SaTo_yu99’s blog

主に戦術的な視点からサッカーに関する執筆をしています。 Manchester United🔥

カタールW杯 日本 vs ドイツ 戦術マッチレビュー 〜日本はどのようにしてドイツを負かしたのか?〜

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前半

プレッシング🇯🇵 ・ビルドアップ🇩🇪

🇩🇪 左肩上がりの3-2-4-1

攻撃時はラウムとニャブリで幅、ムシアラとミュラーで幅を取る左肩上がりの3-2-4-1に可変する。

3バックと2センターで安定して組み立てつつ、幅とライン間を使って段階的に前進。



🇯🇵 4-4-2のミドルプレス

鎌田が前に出て前田と2トップを形成、相手2センターをカバーシャドーで消しながら相手3バックにも牽制をかけるミドルプレスを採用した。


🇩🇪 カバーシャドーの回避でCHを経由

CB→ワイドCB→CHといった斜めのパスや、CB→ライン間の選手→CHといったレイオフを使って簡単にカバーシャドーを回避し、CHまでボールを送れていた。

斜めのパス

 

レイオフ

このようにして、日本の1stライン(FWライン)を簡単に攻略。

キミッヒとギュンドアンに全くプレッシャーがかからないので、彼らは自由にプレー。

ライン間に縦パスをつけたり、大外へ展開したり、ドリブルで持ち運んだりと様々な方法で、2ndライン(MFライン)を攻略した。

 

🇯🇵 配置上のズレ

ドイツが可変して左肩上がりになることは、予めわかっていたが、日本はそれに対していつも通り何も対策をしなかった。

そこで生じた配置上のズレは4つ。

MFラインにおいて、伊東はシュロッターベックまで出て行くのか、それとも幅を取るラウムに付いて戻るのかという問題。

また、前田がリュディガーまで出て行くとき、田中はライン間のミュラーを捕まえるのか、それとも縦スライドしてキミッヒを捕まえるのかという問題。


DFラインにおいては、両SBがそれぞれライン間の選手を見るのか、それとも幅を取る選手を見るのかという問題が発生。

 

🇩🇪 シュロッターベックの持ち運びと、ミュラーの流れ

段階的にラインを超えて前進するドイツは、当然ながら横へ揺さぶって日本の2トップ脇をワイドCBが持ち運ぶ。

名将中の名将ハンジフリックが戦術を落とし込んでいるだけあって、このときに日本の守備に生じたズレをドイツはピンポイントに突いていく。

WG(伊東)が出てこない左サイドは、徹底してシュロッターベックが持ち運ぶ。そのとき、中央のギュンドアンやムシアラ、外のラウムなど角度ができているパスコースはたくさんあり、そこへのパスで2ndラインを超えて、フィニッシュワークへ。

 

逆にWG(久保)が出てくる右サイドは、ズーレが簡単には持ち運べない。そこでライン間にいたミュラーが外へ流れる。ニャブリが長友をピン留めすることで、ミュラーをフリーにし、そこからプレスを回避。

また、田中がスペースではなく、人を意識して出て来ると、それによって空いたスペースにCHが飛び出したり、CFがフォルス9の動きで降りてきてボールを引き取る。

このように、相手の出方によって臨機応変に対応しながら、合理的に前進。

 

🇯🇵 4-4-2 or 4-1-4-1におけるハイプレス時のマークの問題

ハイプレスもデザインを特にせず、ミドルプレス時のまま2トップ+前に出た久保の3枚で圧力をかけるかたち。

ドイツは世界最高のGKノイアーも含め、6枚で組み立てるため、3vs6の構図となってしまう。

カバーシャドーを使いながら前田がチェイスするも、斜めのパスであったり、ノイアー経由で逆に展開されてしまったりして、悉くプレスを回避されてしまった。

CH経由で逆へ展開

 

余りにも容易に相手CHへボールが入ってしまうので、田中が自らのマークであるミュラーを捨ててキミッヒまで縦スライドする4-1-4-1気味の陣形となることも。

しかし、そうすると、DFラインの前には遠藤1枚となってしまい、そこから前進されてしまう。

田中がミュラーのマークを捨てて遅れて出て行く1vs2の構図を作られてしまい、キミッヒを経由して遠藤の脇のスペースでボールを引き取られてしまう

 

また、田中が縦スライドしてキミッヒを捕まえようが、捕まえまいが、ずっとシュロッターベックのところは空いてるので、ノイアーを経由して逆に展開され、そこから持ち運ばれてしまうことの解決にはならず。


ほぼ全てプレス回避されてしまっていたので、前半終了間際に田中と遠藤の両方とも縦スライドして、2センターで相手2センターを捕まえるようなオールコートマンツーマン気味のプレスを。

オールコートマンツーマンなので、後方の広いスペースでも数的同数(4vs4)となるが、流石のドイツはそれも上手く利用。

下から段階的に繋がず、ロングボールを使って前へ飛ばし、疑似カウンターで一気にフィニッシュまで持ち込むといったかたちで前進され、オフサイドで助かったものの、あわや失点といった場面も。

広大なスペースで3vs3

 

ブロック🇯🇵・フィニッシュワーク🇩🇪

🇯🇵 プレス時同様、配置上のズレ

プレッシングで起こっていた配置上のズレの問題は、そのままブロックにも同じ影響を与えた。

前述した通り、伊東のところと相手CHのところをどうするのかということだが、流石にブロックになると、そこはある程度明確に。

伊東と2トップともに前に出ず、それぞれラウムと相手2センターを監視する。


ただ、どこまで付いて行ってどこでマークを受け渡すのかは不明確。

彼らが前に出たとき、そこまで付いていくのは現実的で無い。(特にFW)

キミッヒは前に出てカバーシャドーを回避前田が献身的なプレスバックでよく戻ったが、展開されて回避されるとCHは完全にフリー

 

🇩🇪 前線での優位性+カバーシャドー回避した三列目からの飛び出し

4バックに対して、5トップ気味となるため、前線では常に数的優位であり、更にそこへ三列目からCH(特にギュンドアン)が飛び出していくので、6vs4の構図に。

 

🇩🇪 内と外を使った合理的な崩し(配置的優位性)

CB→幅→内側、ライン間といったように相手のブロックを外に広げてから内を使う崩し。

CB→ライン間→大外といったように相手ブロックを狭めてから外を使う崩し。

 

🇩🇪 ライン間での技術の高さを活かした瞬間的な崩し(質的優位性)

特にフィニッシュワーク時は、ライン間にたくさん人を置く配置となる。

段階的に前進しつつも、最後のところでは、狭いスペースでフリックやレイオフなどのダイレクトを交えたパスワークや細かいドリブルなど選手の能力の高さを活かしたアドリブ的なプレーで崩すことも多い。

持ち運んだギュンドアンが3人密集したゲート間を抜くパス大外でフリーの2枚は使わず、

再び狭いライン間へパス

ムシアラが細かいタッチでターンしてシュートへ

 

🇩🇪 これら全てを組み合わせたフィニッシュ

キミッヒが前に出てカバーシャドーを抜け出し、そこへ斜めのパス

フリーで保持し、大外のラウムまで展開

ギュンドアンが三列目から飛び出す

フリックして3人目の動きをしたムシアラへ

 

ミュラーが流れて、その空いたスペースにハヴァーツがフォルス9の動きで降り、レイオフ使ってミュラー

この時、ニャブリで相手SBをピン留め、ミュラーがフリーで持ち運び、前に出てカバーシャドーを回避したキミッヒへ

中→外→中で揺さぶって、完全にフリーとなったキミッヒから大外のラウムへ展開

 

リュディガーからゲート間を通すパス

キミッヒが狭いスペースでターンしてライン間のムシアラへ

レイオフギュンドアン

中→中と繋いで相手ブロックが狭まったところで、大外のニャブリまで展開

ダイレクトのワンツーで剥がして中央へ

 

ビルドアップとフィニッシュワーク🇯🇵・プレッシング🇩🇪

🇩🇪 4-2-3-1でボールサイドに圧縮するハイプレス

絞った逆サイドWGとトップ下で相手中盤を捕まえ、ボールサイドWGが圧力をかける4-2-3-1でボールサイドに圧縮するハイプレスによって、全く日本にビルドアップを行わせず。

 

🇯🇵 ロングボールを多用せざるを得ない組み立て

SBは低い位置で張ったままであり、ライン間にはトップ下しかないという配置を可変させないため、パスコースは無く、圧力がかかるとロングボールを使って逃げるかたち。

 

🇯🇵 2トップの献身性とスピードを活かしたカウンター

プレッシングの型が決まっていない中でも、鎌田、前田共にスプリントして積極的に圧力をかけつつ、深い位置まで献身的にプレスバックを。

そこでボール奪取できると、前田、伊東のスピードを活かしてカウンターで一気にゴール前まで行けることも。

プレスバックした鎌田とデュエルの強い遠藤で挟み込んでボールを奪取可変でラウムは高い位置を取っているため、伊東の前に広大なスペースが

 

鎌田のプレスバックでボール奪取

 

 

後半

修正① 〜4-2-3-1から5-2-3へのシステム変更〜🇯🇵

🇯🇵 オールコートマンツーマン気味のハイプレス

久保に変えて冨安を投入、5-2-3のシステムに。

システムを変更したことにより、3-2-4-1のドイツに対して、配置が噛み合い、完全にマークが明確化するように。

先制されて後がない日本は、横パスやバックパスを合図に自分のマーカーに対してどんどん出ていくハイプレスをかけた。

前半、誰が付くのか不明確であった相手CHに対してもCHが積極的に縦スライドして牽制また、シュロッターベックに対しては伊東が圧力をかけ、ラウムに対しては酒井がジャンプ

 

マンマークで付いていくため、CBであってもマーカーに対して前に出て行って対応し、近くの選手で圧縮するといったように、タスクがはっきりしたことでかなりボール奪取できるように。

また、オールコートマンツーマンであるため、前線も数的同数であり、ポジティブトランジションからそのまま一気にショートカウンターへ移行できることも。

広大なスペースで3vs3

 

同様にして、GK含めたビルドアップに対しても超ハイプレスをかけて回収。

 

降りてボールを引き出すムシアラに対して、マーカーの板倉が徹底的に付いて行ってボール奪取。

 

前田がリュディガーに対して圧力をかけ、そのままリュディガーへのパスコースを切りながらノイアーまで二度追い。

 

🇩🇪 システム変更への戸惑い

全てが噛み合っておらず、楽勝にゲームを進めていたドイツは、システム変更に伴う急なハイプレスとワールドカップ初戦ということも相まってか、らしくないミスを連発するように。

 

🇩🇪 瞬間的なクオリティーによる回避

それでもドイツは、今大会最高レベルの完成度を誇るチーム。

相手の配置から逆算した段階的な前進には手こずったものの、選手個人のテクニックの高さを活かして、瞬間的に相手のマークを剥がすことで前進。

オールコートマンツーマンの守備であるため、逆にマーク1枚さえ剥がせれば、前線の広大なスペースで数的優位もしくは数的同数を作れ、そのまま一気にゴールへ向かうことが可能である。

一度は日本のプレスにハマるも、素早くセカンドボールを回収プレスを空転させられれば、前に出てきていたCBやWBのエリアに大きな穴ができる広大なスペースで数的優位の状況


また、日本が同数で前に出てくるようになったことで、瞬間的なコンビネーションなど質的優位性を活かした崩しがより破壊力を発揮。ミュラーが推進力のあるドリブルで2枚剥がす

 

5バックで完全にスペースを埋めたブロックに対して、ムシアラがカットインし、単独で突破

 

縦パスに対して、ハヴァーツがポストプレーで落とし、ムシアラが前向きで受けるといった3人目の動きを使った高度なレイオフ相手CHを剥がしたことで中央にスペースができた数的優位の状況下で、シュートを選択するも、ポストに直撃

 

同数でハメにくるハイプレスに対して、下から繋がず、ロングボールを使って前へ飛ばし、疑似カウンターを試行三列目から出てきたキミッヒが相手最終ライン背後へ落とすパス

 

🇯🇵 権田のスーパーセーブ

システムを変えて配置が整理されたとはいえ、ドイツの瞬間的なクオリティーの高さを活かした攻撃により、再三決定機を作られていた。

ドイツのXgは3.53とデータ上では3点以上入っていてもおかしくなかったが、それらの決定機を全てセービングし、PK以外での得点は許さず。

 

🇯🇵 ブロック時の問題も解決

前述したように、マークが明確化したため、配置のズレが解消。

 

🇯🇵 攻撃時は3-2-4-1

森保監督は枚数を合わせるといった単なる守備改善として、5バックを採用しただけであろうが、それは思いがけず攻撃にも良い効果となった。

森保監督に、段階的な組み立てや合理的な前進といった戦術を考えはないので、再現性のある攻撃は殆ど見受けられない。

よって当然ながら、原則的に幅やライン間を取ることもなければ、可変も行わない。

ただ、5-2-3というシステムは、攻撃時WBで幅、WG(シャドー)でライン間を取る3-2-4-1となるので、可変せずともポジショナルプレーを行いやすい配置となるのである。

デザイン性が無いため、自らで前進できず、トランジション時のショートカウンターオンリーだった前半とは打って変わって、3バックと2センターで組み立てながら、幅、ライン間、深さを使った段階的な前進を行えるように。

 

ボールサイドに圧縮するドイツのハイプレスに対して、前半はロングパスで逃げることしかできなかったが、3バックで繋ぎつつ、GKも経由して逆へ展開、そこからパスorドリブルを使って相手1stラインを超えられるように。

実際、データで見ても、前半は19%だった支配率が、後半スタートの46分から2点目を奪った83分までの間は40%と2倍以上になっている。

 

修正② 〜攻撃的な交代と最適解の合致〜

🇯🇵 幅とライン間に最適解の選手を起用+CHの飛び出し

前に記載したように、森保監督に、段階的な組み立てや合理的な前進といった戦術を考えはないため、選手起用も単純であることが多い。

この選手交代も恐らく、酒井や長友などよりも攻撃力が高いという理由で三苫や堂安を投入したのであろう。

 

ただ、結果的に突破力の高い三苫、伊東が幅、ボールを引き出したり内側を走る能力の高い南野、堂安がライン間を取り、浅野で深さを作るといったそれぞれの選手が最も能力を発揮できる最適解の布陣となった。

CBから幅を取るWBへのパスコースが繋がっており、ここでもパスで相手MFラインを超えられたアイソレイトした三苫が前を向いた状態で相手SBと一対一の状況、その内側を南野がランニング

 

1トップ脇からCBが持ち運んだとき、ライン間のWG、幅を取るWB、前に出た鎌田と角度のあるパスコースが多く存在、そこから2ndラインを超えてフィニッシュへといった前半ドイツが行っていた攻撃に近いかたちでフィニッシュへ。


🇩🇪 ピッチ内での意思分裂、集中力欠如

ゲームの流れが日本に傾いてる中、通常通り攻撃的なスタイルを貫くのか、1点を守り切って試合を終わらるのか、ピッチ内で意思統一が行えていなかったようにも。

実際、ボールサイドに圧縮するハイプレスは明らかに連動性を欠くようになり、後ろの4-2で守るような場面もあった。

 

🇯🇵 浅野のスーパーゴール

絶妙なトラップとニアをぶち抜くシュート

ドイツからすると、ラインコントロールを大幅にミス

 

 


フルマッチ

https://abema.app/LuNa

 

 

さとゆう (@SaTo_yu99) / Twitter

 

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