カタールW杯 ブラジルvsクロアチア 〜最優勝候補ブラジルの敗退と、クロアチアの勝負強さ〜
守備🇭🇷・攻撃🇧🇷
🇧🇷 ダニーロが偽SB化する3-2-4-1
ミリトン含めた3バックを形成、LSBダニーロが内側に入って、WGで幅、IHでライン間を取る3-2-4-1に可変。
2CB中心に段階的に前進しつつ、アイソレイトされたWGと、狭いスペースで違いを生み出せるIHで崩す。
🇭🇷 モドリッチを前に出す4-2-3-1のミドルプレス
モドリッチが前に出て中盤三角形を形成し、相手中盤逆三角形をそれぞれ捕まえる4-2-3-1に。
ハードワークできる両WGはそれほど前に出ず、相手WGまでプレスバック。
🇧🇷 SBとCBの立ち位置のズレ
元々は2-3-2-3に可変していたため、若干不慣れということもあったであろうが、SBとCBの立ち位置に若干のズレが生じていた。
このような可変の場合、本来はLCBが開き、LSBはACと2センター化する必要がある。
そうすることで、相手中盤が偽SBを捕まえに出ててきたら、ライン間のIHへボールを送れる。
相手WGが絞ったら、CBがその脇のスペースを持ち運ぶことが可能に。何よりWGをアイソレイトでき、高い位置で相手SBと1vs1の状況を作れる。
誰も偽SBを捕まえにこなければ、フリーのLSBにボールを送って中央から前進できる。
しかし、ほとんどこのようなかたちにはならず、ダニーロの絞りは甘く、チアゴシウバが開かない立ち位置になっていた。
このポジショニングの誤差によって、中々段階的に前進ができず。
ダニーロがチアゴシウバの前に立つため、ライン間のネイマールへのパスコースは遮断され、ドリブルで持ち運ぶスペースも消失。
また、チアゴシウバが外は開かないので、CB(チアゴシウバ)からWG(ヴィニシウス)へのパスコースが繋がらないことも多くなり、パスで相手MFラインを超えることが難しくなっていた。
ライン間でパスコースを受けれないため、ネイマールが降りてきて左サイドが渋滞することも
🇭🇷 ブラジルのWGへの対策
システム上、CBとCFのところ以外は噛み合うかたちとなるが、逆を言えば、SBは強力な相手WGと1vs1の状況となってしまう。
そこで、SBは極力タイトに出て行きながらも時間を遅らせ、運動量の高い中盤とプレスバックするWGで挟み込んで対応。
強力な相手WGとSBが1vs1の状況に内側の中盤が開いたCB、SB間のスペースを埋め、ハードワークできるWGがしっかりプレスバックして挟み込むことでボール奪取
🇧🇷 対角なフィード、ドリブル突破、コンビネーションなどで前進
配置的優位性は作れずにいたが、それでも質的優位性で前進できるのが、ブラジルの強み。
前述したように、CBからWGへのパスコースが繋がっていないため、ショートパスでラインを超えることが困難に。
ただ、正確なロングフィードを蹴れるチアゴシウバとマルキーニョスから相手SBの背後に走るヴィニシウスへといったかたちで、一気に前進。
また、降りたネイマールが自らドリブルで剥がして、相手MFラインを突破するかたちも何度か成功。
低すぎる位置まで降りるネイマールただ、ステップを使ったドリブルで相手を剥がすドリブルで相手MFラインを越えることに成功
更には、瞬間的なコンビネーションでブロックの間を割ってゴールへ向かうことも。
🇧🇷 前に出るカゼミロとそこへのIH降り
質に頼った前進が多かったが、流石はブラジルなだけあって、徐々に配置的優位性も使ってボールを保持するように。
具体的には、カゼミロが前に出てマーカーのモドリッチを引き連れていく。
敢えて、相手FWライン背後に人を置かず、中央にスペースを作る。
恣意的に空けた中央のスペースへIHが瞬間的に降りてレイオフを使ったり、ターンしたりすることで中盤マンツーマンの守備は攻略し始めた。カゼミロが前に出ることでマーカーのモドリッチを引き連れ、スペースを作るできたスペースへパケタが瞬間的に降りてレイオフ再度パケタがボールをもらい、前向きでプレー
守備🇧🇷・攻撃🇭🇷
🇧🇷 ネイマールが前に出る4-2-3-1のミドルプレス
ネイマールが前に出て中盤三角形を形成し、相手中盤逆三角形をそれぞれ捕まえる4-2-3-1から、WG(左のヴィニシウス)が出て圧力をかけてハイプレスへ移行。
🇭🇷 インテリジェンスと技術力に優れた流動的な3センターによる組み立て
GSから継続して、攻撃配置は特に決めず、瞬間的且つ流動的に降りるブロゾビッチ、コバチッチ、モドリッチの3枚を起点にビルドアップする。
🇧🇷 前方と後方の乖離、奪いどころの未設定
ヴィニシウスのスプリントをスイッチとして、ミドルプレスからハイプレスへ移行するのが、ブラジルの守備スタイル。
GSでは、割とこのかたちで即時奪還できていたが、中盤のインテリジェンスと技術力が高く、流動的であるクロアチアに対しては思うようにハマらず。
原因は主に2つ。
前方と後方の乖離と、ネイマールのハードワーク不足である。
まず、前方と後方の乖離について。ヴィニシウスが出て行ったとき、4トップは前に出て行くものの、2センター+4バックは連動していないことが多々見受けられる。
4枚で圧力をかけて奪取できたり、ロングボールに逃げてくれたりすれば、それで良い。
しかし、SBやCHが縦スライドしていないため、中盤を経由されてしまうと、中央から簡単にプレス回避されてしまう。
撤退して6枚でブロックを形成しても個人の能力が高いため、ある程度守ることはできるが、この試合のように非保持の時間帯が長くなり、中々得意の攻撃を行うことができなくなる。(ボール支配率49%)
もう一つのネイマールのハードワーク不足について。攻撃面で多大な貢献をするネイマールだが、守備面では穴になってしまうことが。
守備時、彼は1stライン(FWライン)に入ることが多い。ただ、ハイプレスをかけるチームにとって、1stラインの役割は非常に重要だ。
なぜなら相手CBに圧力をかけることも、相手中盤を消すことも行わなければならないからであり、そこを外してしまうと、一枚ずつプラスがずれて簡単に回避されてしまうからである。
もし、ネイマールを守備免除させるのであれば、シンプルなタスクを与えるか、ハイプレスを行わないかだろう。
しかし、そのようなことはしないため、ネイマールがマークを外したところを起点に回避されてしまう。
ヴィニシウスが前に出てプレスをかける前に出ていくも、降りてきたコバチッチを誰も捕まえておらず、簡単にターンされてしまう(パケタは遠すぎて縦スライドできない、近くのネイマールはハードワークせず)またもコバチッチを離してしまいワンツーを使われ、簡単に相手MFラインに侵入されてしまう
降りたモドリッチに対してそのままカゼミロが縦スライドして捕まえに出るパシャリッチは誰も捕まえておらず、カゼミロ背後のスペースにボールをつけられて展開されてしまう
パケタは降りたコバチッチまで捕まえに出ていけず、自由に運ばれてしまうボールサイドに圧縮したり、中央を封鎖したりもしていないので、簡単に展開されてしまうモドリッチが自由にボールを持てる
このように、奪いどころがしっかりと設定されていないので、上手くプレスをかけて圧力をかけたり、牽制したりすることができず苦戦。
また、前方と後方が乖離していると、フィフティーのボールも中々回収できず、セカンドボールを拾われて二次攻撃に繋げられてしまっていた。
🇧🇷 左肩上がりのハイプレス
GK含めたビルドアップに対しても同様に、相手中盤をマンツーマンで捕まえつつ、ヴィニシウスが前に出るかたちで圧力をかける。
🇭🇷 ユラノビッチへの頭越しのパス
ブラジルの左肩上がりのハイプレスに対して、そのときに浮いてくるRSBユラノビッチを起点とするかたちで再三プレス回避することに成功。
パシャリッチが高い位置で相手SBダニーロをピン留めすることで、相手WG背後から相手SBまで右サイドに広大なスペースが生まれ、そこを推進力が持ち味のユラノビッチがドリブルで運んで前進。
外切りでCBまで出てくるヴィニシウスに対して、浮いたユラノビッチへパシャリッチで相手SBをピン留めしてスペースを作り、そこをユラノビッチが運ぶ一気に運んでクロスまで
相手SBがジャンプしてユラノビッチまで出てくる場合は、その背後のスペースへクラマリッチが流れ、ボールを引き出して前進。
リヴァコビッチから浮き球で相手WG背後のユラノビッチへ相手SBダニーロが縦スライドしてきたため、ダイレクトでその背後に流れたクラマリッチへ
また、GKを含まないビルドアップの時も同様なかたちでゴールへ。
前に出たヴィニシウスの背後へミドルパスパシャリッチが引き取り、モドリッチ経由でフリーのユラノビッチへ外から大外へのクロス
1stラインが機能しないブラジルに対して、ゲート間を抜ける縦パスを簡単に前を向いたコバチッチから一気に大外のユラノビッチへ
CBから降りてきたモドリッチへヴィニシウスが前に出て圧力をかけるが、後ろは連動しておらず、モドリッチは簡単にターン開いたパシャリッチと前に出たユラノビッチで2vs1の構図に
🇭🇷 5vs2で安定して保持
中盤がそれぞれ降りるので、ライン間に人がいなくなるなど配置が整理されていない状況は多いが、相手2トップに対しては2CB+3センターの5枚で数的優位を作り、安定してポゼッションできる。
🇧🇷 CB、SB間の広がり
ロングボールで大きく展開されると、CB、SB間が開いてスペースができてしまい、そこのスペースを流れた相手CFに使われてしまったり、SBと相手WGが1vs1になってしまったりする場面が。ミリトン、マルキーニョス間が開いてしまい、そこをプルアウェイしたクラマリッチに使われてしまう
サイド to サイドで展開される4バックがスライドするわけでも、CHがカバーに入るわけでも、WGがプレスバックするわけでもないので、ミリトンが晒されてしまう
🇭🇷 サイドからのクロス
配置を整理して段階的に崩すわけではないクロアチアのフィニッシュワークでの武器は、やはりクロス攻撃。
ブロックの外からでも、相手DFラインと相手GKとの間や、大外など多種のボールを蹴り、中央の高さを活かしてゴールへ。(高身長のWGパシャリッチもCF化してボックス内へ)
修正〜3-2-4-1→2-3-2-3へ〜🇧🇷
チッチはビルドアップ時、後方の配置を修正。
ミリトン含めた3バックを形成してダニーロが内側に絞る3-2から、ダニーロとミリトンがそれぞれAC脇に入る2-3に。
🇧🇷 CBからWGへのパスコースが直結
この配置修正によって、ようやくCBからWGへのパスコースが繋がり、パスで相手MFラインを超えられるように。
🇧🇷 SBのインナーラップ
また、低い位置での組み立てと被カウンター時のストッパーが主な役割だったSB(特にミリトン)が積極的に前に出て攻撃参加。
SBが内側からランニングするため、相手WGのプレスバックを防ぎ、WGのアイソレイトに成功する。
内側を走るSBに対して、相手WGがマークを外していれば、そこを使ってポケットへ侵入することが可能に。
また、相手WGが捕まえ付いて来れば、内側にスペースが生まれ、WGがカットインして侵入することが可能となる。
RSBミリトンがインナーラップそのままポケットへ侵入し、クロス
CBからWGへパスコースが繋がっているため、パスで相手MFラインを超えるミリトンがインナーラップ、それによってアントニーがアイソレイトミリトンの攻撃参加によって相手WGはアントニーにプレスバックできず、空いた内側のスペースへカットイン
🇧🇷 SB経由で内側からの組み立て
後ろのヴィニシウスも気になるパシャリッチは内側のダニーロまで出ていけずダニーロはターンしてドリブル、ブロゾビッチがコースを消しに来たことでマーカーのネイマールがフリーに
修正後の展開
🇭🇷 WGも下がってリトリートで対応
合理的な修正をおこなったブラジルに押し込まれ、決定機を作られるようになってしまったクロアチアは、撤退し、WGも下がって時に最終ラインに吸収される5-4-1気味のリトリートに。
引き分け狙いであわよくば一点を、というようなゲームの進め方で持ち堪える。
🇧🇷 引いて守るブロックに対してバイタルの有効活用
相手が引いて守るようになったため、CBも高い位置を取り、かなりクロアチア陣内に押し込んで保持する展開となった。
CBやSBも高い位置を取るなど押し込んで攻め続けることで、相手ブロックのラインの縦幅はどんどんコンパクトになり、1列化していく。
それによって空いてくるのはバイタルエリア。
相手WGはサイドを警戒して最終ラインに吸収され、そうなると相手MFライン全体も自然と下がるため、中央(相手MFライン前)は手薄に。
サイドを使って横へ揺さぶることで、より中央にスペースを作る。最終的に空いたバイタルからミドルシュートを打つかたちでチャンスを作った。
アントニーが2人の間を割って入るドリブルを使い、前に出てそのままインナーラップしたカゼミロへクロスはファーサイドへ横に揺さぶられたことで相手守備ラインは1列化バイタルへ出て行ったパケタがシュート
WGも下がったブロックであるため、相手MFラインと相手DFラインは同一化前に出たカゼミロがバイタルでフリーに
SBと下がったWGでアントニーに対応マーカーのWGペリシッチがアントニーの対応することで、フリーとなったミリトンがバイタルへ出て行き、シュート
延長戦の得点シーンも同じかたちから。
4-5-1のブロックから両WGが下がって6-3-1となったクロアチアのブロックに対して、ネイマールがワンツーを2回使って手薄となった中央から打開した。
🇧🇷よりプレスが空転
前半からプレス(特にハイプレス)が機能していない場面が多く見受けられたが、運動量の問題もあってか、ますますプレスは空転し、あまりハイプレスをかけられないように。
CBからモドリッチへ縦パスマーカーのカゼミロが縦スライドしておらず、モドリッチにフリーでターンされ、ヴィニシウス背後のユラノビッチへ送られてしまう
ACが落ちて、IHがFWライン背後にポジショニングするクロアチア2CBをリチャーリソンが、ACをネイマールが見るかたちがベースであるが、流動的に人が入れ替わりモドリッチに対してカゼミロがジャンプするのか、ネイマールがカバーシャドーで消すのか、どっちつかずゲート間を通されて簡単にターンされるWGロドリゴの背後にいるユラノビッチへ
🇭🇷 リヴァコビッチのファインセーブ
PK戦だけでなく、流れの中でも度重なるファインセーブでゴールを死守した。
🇭🇷 同様の攻撃
前半同様、3センターを起点にヴィニシウスが出てくることで浮くユラノビッチを使って前進、フィニッシュまで。
囲まれても剥がせるコバチッチから展開出てきたヴィニシウスの背後にいるユラノビッチへ
リチャーリソンがプレスバックするも、1stラインの守備が機能してないので、CBが深い位置まで持ち運べるコバチッチを経由して逆サイドへ展開モドリッチとブロゾビッチが余裕を持ってパス交換、そこへヴィニシウスがスプリントして出てくる出てきたところで、外で浮くユラノビッチへヴィニシウスが二度追いするも、ネイマールがマークを外しているため、モドリッチ経由でフリーのブロゾビッチへブロゾビッチから再び、逆サイドへ展開相手2トップ脇のスペースをコバチッチが持ち運ぶ
フルマッチ
11/25