付かれていてもダイレクトプレーでの展開であれば可能であり(動きをつけて降りればより簡単に捌ける)、3人目の選手がフリー且つ前向きでボールを受けることができるレイオフを多用。

f:id:SaTo_yu99:20211223151857p:plainf:id:SaTo_yu99:20211223151650p:plain最大化したスペースにIHやCFが瞬間的に降りてレイオフを使う組み立てと、PAから出てパスコースを作るGKエデルソンを使う組み立てで、相手CFのコース限定したプレスを無効化し、逆のCBまで難なくボールを送ることに成功させた。f:id:SaTo_yu99:20211223161825j:plainf:id:SaTo_yu99:20211223162026j:plainf:id:SaTo_yu99:20211223161956j:plain

他のプレスの場合も、根本的な理論は同じで、レイオフを使ってフリーの選手へボールを送ることを一貫して行った。

f:id:SaTo_yu99:20211223151605p:plainWGが出てくるプレスの場合も、瞬間的に降りるIHやCFを経由するレイオフを使うことで、カバーシャドーで消されていたSBへボールを送る。f:id:SaTo_yu99:20211223162201j:plain

 

f:id:SaTo_yu99:20211223151533p:plainf:id:SaTo_yu99:20211223151409p:plainまた、中盤が出てくるプレスの場合も、瞬間的に降りるIHやCFを経由するレイオフを使うことで、カバーシャドーで消されていたACへボールを送る。(この時、背中で消されているロドリがDFラインまで降りないため組み立てをサポートできなくなってしまうが、敢えて前に出て行ってその後レイオフを使って受けることでプレスを回避)f:id:SaTo_yu99:20211223162635j:plainf:id:SaTo_yu99:20211223163304j:plainf:id:SaTo_yu99:20211223163340j:plainf:id:SaTo_yu99:20211223162422j:plain

f:id:SaTo_yu99:20211223162428j:plain相手IHのカバーシャドーが甘いときは、ロドリが背後からずれて直接ボールを受け、ドリブルで持ち運ぶ

 

このようなビルドアップを再三成功させており、それが得点まで繋がったのが一点目と三点目。

f:id:SaTo_yu99:20211223163834j:plainf:id:SaTo_yu99:20211223163724j:plain大きな展開によってCFジェームズのプレスにズレを作る → CFジェームズが追いつかないため、IHロバーツがロドリを背中で消しながら出て行き、ラポルテを牽制 → ロドリは相手のカバーシャドーを回避するように背後からずれ、恣意的に空けた中央のスペースにフォーデンが降りてボールを引き出す → フォーデンが引き出したタイミングでロドリが前に出てボールを受ける → メリエに阻まれるがセカンドボールをフォーデンが押し込む

f:id:SaTo_yu99:20211224225302j:plain流れ上、ワイドに開いたラポルテまでCFジェームズが追うも回避 → IHロバーツがロドリを背中で消しながら出て行き、ディアスを牽制 → 恣意的に空けた中央のスペースにフォーデンが降りてボールを引き出しダイレクトで落とすレイオフで簡単にロドリへ → CBエーリングがフォーデンのフォルス9の動きにマンツーマンで付いて行ったため、そこの空いたスペースへデ ブライネが瞬間的にスプリント → その動きを見逃さずロドリがスルーパス → 走力に優れたデ ブライネはスピードで相手を置き去りにし、そのまま落ち着いてシュート

 

f:id:SaTo_yu99:20211223105422j:plain更には、高い位置を取るIHやCFが低い位置にポジションを取ることで相手を釣り出し、レイオフや背後へのダイアゴナルなランニングを使って、一気にフィニッシュワークへ持ち込むことも。f:id:SaTo_yu99:20211223163518j:plain

また、高い個人の能力も兼ね備えているデ ブライネやグリーリッシュがドリブルで瞬間的にマークを剥がして回避したり、シュートで違いを見せつけたりするなど、リーズのマンツーマン守備に対して、一対一の局面でも上回っていた。

f:id:SaTo_yu99:20211223164135j:plainf:id:SaTo_yu99:20211223164214j:plainf:id:SaTo_yu99:20211223164233p:plain


このように、空いたスペースと浮いた選手を瞬時に見つけて常にそこを使うことを徹底したポゼッションで、リーズのマンツーマン守備の効力を完全に無くしただけでなく、それを逆手に取って段階的にゴールへ迫る配置的優位性と、局面で個人の能力の高さを活かしてゴールへ迫る質的優位性のどちらでも圧倒することに成功した。

 

PL17節 シティvsリーズ DAZNハイライト

https://youtu.be/JrsFtWZZ09M

 

まとめ

相手に退場者が出たこともあって後半は通常のビルドアップへ戻し、何とか勝利を収めたウルブズ戦と、大量得点で勝利したリーズ戦。

どちらの試合も相手の陣形と戦術から逆算した段階的な攻撃を試みており、個人的にも非常に興味深い内容であったが、結果は対照的に。

昨シーズンのチェルシー戦でも、2トップで相手ワイドCBをピン留めする戦術を用いて5バックの攻略を試みた結果、良点と課題どちらも浮かび上がったが、ウルブズ戦でもその最適解には至らず。

https://sato-yu99.hatenablog.com/entry/2021/05/28/233316#チェルシーのプレッシングシティのビルドアップ

https://sato-yu99.hatenablog.com/entry/2021/06/06/183735#シティのビルドアップ

一方で昨シーズン1分1敗と苦戦したリーズには、レイオフのお手本のようなビルドアップでマンツーマン守備を完全攻略した。

特に今シーズンはボールを保持して殴り続けることでゴールをこじ開けるような試合も多かったシティだが、やはりグアルディオラグアルディオラ。これらの試合のように合理的且つ段階的にゴールへ迫る多角的なアプローチも当然可能である。

個人の能力が高く質的優位性を作られてしまうような相手だけでなく、配置から逆算して合理的且つ段階的に崩すライプツィヒのような相手にも完敗してしまったシティは、今後PLやCLの制覇を目指す上で、この二試合のような配置で優位性を作るような攻撃をより求められるはずである。

グアルディオラは、5バックに対して相手CBをピン留めする戦術の最適解を見出せるのか、そして相手から逆算して配置で上回る新たな戦術を見せてくれるのか、今後のシティに注目である。

 



さとゆう (@SaTo_yu99) | Twitter

2021/12/17

21/22シーズンの戦い方はこうだ!! プレミアBIG6戦術ガイド 〜スールシャールユナイテッド編〜

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ユナイテッドの現状

今シーズンこそタイトル奪還を狙うために、世界最高峰の選手であるロナウドの12年振りとなる復帰や、近年は毎シーズン獲得候補に挙がっていたヴァラン、サンチョの念願の加入など充実した戦力にラストピースを加えたユナイテッドだったが、直近PL7試合は1勝1分5敗とかなり低迷してしまい、遂にはスールシャール監督が解任となる事態になってしまった。

 

ユナイテッドのスタイル

ユナイテッドは、スールシャール監督の下、最高のタレントを揃えて世界でもトップクラスの戦力を誇るチームを作り、瞬間的なコンビネーションによる崩し、各選手のスーパーな技術と創造性による攻撃や、カバー範囲の広さ、インテンシティの高さ、対人の強さを活かした守備など攻守共に個人のクオリティーの高さ(質的優位性)での解決をベースとした選手の個性の色が強いチームである。

 

ただ、今季はロナウドが加入したことも影響してなのか、シーズン途中で大きく陣形を変更している。そのため、ここでは時期ごとに戦術を分析していく。

  • 昨季からヴィラ戦まで(ユナイテッドのベース) : I期
  • ヴィラに敗戦後のビジャレアル戦以降 : II期
  • リヴァプールに敗戦後のスパーズ戦以降 : Ⅲ期

 

ビルドアップ 

・ベース / 4-2-3-1

ユナイテッドのビルドアップの陣形は、基本的に可変せず4-2-3-1のままである。

f:id:SaTo_yu99:20211206213749p:plain4バックで組み立てつつ、判断力とそれに伴うプレー選択などのオフザボールが極めて良いブルーノが各所に顔を出してボールを引き出すことで前線と後方を繋ぎ、ボールを前進させるスタイルである。

f:id:SaTo_yu99:20211206213808j:plain可変しないため、2CBと2センターがスクエアの形状となったり、SBとWGの両方がサイドに開くことで縦関係になるなど配置を全く整理せず、相手のプレッシングにとてもハマりやすい陣形である。(マクトミネイやマティッチが瞬間的に降りて3バックを形成することはあるが、SBは低い位置で、WGは高い位置で幅を取ったままでことが多く、ポジショナルプレーとはほど遠い)

ただ、これがユナイテッドのビルドアップの特徴でもある。どういうことかと言うとプレスにハマっているところさえさえ剥がすことができれば、手薄な逆サイドに展開したり、疑似カウンターに繋げたりすることができるため、状況は好転することが多い。

とても難しくリスクも高いが、個の能力が非常に高い選手が揃うユナイテッドは瞬間的なコンビネーションとドリブルでこれを可能にさせる。

f:id:SaTo_yu99:20211206213848j:plain二手、三手先が見えるビジョン、状況によって最適なプレーを選択できる判断力、相手に捕まらず瞬間的に現れてボールを引き出すオフザボール、長短織り交ぜた正確なパスや狭いスペースでも奪われないテクニックなどのオンザボールを兼ね備えたブルーノとカバーニ(ロナウド)が中央から流れてライン間でボールを引き出しつつ、それに合わせてSB、DH、WGが動くことで、フリックやワンツー、レイオフ、スルーなどを用いたコンビネーションでボールを前進させる。

f:id:SaTo_yu99:20211206213953j:plainまた、SBが低い位置で開いているため、基本的にそこがプレスのハマりどころ(相手の奪いどころ)となるが、推進力が高くて内外どちらにも運べるショーとワン ビサカだけでなく、後ろを向いた状態でも強引に剥がして前を向けるマクトミネイやポグバ、サイドで囲まれた状況でもテクニックとスピードを駆使して前進できるラッシュフォードやグリーンウッドなどのドリブルでプレス回避することも可能である。

 

・II期 / 2-3-2-3 or 2-4-1-3

II期では、大幅に可変はしないもののSBが内側に入る2-3-2-3もしくは2-4-1-3の陣形となるように。(基本システムは4-1-2-3)

f:id:SaTo_yu99:20211206214050p:plainf:id:SaTo_yu99:20211206214102p:plain2CBと両SB含めた3センターで組み立てて、WGが幅、IHがライン間、CFが深さを取るようになったことで配置を整理することには成功した。

f:id:SaTo_yu99:20211206214200j:plain今まで個の能力に頼った瞬間的なビルドアップが多かったユナイテッドが、このような配置の整理によって、パスで相手のラインを超えて段階的にボールを前進させたり、WGのダイアゴナルな走りとCBのロングパス(特にリンデロフ → ラッシュフォード)で背後を取って一気にゴールに迫れるようになった。

f:id:SaTo_yu99:20211206214230p:plainまた、SBとWGと縦関係にならないようになり、SBがボールを持ったときにもサイドと中央にパスコースの角度がつくのでボールを配給しやすくなった。

 

・Ⅲ期 / 3-4-1-2 or 3-4-3

Ⅲ期では、陣形を大幅に変更して5-3-2のシステムに。

f:id:SaTo_yu99:20211210193716p:plain可変しなくとも整理されやすい配置となるシステムではあるが、CBが開いてパスコースを作ったり、WBが高い位置で幅を取ったりすることはなく、ライン間にも人がいないなど決して良くはない配置であり、ボールを繋ぐ原則やビルドアップにおける戦術のデザインも曖昧である。

 

f:id:SaTo_yu99:20211210193731j:plain
ただ、ベース期同様に整理されていない状況から瞬間的なコンビネーションとドリブルを使ったり、ブルーノ、ロナウドカバーニを中心に彼らが状況に応じて適切なポジショニングをすることでパスコースを作ったりしてボールを前進させる。

 

フィニッシュワーク

・ベース / 2-2-5-1

ユナイテッドのフィニッシュワークは、ビルドアップ時同様、流動的なポジションの入れ替わりや内側でのコンビネーションなど自由な配置の下で各選手の個人の能力の高さを活かし、瞬間的に崩すスタイルである。

f:id:SaTo_yu99:20211206214300p:plain基本的には、SBが前に出て高い位置で幅を取り、連動してWGが内側に入るような配置となる。

f:id:SaTo_yu99:20211206214326j:plainただ、それはあくまで最初の配置であり、流れの中でポジショニングはどんどん変化する。

f:id:SaTo_yu99:20211206214421j:plain2CB以外は役割が固定されておらず、SBやDH、CFがライン間を取ることもあれば、WGやCF、ブルーノが幅を取ることもあるし、WGやブルーノで深さを作ることもある。

そのため、パスコースが確保できていないことや幅を取れていないこと、ライン間に人が立っていないことなど配置が整理されていないシーンも多い。

従って、立ち位置でズレを作って合理的に崩したり、揺さぶることで綻びを作って段階的に崩したりするような攻撃はあまり見受けられないが、整理されていない配置によって相手に混乱を生み、能力の高い選手たちが状況に応じたアドリブ的なプレーや動きをすることでチャンスを作る。

f:id:SaTo_yu99:20211206214500j:plainこのようにして、フリックやワンツー、レイオフ、スルー、二列目(三列目)からの飛び出し、3人目の動きなどをダイレクトプレーを使った瞬間瞬間のテンポの良いコンビネーションでゴールに迫る。

 

・II期 / 2-3-2-3

f:id:SaTo_yu99:20211206214552p:plainSBが内側に入ることで個の能力だけで相手を圧倒できるテクニックとスピードを兼ね備えた突破力のあるWGに幅を取らせた配置となる。(幅を取った状態からの仕掛けを得意とするタイプのWGが多いユナイテッドのスカッドを考慮した陣形ともいえる。)

f:id:SaTo_yu99:20211206214621j:plainこのようにして、WGをアイソレイトさせ、彼らのドリブルとSBやIHのランニングによってゴールに迫る。

f:id:SaTo_yu99:20211206214654j:plainまた、ビルドアップ時同様、戦術の原理やデザインなどボール繋ぐ原則こそ無いものの、ベース期の配置とは違って各エリアに選手が立っているので、展開して揺さぶることができると、内側で浮いたSBの持ち運びやライン間から顔を出したIHのスルーパスを使った攻撃も行えるように。

 

・Ⅲ期 / 3-5-2

基本的に幅はWBが取るかたちとなるが、それ以外はベース期同様に、流動的なポジションの入れ替わりや内側でのコンビネーションなど自由な配置の下で各選手の個人の能力の高さを活かし、瞬間的に崩すスタイルである。

 

プレッシング

・ベース / 4-2-3-1 or 4-4-2

ユナイテッドのプレッシングは、守備時も個人の能力の高さをベースとした強度の高いハイプレスとミドルプレスの併用であり、主に三通りのかたちを状況に応じて使い分ける。

カバーニとブルーノが縦関係となるか、ブルーノが前に出て2トップとなるのだが、彼らは全速力でスプリントしてボールを奪いに行き、回避されてもプレスバックや二度追い、三度追いをするなど非常に献身的でハードワークできる能力と、カバーシャドーを使って1人で相手2人を消したり、パスコースを限定して同サイドに追い込んだりする賢い守備のどちらも行うことができる。

フレッジとマクトミネイの2センターも同様に、無尽蔵のスタミナを武器にピッチを縦横無尽に走り回れるカバーエリアの広さと、フィフティのボールやセカンドボールなどを回収したり、対人守備や球際などで負けないインテンシティの高さを兼ね備えている。

一方で、WGは前からのプレスは積極的に行うものの、プレスバックなどはあまりせずにカウンター備えて前残り気味となることが多い。

ショーとワン ビサカはどちらもCBの背中やDFラインの背後などスペースを絞って守ったり、カバーしたりする守備は得意でないものの、スピード、パワーに優れ、圧倒的な対人能力の高さを持つ。

一方で、マグワイアとリンデロフのCBはスピードやパワーに劣りがあり、対人守備を苦手としているものの、予測力やポジショニング、カバーリングには長けており、自ら苦手状況を作らせないことができる。

このような特性を持つスカッドにおいて、2トップ、2センターとWG、SBとCBの補完性は非常に良く、彼らの能力を活かして質的優位性を作った守備(プレッシングだけでなく、ブロック時も)を行う。

プレッシング方法は大きく分けて3パターンある。

f:id:SaTo_yu99:20211206214753j:plain一つ目はWGがかなり内側に絞るかたち。CFが内側のコースを切りながらプレスをかけてサイドへ誘導。(カバーニがコースを限定してから二度追いすることで1人でGK含めて3枚を相手にすることを可能としている。)逆サイドのWGとトップ下が相手中盤をそれぞれ捕まえ、ボールサイドのWGがボールホルダーに内側を消しながら圧力をかけることでボールサイドに圧縮する。

f:id:SaTo_yu99:20211206214835j:plain二つ目はWGが前に出てCFと2トップを組むかたち。カバーニ(状況によってはブルーノ)が自分が見ている相手選手へのパスコースを消しながらボールホルダーへプレスをかけてボールを奪う。ビルドアップ能力が高い相手の場合はGKを使ってWG(グリーンウッド)の頭越しのパスで相手SB(左)へボールを送らてしまうこともあるが、ボールの移動中にSB(ワン ビサカ)がジャンプして出て行ってプレスをはめ、後ろはスライド3バックになることでボールサイドに圧縮する。

f:id:SaTo_yu99:20211206214901j:plain三つ目はブルーノが前に出てCFと2トップを組むかたち。CFが内側のコースを切りながらプレスをかけてサイドへ誘導。(カバーニとブルーノがコースを限定しながらスプリントすることで2人で相手3人を見ることを可能としている。)DHやCBがスライドして空いてる相手選手を見つつ、WGが中切りのプレスをかけることでボールサイドに圧縮する。

 

また、ロングボールなどを使われてもCBが跳ね返して強度の高い2センターで回収したり、突破力の高いWG相手にも対人の強いSBが対応したりすることで、局面で相手に質的優位性も作らせない。

 

・II期 / 4-2-3 or 4-2-3-1 or 4-2-4 

コンディション調整が上手くいかず(特に今季はEL決勝の後にユーロもあったため)にシーズン頭はロースタートになることが多いユナイテッドは、インテンシティや連動性が低いこともあってミドルプレスを採用。シーズン中盤にかけてインテンシティと連動性を上げ、ハイプレスに戻すのが従来の流れだが、カバーニではなくロナウドが起用されることでドルプレスとリトリートの併用に。

f:id:SaTo_yu99:20211206214936p:plainf:id:SaTo_yu99:20211206214959p:plainベース期と陣形自体は変わらないものの、奪いどころを設定して圧力をかけるようなことはせず、基本的にはボールホルダーには牽制程度でミドルサードで構えるかたち。

しばしば相手CB(右)を見る役割を行うことがあるものの基本的にロナウドは守備免除されているので、ボール奪取方法としては前線の選手が出て行ってプレッシャーをかけるか(ミドルプレス)、中を絞めたブロックを形成することで相手のミスを狙うか(リトリート)のどちらかである。

f:id:SaTo_yu99:20211206215557j:plainミドルプレスの場合は、ブルーノがカバーシャドーを使って相手中盤選手を消しながら出て行く又はRWGが出て行くことでボールホルダーに圧力をかける。

f:id:SaTo_yu99:20211206215618j:plainリトリートの場合は、ボールがサイドに送られると、WGが出て行って牽制し、SBが縦スライド、2センターが横スライドしてボールを前進させない。

f:id:SaTo_yu99:20211206215422j:plainボールがサイドに送られると、SBがジャンプして前に出るスライド3バックとなる守備と、全体が下がることでスペースを埋めてその間にブルーノ又はWGがプレスバックする守備を状況に応じて使い分ける。

このように、フレッジとマクトミネイ、そしてブルーノの3人にはかなり負担がかかる守備スタイルとなるが、ずば抜けた運動量を武器に攻守においてハードワークできることで2人分、3人分と広いエリアをカバーする。

 

・Ⅲ期 / 5-3-1 or 5-2-3

Ⅲ期では、II期同様にミドルプレスとリトリートの併用である。

f:id:SaTo_yu99:20211210193413p:plainWB以外中央に配置される5-3-2のシステムによって、より中を締めて牽制できるように。

f:id:SaTo_yu99:20211210193451j:plainボールがサイドに送られると、3センターがスライドしてボールサイドのIHが中切りのプレスをしたり、カバーニが二度追い、三度追いしてコースを限定し、それをスイッチにIHが出て行き、それに連動してWBも出て行ってボールサイドに圧縮したりして相手を牽制する。

 

ブロック

・ベース、II期 / 4-4-1 or 4-4

ブロックのスタイルはベース期と大幅には変わらず、基本的には同じスタイルを継続。

CFがブロックに加わらない4-4-1又はどちらかWGもカウンターに備えて前に残りブルーノが下がる4-4の陣形のブロックとなる。

f:id:SaTo_yu99:20211207192609j:imagef:id:SaTo_yu99:20211207192611j:imageプレッシング時同様、個人の能力の高さをベースとしたブロックを組むスタイルである。

f:id:SaTo_yu99:20211206215306j:plain前述したように両SB共にリーグ屈指の対人能力を兼ね備えているので、相手に質的優位性を作られることは殆どない。そのため、WGがプレスバックをしなくとも守ることが可能となる。

そして、空いてるスペースはブルーノや2センターが縦スライドしてカバーする。

f:id:SaTo_yu99:20211206215402j:plain更に2センターは最終ラインに吸収される縦スライドだけでなく、SBが出ていけないときにはカバー範囲の広さを生かしてサイドまで出て行く横スライドで対応する。

 

・Ⅲ期 / 5-3-1 or 5-4 or 5-3

Ⅲ期では、カバーニがプレスバックする5-3-1、5-4又はカバーニが起用されないときは5-3の陣形のブロックとなる。

f:id:SaTo_yu99:20211210193223p:plain3センター+カバーニがスライドしながら中を締めつつ、後ろ5枚でしっかりと各レーンを埋めてゴールを守る。

 

ユナイテッドの特徴

ストロングポイント

  • 個の能力のレベルの高さ

→ 全ポジションで攻守共に質的優位性を作ることが可能である

  • コンビネーションや突破などの瞬間的な攻撃

→ プレスが全部ハマっていても回避し、完璧にブロックを作っていても崩してしまう理不尽さを持つ

  • 対人能力や強度の高さを活かした守備

→ 各エリアどこでも基本的に一対一の守備には強いので質的優位性を作らせず、仮にそこを突破されても4バックと2センターのシュートブロック、更にはデ ヘアの神がかったセーブでゴールを割らせない

 

ウィークポイント

  • コンビネーションや突破などの瞬間的な攻撃

→ 配置を整理して合理的、段階的に攻撃することがないので、選手のパフォーマンスレベルに左右されがちであり、相手に対して局面で質的優位性を作れないと攻めあぐねてしまう(特に強度の高いプレスで前進させてもらえないときや引いてブロックを固められたときなど)

  • 対人能力や強度の高さを活かした守備

→ 細かなデザインや決まり事がないので、相手に質的優位性を作られてしまうと一気に崩れてしまう(広大なエリアをカバーする2センターが剥がさる or スライドが遅れることで中央のスペースが空いて大きく間延びしてしまう、SBの対人守備を突破されることでCBが釣り出されてしまったり、簡単にクロスを上げられて大外が空いてしまう、大きな展開から相手に内側走られることで釣り出されてワンツーで崩されるなど)

 

スールシャール政権で課題だったポイント

  • 攻撃の配置と原則やデザインの未設定 (全期通して)

再三述べているように、攻撃戦術についてのディティールは曖昧で、選手の瞬間的な判断と技術に任せがちであった。

f:id:SaTo_yu99:20211210192842p:plain特に4-2-3-1のまま陣形でのビルドアップは、選手が縦関係になりやすい配置であるため、カバーシャドーを用いたりボールサイドへの圧縮を行ったりするプレスに対してはかなり不利な状況となる。(極端ではあるがこの場合、相手は4人でユナイテッド8人を消すことが可能となる。こうなると相手は後ろに人を多く余らせることができ、いくらブルーノとはいえ、ボールを引き出すことが困難になる。)

またこれに連動して、ライン間に人がいないという状況も多く、ボールは保持していても中々ゴールへ迫れないことも。(フィニッシュワーク時、WGが内側に入ってライン間にポジショニングする配置となるが、基本的にポグバ以外はサイドで幅を取って仕掛ける選手なので、内側に立っていてもボールを上手く引き出せないことが多い)

 

  • ブロック時の守備原則の未設定 (全期通して)

守備戦術についてもディティールは曖昧で、少ない人数でも選手の瞬間的な判断と技術ベースで守るスタイルであった。

基本的にWGのプレスバックが甘い(カウンターに備えて前残りしている)ので、サイドにはSBやDHが積極的に出て行って対応することも多いのが特徴であったが、今シーズンはその守備の強度や練度も低下。(PL 20チームにおいて、一試合平均タックル数20位、インターセプト数と空中戦勝率数は19位)

f:id:SaTo_yu99:20211210200957j:plainf:id:SaTo_yu99:20211210201000j:plainそのため、SBのインナーラップを使ったワンツーやWGのドリブル突破で瞬間的に剥がされてしまうと、少ない人数で守っているので対応は難しくなる。SBだけスライドするとCB、SB間のスペース、SBとボールサイドのCB一枚だけスライドすると2CB間のスペース、全体がスライドすると大外(SB裏)のスペースが空いてしまうようにボックス内にも関わらず、フリーでシュートに持ち込まれてしまうシーンが目立った。

f:id:SaTo_yu99:20211210201004j:plain同様に、ブルーノと2センターもボールサイドまでスライドして守備を行うことも多く、彼らが釣り出されて2センター脇のスペースを使われてしまう場面も目立った。(後述にあるように、CBが出て行って対応するようなことはせず)

守備貢献度の非常に高いカバーニやジェームズがいないため、プレッシング時と同じくより2センターとブルーノに負担がかかるように。

 

  • 配置を整理したことによる弊害 (II期)

流動的なポジションの入れ替わりや内側でのコンビネーションなど自由な配置の下で各選手の個人の能力の高さを活かし、瞬間的に崩すスタイルを継続してきたユナイテッドは、質的優位性だけでなく、システムとスタイルの変更によって配置的優位性を作ることを試みた。

しかし、立ち位置を設定して配置を整理したことで自由なポジションチェンジや瞬間的なコンビネーションなど流動性の高い攻撃が大幅に減少

f:id:SaTo_yu99:20211210201101p:plainビルドアップにおける戦術の原理やデザインなどボール繋ぐ原則が無く、配置を整理しただけであったため、CBからWGへのパスコースの確保、アイソレイトさせたWGの内側(ハーフスペース)へのIHの走り込み、SBの攻撃参加のタイミング、各選手の距離間などディティールの甘さが目立った。

また、ライン間で駆け引きをして中継役となるブルーノがどちらかのサイドに固定されることで、ボールが出入りしにくくなったり、ロナウドやリンガードなど内側に入ってプレーする選手がWGに起用されることで、誰も幅を取っていなかったりするなど新たな問題も発生するようになった。

※ビルドアップにおける戦術の原理やデザインなどボール繋ぐ原則とは

同じ配置のシティを例に挙げると、SBが内側に入ることによってパスコースの選択肢の増加幅を取るWGの孤立を狙いとしていることが明確。これを根底として、より両SBが絡んだ崩し、流動性の高さを活かしたポジショニング、内側にパスコースが増加、相手1stラインをパスで突破、ネガティブトランジション時のフィルター、可変せずGKを含めたビルドアップへの移行など細かなデザインがある。

 

  • スタイルの変更とプレス方法の未変更 (ロナウド加入以降)

[プレッシング]で記載しているように、ユナイテッドのイプレスは2トップのハードワークによって成り立っていたため、ロナウドの加入によってミドルプレスとリトリートの併用に変更した。(PL20チーム中、Team pressures において16位、Successful pressures において19位、Pressure in final 3rd において17位)、(ロナウド個人における一試合辺りのプレス数は全選手の中で最下位というデータもあるが、ロナウドが悪いというよりかは、彼を起用するのであればそれに則したプレス方法の設定をしなかったことが問題)

プレスのスタイルを変更したにも関わらず、プレス方法は変更せず。

f:id:SaTo_yu99:20211210193005j:plain全く圧力がかかっていないボールホルダーに、WG(グリーンウッド、ラッシュフォード)がコースが限定できていない外切りのプレスをかける。

そのため、相手としてはCBから難なくSBへパスを通すことができる

コースが限定できてないプレスによって相手SBが余裕を持ってボールを受けられるということと、リトリートした状態なのでそもそもスライド3バックをするにはプレスエリアが低すぎるということが相まって、SB(ワン ビサカ、ダロト)は中途半端にジャンプして前に出るかたちに。

そのため、相手としては遅れて出てくるSBに対して、余裕を持って幾つかのパスコースを探すことができる

f:id:SaTo_yu99:20211210193008j:plain常に後手に回るプレスをかけた結果、後ろで割を食うことに。逆サイドのショーはマグワイアの背中を守るために上手く絞っているが、更にその背後の大外が完全に空いてフリーとなり、ピンチとなるシーンが目立った。

 

  • スカッドの組み合わせによっては、3センターへの負担と下がるDFラインが露呈 (Ⅲ期)

システムを5-3-2へ変更して以降、スプリントして二度追い、三度追いしたり、プレスバックで縦スライドして中盤のスペースを埋めたりできるカバーニがいるといないとではより違いが出るようになった。

f:id:SaTo_yu99:20211210193157j:plain2トップ脇のスペースには3センターの横スライドと縦スライドで対応するプレス方法を取るユナイテッドにおいて、よりフレッジ、マクトミネイ、ブルーノへの負担が大きくなるように。3人ともPLトップレベルでハードワークできるとはいえ、物理的にスライドし続けることは不可能であり、ロングパスを使って大きく展開されるとどうしても3センター脇のスペースが空いてしまい、ボールを差し込まれるシーンが目立った。

f:id:SaTo_yu99:20211213223256p:plainまた、4バック時にもあったCBが縦スライドせずに出ていかない問題が、後ろの人数が増えた5バックになっても解決されず。

3CBが出て行って人を捕まえたり潰したりしないので、かなり後ろ重心の守備となってしまい、簡単にライン間にボールをつけられてから相手選手に前を向かせてしまうシーンも目立った。

 

  • セットプレーにおけるデザインや決まり事の欠如(全期通して)

長身でヘディングが強い選手とキック精度に優れた選手のどちらもリーグ屈指のレベルにあるユナイテッドだが、攻撃、守備共にセットプレーを得意としていない。(キッカー : ブルーノ、ショー、テレス、サンチョ、マタなど ヘッダー : ロナウドマグワイア、ポグバ、マクトミネイ、ヴァラン、カバーニ、ラッシュフォードなど)

攻撃においては、PLで未だ唯一セットプレーから得点を奪っていないチームであり、守備においては、昨シーズンの総失点の三分の一がセットプレーからの失点となってしまっている。

 

https://www.whoscored.com/Teams/32/Show/England-Manchester-United

https://www.sofascore.com/team/football/manchester-united/35

https://www.skysports.com/football/news/11095/12478473/ralf-rangnick-to-man-utd-how-former-hoffenheim-and-rb-leipzig-manager-helped-revolutionise-german-football

 

まとめ

選手の能力の高さとスカッドの厚さにおいて世界屈指のレベルにあり、昨シーズンはPL2位、EL決勝進出とスールシャール政権三年目となって着実に進化していたユナイテッドであったが、ここに来て内容だけでなく、結果にも恵まれなくなったことも相まって監督の求心力も低下。

それまでも何度も解任の噂はあったものの、上層部やOBから厚い信頼を得ていたこともあってスールシャールで長期政権を築くかに思われていたが、遂に解任される事態になってしまった。

(後任はアシスタントを務めていたキャリックが一時的に監督となり、その後ラングニックが暫定監督となることが発表。中を締めた4-2-2-2から10秒以内に攻めきる戦術や、25歳以下の選手しか獲得しない方針など確固たる哲学を持つ彼が、それらを豊富なタレントたちに落とし込めるのか、今後のユナイテッドに注目である。

→ ラングニックユナイテッドの考察については後日更新)

 

 

 

さとゆう (@SaTo_yu99) | Twitter

2021/11/23