SaTo_yu99’s blog

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不調のリバプールは今後どうなる!? 〜直近の試合を戦術的に考察してみた〜

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リバプールの現状

 

降格圏内のフラムに敗れ、PL(プレミアリーグ)14試合で3勝3分8敗と昨シーズン圧倒的な強さを誇って優勝したチームとは思えないような不調な成績が続くリバプールであった。

その後は、直近の公式戦3連勝と少し調子を取り戻しつつあるように見えた一方で、CL(チャンピオンズリーグ)ではマドリーには敗戦し、三連勝は「一時的に調子が上がっただけ」、「今までの不振を考えるとたまたま勝てただけ」、などと考える人も多い。

 

それでは、一昨季は欧州制覇を達成して、昨季は圧倒的強さでリーグ優勝したリバプールがなぜ勝利できなくなったのか、そして今後リバプールはどうなっていくのか、戦術的観点から紐解いていく。

 

※あくまで直近の試合の戦術的考察であるので、リバプールの戦術の特徴や全体の変化やシーズン通しての比較などを、大幅に省略しています。よりリバプールの戦術の詳細が見たい方はこちらへ。↓

https://sato-yu99.hatenablog.com/entry/2021/01/30/201641 

 

 

リバプールが低調な原因とは何か?〜メディアで取り沙汰されている世間一般の見解〜

 

主力のCB陣全員が長期離脱

一般的に最も大きな要因とされているのは、この主力のCB陣全員に長期離脱が強いられたことだろう。

特に痛手となっているのは、昨季リーグ戦フル出場でチームを牽引したファン ダイクの離脱だ。

フィジカル、スピード、エアバトル、カバーリング、ポジショニング、パス精度、リーダーシップとDFに必要な全ての能力を非常に高い水準で兼ね備えている世界最高のCBの負傷離脱は、リバプールの後方だけでなく、前線にも多大なる影響を与えている。

更に、マティプとジョー ゴメスも相次いで離脱し、ファビーニョヘンダーソンなどDFが本職でない選手と、フィリップスやウィリアムズ、カバクなどリバプールでの試合経験の浅い若手選手の併用となっているのが現状だ。

 

ここで重要なのは、リバプールのCBに求められる能力についてだ。

リバプールのDF陣の特徴としては、一般的なチームと比べてもかなりDFラインが高いので、後ろに空いた広大なスペースを守ることできるスピード、カバーリング能力、そして釣り出されても負けない対人の強さと、守備に必要なほぼ全ての能力を兼ね備えていることが求められるが、それだけではなく、攻撃時の後方からのフィードもリバプールのビルドアップを支える重要な鍵であるので、逆サイドに展開するロングキック精度の高さも必須である。

主力CBに負傷が相次いだなか、彼らに劣らないフィード力を持ったCBがヘンダーソンだけであり、ビルドアップの最大の起点が無くなったことも大きな痛手となった。

 

リトリート相手への攻略法の未発見

対リーグ王者として、エバートンのように引いて守ってカウンターをベースにするチームや、5-5のブロックを作って守ったWBAのように完全にリトリートして勝ち点1を取れれば良しとするようなチームが増えてきたことで、特にそのような相手への攻略法を見つけられずに苦しんでいる。

 

主力選手のコンディション不良

現地では、前線のフィルミーノ、マネ、サラーやアーノルドなどは、昨シーズンと比べるとパフォーマンスが低下してるとも言われているし、実際そう見える人も少なくないはずだ。

(                          19/20シーズン    20/21シーズン現在

 フィルミーノ : 10G12A      6G5A

 マネ       : 22G8A                12G6A

 サラー      : 23G12A              28G4A

 アーノルド  : 4G14A                2G6A                   )

https://www.transfermarkt.com/liverpool-fc/kader/verein/31/saison_id/2020/plus/1

 

 

無観客によるサポーターの不在

アンフィールドでは、18節のバーンリー戦で敗れるまで、68試合無敗とPL2位の記録を更新し続けており、特にホームで無類の強さを誇ったリバプールであったが、バーンリーに敗戦後まさかのホーム6連敗とクラブ創立以来最悪の記録を打ち立ててしまった。

その後ホームで6連敗するなど過去になかった経験のため、立て直す方法を発見できなかったのかもしれない。

常に満員のなか熱狂的なサポーターによって作られる異様な雰囲気は、リバプールの選手達の士気をより高めて、実力以上の力を発揮させることで、不利な状況から数々の逆転劇を起こしてきた。

そんな最大の後押しを失ったことも少なからず試合結果に影響しているはずだ、と選手や関係者の多くが語っている。

 

 

リバプールが低調な原因とは何か?〜個人的な見解〜

 

ボールを保持するポゼッションへの変化

私が思うリバプールが昨季のような圧倒的強さを失った最大の要因は、トランジションに重きをおき、運動量をベースとしたインテンシティの高いプレッシングを特徴とするスタイルからポゼッションスタイルへの変化とそれによる中盤の役割の変化であると考えている。

(勿論、上記に挙げたような要因もあるが、私はあくまでプラスアルファの要因として考えている。)

 

f:id:SaTo_yu99:20210414173907j:image 図1

f:id:SaTo_yu99:20210427163211j:image昨シーズンまでのリバプールは、4バックの型を崩さずに主にCBの2枚を中心にビルドアップを行い、SBやアンカーが状況に応じて補助するスタイルであった。[図1参照]

 

f:id:SaTo_yu99:20210414175751j:image 図2

このビルドアップは、CBのロングキック精度がとても高い事、WGがオンザボール(ドリブルでの仕掛け)とオフザボール(ダイアゴナルな走り)の両方を出来る事、が前提ではあるが、

最大の特徴は、ロングボールを蹴ることで途中で相手に引っかかったとしても自主的にトランジションの局面を作り出すことができる[図2参照]ので、リバプールの特徴であり長所であるトランジションに重きをおき、運動量をベースとしたインテンシティの高いプレッシングを最大限に活かせるようにしているのだ。

このように相手を囲い込んで再びボールを奪い、ショートカウンターなどに繋げるゲーゲンプレスがクロップリバプールの代名詞となっているが、このとき相手を囲い込むためにもIHが高い位置にいることが重要である。

 

f:id:SaTo_yu99:20210427132157j:image 図3

ビルドアップの時に中盤(IH)が高い位置にいるメリットは他にもある。崩しの場面ではWG、SBと絡んでサイドで優位な状況を作ることができるし、IH(ワイナルドゥムやヘンダーソンチェンバレンミルナー、ケイタなど)がそのまま出ていくことで、クロスに対してゴール前の人数に厚みを持たせることもできる。[図3参照]

このようにWG、IH、SBで三角形を作ってそれを回転させるようにしてお互いが動く攻撃や、クロスに対してボックス内の人数に厚みがある攻撃は、リバプールの崩しにおいて大きな特長となっており、それを支えているのはIHの能力とポジショニングであることがわかる。

 

f:id:SaTo_yu99:20210414180227j:image 図4
f:id:SaTo_yu99:20210427163529j:image一方で、今シーズンのリバプールは、中盤の選手がビルドアップの補助をしに降りてきて主にCBと中盤1枚or2枚の3〜4枚を中心にビルドアップを行い、更に中盤が補助するというスタイルである。[図4参照]

 

※ポゼッション化させた原因はなんなのだろうか。

ファン ダイクやマティプなど世界屈指の精度の高さのロングフィードを蹴ることができる選手が起用できないから仕方なく変化させたと考える人もいるかもしれないが、それは恐らく違うだろう。

クロップは、CL優勝後にこのままではなく常に変化していく必要があると語っていた。

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f:id:SaTo_yu99:20210427165657j:image実際に、20/21シーズン最初の試合であったコミュニティシールド決勝のアーセナル戦で、明らかににビルドアップの変化をさせており、その後のPLでもこのビルドアップを採用していた。(これが、ファン ダイクやゴメスの離脱前であることは言うまでもない)

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f:id:SaTo_yu99:20210427170418j:imagef:id:SaTo_yu99:20210427170428j:imageハイプレスでボールを奪いにいくような守備をしないアーセナルに対して、その後もIHのワイナルドゥムや交代で入ったケイタが頻繁に同様の動きをしていたことから、DFラインに降りてのビルドアップをミルナーが好んで個人的に行っていたのではなく、予め20/21シーズンに向けて備えていた戦術であることが判明した。

その後、ファン ダイクやマティプの離脱で、よりロングフィードを使いにくくなった可能性はあるだろうが、シーズン初めのコミュニティシールドから採用していたことを踏まえるとクロップがポゼッションサッカーへの移行を狙っていたのは間違いないだろう。

リバプールのサッカー自体の変化の理由はいくつかあるだろうが、最大の要因は恐らく、COVID-19による試合の中断とそれによって起こった20/21シーズンの超過密日程の影響により、リバプールの特徴の運動量をベースとしたインテンシティの高いプレッシングを特徴とするスタイルを貫くのは得策でないと予め考えており、より疲労が少なくなるボール保持を重視としたサッカーに切り替えたのではないかと私は考えている。

 

つまり、これはボールをより丁寧に繋ぐという意図が明確に表れた変化だが、問題はそこではなく選手の配置の変化である。

中盤の選手が降りることで、必然的に両SBは押し上げられて、高い位置を取ることとなる。

それによって、両WGは中央に絞ったポジションを取ることとなる。

 

この3-1-1-5のような型を攻撃時に可変的に採用しているチームは多く存在し、配置を見ても格レーンに選手がいて、一見良い型のように見える。

 

この型自体は良いのだが、リバプールに当てはめたときに、リバプールの選手を適材適所にポジショニングさせて能力を最大限に引き出せるような型とは言えない。

 

その理由は大きく四つに分けることができる。

 

・そもそもポジション化することが困難

トランジションに重きをおき、運動量をベースとしたインテンシティの高いプレッシングを特徴とするサッカーをずっとやってきており、各ポジションそのサッカーに適した選手を集めてきていたのに、いきなり対極ともいえるサッカーに変更するのは少し無理があるといえる。

当然、ボール保持することが増えれば、トランジションの機会は減少し、インテンシティを活かせる場面も減る。

また、求められる能力も違い、今までは運動量やアスリート能力が一番求められていたが、ポゼッションサッカーではそれよりもオフザボールやテクニックが求められるようになる。(リバプールの選手は、能力の高い選手が多いので、それでもこなせないこともないのだが、長所を最大限に活かせてるとは言えない。)

 

・中盤の強度の低下

怪我人の続出の影響もあるが、中盤にジョーンズとチアゴが起用させるようになったことで、ワイナルドゥムやヘンダーソンがIHで起用されていたときと比べると中盤の強度が落ちたのは明らかだ。

 

※チアゴとジョーンズ

f:id:SaTo_yu99:20210502174944j:image第29節チェルシー戦では、いつも通り、外へのパスコースを切りながらのプレスで中に追い込んで、中央を奪いどころとしているリバプールであり、この試合は相手の中盤2枚をフィルミーノとジョーンズで見るかたちであったが、ジョーンズのところで簡単に剥がされて前を向かれてしまうシーンが目立った。

f:id:SaTo_yu99:20210502145124j:image第28節ウルブズ戦でも、3トップが前からプレッシャーをかけて右サイドに追い込み、ボールを蹴らせた。
f:id:SaTo_yu99:20210502145121j:imageしかし、チアゴのところで剥がされて簡単に前を向かれてしまい、逆サイドに展開されてしまった。

 

・中盤の選手がDFラインに降りて低い位置にポジションを取ることによる弊害

これがポゼッション化したことによる最大の弊害であろう。

後ろから丁寧にビルドアップを行うことを心がけているので、中盤の選手が相手の第一防波堤(FWライン、ファーストディフェンダー)の手前でプレーする機会が非常に増えたのだ。

トランジションに重きをおき、運動量をベースとしたインテンシティの高いプレッシングを特徴とするリバプールにとっては、ハイプレスやミドルプレスの守備を行う相手に効果的とは言えないが、特にリトリートの守備を行う相手には逆効果となって、攻めあぐねる状況がとても多くなった。

 

例えば、リトリートしてブロックを組む相手に攻める構図となった昨シーズンのCLベスト16 2nd legアトレティコ戦と、同じようなシュチュエーションとなった今シーズンのPL 25節エバートン戦を比べてみる。(どちらの試合も支配率72%)

 

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https://www.sofascore.com/team/football/liverpool/44

アトレティコ戦でのIHは、ワイナルドゥムとチェンバレンエバートン戦でのIHは、ジョーンズとチアゴであったが、ヒートマップを見ると今シーズンはIHのポジションが明らかに低くなっているのが一目瞭然である。

 

では、中盤の選手がDFラインに降りて低い位置にポジションを取ることによる具体的な弊害とは何なのだろうか?

 

攻撃時に後ろ重心になる事中盤が空洞化する事攻撃に厚みが出なくなる事の三つが主にリバプールで起こっている問題である。

 

攻撃時に後ろ重心になる

 

f:id:SaTo_yu99:20210427123052j:image 図4

f:id:SaTo_yu99:20210414195812j:image第25節エバートン戦ではジョーンズ、ワイナルドゥム、チアゴの中盤3枚であるが、ワイナルドュムとジョーンズがDFラインまで降りている。

相手の第一防波堤(2トップ)の手前に5枚おり、2トップは中央のチアゴを消しながらボールホルダーを牽制している。2枚(サラー、ロバートソン)は幅を取っており、相手の第二防波堤(3センター)の背後にポジションを取れている選手は2人(フィルミーノ、マネ)のみであるので、相手からすると脅威となるパスコースは2つのみということになる。

f:id:SaTo_yu99:20210414195044j:image4秒後のシーンで、この状況でも上手くヘンダーソンがくさびの縦パスをマネに入れることができたのだが、周りにサポートの選手がおらず(フィルミーノしかいなかったため彼へのコースを消しながらマネにプレッシャーに行くことは容易)、マネは前を向くことができなかった。ボールを前進させることには成功したものの、相手の守備陣形は全く崩れることなくセットされた状態が続く。

また、この時ライン間にポジションを取っている選手はフィルミーノのみであり、ジョーンズが左の幅を取っているので、ロバートソンが高さを取ることになっている。

 

f:id:SaTo_yu99:20210415150614j:image同じエバートン戦の別のシーンでは、中盤の3枚全員が第一防波堤(一時的に1トップ)の手前にいる。そのことでライン間に選手がおらず、相手は5バックでマネ、フィルミーノ、サラーを見ることができる。

中盤のジョーンズが幅を取っているためロバートソンが内側にポジション取ることとなっている。


f:id:SaTo_yu99:20210414195040j:image第13節スパーズ戦ではワイナルドゥム、ヘンダーソン、ジョーンズの中盤3枚であるが、ヘンダーソンとジョーンズがDFラインまで降りている。

流れの中のシーンとはいえ、プレッシャーをかけていない相手に対しても、やはり後ろは5枚である。2枚(サラー、ロバートソン)が幅を取るかたちとなっており、中央にポジショニングをとっている選手はフィルミーノとワイナルドゥムのみである。

 

f:id:SaTo_yu99:20210430193743j:imageこれは、前述した(コミュニティーシールド決勝)ようにDF陣の相次ぐ負傷離脱によって、やむを得ずに取った戦術ではない。第2節のチェルシー戦では、相手に一人退場者が出てしまったこともあって、リバプールのDFラインに殆どプレッシャーがかかっていない状況であるが、中盤のチアゴが降りて行ってビルドアップを補助している。

(この時は残りの中盤のワイナルドゥムとケイタが第一防波堤(2トップ)の背後にポジションを取れており、後ろで幅を取る選手も5バックにならないように第一防波堤(2トップ)の奥にポジションを取れているのでまだ良いのだが、リバプールらしさは失われている。)


f:id:SaTo_yu99:20210414195054j:image第29節チェルシー戦では、ジョーンズ、ワイナルドゥム、チアゴの中盤である。GKからのビルドアップの延長であるため、前の二つの例とは少し違うが、やはりジョーンズはDFラインまで降りてきている。

f:id:SaTo_yu99:20210415141859j:image3秒後のシーンで、カバクはパスの出しどころがなく、前線へアバウトにロングボールを蹴るが、そのボールに背っているのはジョーンズが降りることによって押し上げられたロバートソンである。

これらは、中盤の選手がDFラインまで降りることで後ろ重心になる毎試合起きているリバプールの問題の一部である。

勿論、適材適所の配置でもなければ、選手の能力を最大限に引き出せるような型でもない。

 

中盤が空洞化する

 

f:id:SaTo_yu99:20210427122630j:image 図5

f:id:SaTo_yu99:20210415161133j:imagef:id:SaTo_yu99:20210415161137j:imageエバートン戦で後ろからサラーの背後を狙ったシーンであるが、どちらも中盤に選手がおらず、空洞化しており、ライン間にポジショニングできているのはマネだけである。

それでも前述したようにリバプールは、ロングボールを多用するチームである。

だが、ここで一番の問題は、中盤の位置が低く、セカンドボールに対して反応できる距離に選手がいないということである。

これではトランジションの状況でインテンシティの高さを活かしたサッカーはできるわけがない。

 

f:id:SaTo_yu99:20210415165612j:image実際に中盤が空洞化して攻撃が上手くいかなかっただけでなく失点に繋がってしまったケースも幾つかある。5-2-3のシステムのチェルシーは状況に応じてジェームズが出ていきマウントが降りる4-4-2のブロックを組んでいた。

ワイナルドゥムが得意の推進力を持ったドリブルでブロックの中に入って行く一方で、ジョーンズとチアゴはブロックの外や手前にポジショニングしている。

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ワイナルドゥムはフィルミーノにボールを預けて更に前出て行き、サイドに流れているジョーンズが裏を狙っている。この時、アンカーのワイナルドゥムが出て行ったことで中盤のスペースがぽっかり空いてしまっている。
f:id:SaTo_yu99:20210415155155j:imageフィルミーノは外のジョーンズを狙うが、手前でアスピリクエタにクリアされる。中盤に選手が不在のためセカンドボールを拾えないどころかそれを拾ったカンテに対してもプレッシャーをかけられない状況となってしまった。

慌ててフィルミーノが寄せるも流石の彼でも間に合わず、カンテは余裕を持って裏を狙うマウントにボールを蹴ることができた。

その後にDFのポジショニングのミスなどもあったが、中盤が空洞化することで、ライン間にボールが入らないことだけでなく、セカンドボールを回収できず、更には相手のカウンターの起点にもなってしまうという不具合の多い事態になってしまっている。

 

攻撃に厚みが出なくなる

 

f:id:SaTo_yu99:20210427125345j:image 図6

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中盤の選手が低い位置にポジショニングしていることで、深い位置で攻撃に絡めなくなり、サイドではWGとSBだけの関係になっているので、相手とするととても守りやすいかたちとなっている。

昨シーズンのリバプールでは、ヘンダーソンやワイナルドゥム、チェンバレンが積極的に3人目の動きを行い、ハーフスペースへかなり走り込んでチャンスを作り出しており、今シーズン序盤もヘンダーソンは右だけでなく、両サイドでこのプレーをしていた。

しかし、彼が後ろにコンバートされるようになり、代わりにチアゴやジョーンズが起用されるとこのような動きはほぼ見られなくなった。

 

f:id:SaTo_yu99:20210415172857j:imageこのシーンでも相変わらず中盤の選手の位置は低く、特にこの時、サイドでのプレーを好むジョーンズのポジショニングは、アーノルドの真後ろと相手にとって全く脅威とならない無駄な位置にいる。

そのため、やはりここでもWGとSBだけの関係になっており、サラーが内側を走るも5バックの視野の中での動きとなり、それほど苦労せずに対応できる状況である。

 

f:id:SaTo_yu99:20210427141931j:imageこのシーンもサイドでアーノルドとサラーだけの関係性ではある。

しかし、巧みなダイレクトでのワンツーから深い位置にボールを運ぶことができ、尚且つCBを引き出すことができた。そのタイミングでフィルミーノがハーフスペースに良いランニングをして、相手のポケットの部分を取ることに成功する。

 

f:id:SaTo_yu99:20210427140406j:imageだが、ここでも中盤の選手のポジショニングが低いことが問題となる。

なぜなら、当然のことながらゴール前の人数が減少するからだ。この状況では、相手選手が5枚で中を固めているのに対して、リバプールはボックス内にマネとロバートソンの2枚のみであり、中盤の選手は1人も入ってこれていない。(バイタルにジョーンズがいるものの、チアゴとワイナルドゥムはもはや画面外)

中盤の位置が低いことは、WGとSBだけの単純な関係になってサイドでの優位性が低下するだけでなく、ゴール前の人数にも厚みが無くなるという弊害もあるのだ。

(中盤の選手がサイドで絡まないことで、前線の選手がサイドに流れることとなる結果、中の枚数が更に不足するようになるともいえる。)

 

・最適解とは離れた選手の配置

前述したように、今シーズンのリバプールは中盤の選手がDFラインに降りて3-1-1-5や4-1-5のシステムに可変するビルドアップを採用している。

 

システムを可変するメリットは、各選手に視点を当てた「選手の長所を活かして短所を隠す」ことができるのと、

チーム全体に視点を当てた「チームの戦術を際立たせる」ことができることである。

 

「選手の長所を活かして短所を隠す」「チームの戦術を際立たせる」とは

「選手の長所を活かして短所を隠す」について、サッカーは、どのポジションでも攻撃時と守備時の役割な大きく違う。つまり、攻撃時のそのポジションでの役割は得意だが、守備時のそのポジションでの役割が苦手であるという選手もいれば、逆のパターンの選手もいるということだ。そういった選手には、システムを可変して攻撃時と守備時の役割を変えてあげることで、その選手の良さをより引き出すことができるのだ。

(事例: 空中戦が強さ、ボール回収能力やカバーリング能力の高さ、ロングフィード正確性を武器とするが、プラス耐性の低さやテクニックの低さに難点がある4-3-3のアンカーの選手がいるとする。この選手は、守備時に中央で掃除屋としてとても良い働きをしてくれる。しかし、攻撃時になると相手のプレッシングに苦しんで、低い位置でのボールロストから失点してしまうことが多々ある。f:id:SaTo_yu99:20210429162149j:image 図7

このような場合、両SBに高い位置を取らせて、この選手をDFラインに下ろすことで、プラス耐性の低さを隠し、視野を確保できる状態でビルドアップに参加することで得意のフィードを活かすことができるようになる。[図7参照])

「チームの戦術を際立たせる」について、サッカーは、チームの狙いによって攻撃時と守備時の役割は大きく違う。つまり、ポゼッション(攻撃時)とハイプレス(守備時)をベースとするチームもあれば、同じポゼッションでもポゼッション(攻撃時)とリトリート(守備時)やポゼッション(攻撃時)とマンツーマン(守備時)をベースにするチームもあるし、相手のやり方に合わせて攻撃や守備を変形させるチームもあるということだ。

更に視点を深くすると、各選手がマンマーク気味のプレッシングや、中央をボールの奪いどころとする外のコースを切るようなプレッシング、サイドをボールの奪いどころとする中のコースを切るようなプレッシングなど、守備時のハイプレスの中でも役割はチームによって様々である。

(事例1:  攻撃時に4-2-3-1のシステムで攻めるチームがあるとする。f:id:SaTo_yu99:20210429165612j:image 図8

守備時に中切りのハイプレスを採用する場合、4-2-3-1の陣形を崩さずにWGが中央へのパスコースを切って外にボールを誘導し、サイドにボールが入るとボールサイドに圧縮して奪いにいく。

しかし、守備時に外切りのハイプレスを採用する場合、CFが下がってWGが前に出る4-2-4の陣形へ可変。WGがサイドへのパスコースを切って中にボールを誘導し、中央にボールが入ると圧縮してボールを奪いにいく。

また、リトリートしてブロックを作る場合、トップ下が前に出る4-4-2の陣形に可変。中央に人を多く配置してソリッドに守る。[図8参照]

事例2: 攻撃時に4-2-3-1のシステムで攻めるチームがあるとする。f:id:SaTo_yu99:20210429170800j:image 図9

相手が4-4-2でハイプレスをかけるチームである場合、CBから中盤へのパスコースが直線上になるので、相手は前線の二人でこちらの四枚を抑えることができてしまい、それに相手WGが連動することでパスコースがなくなって、ビルドアップが苦しくなってしまう。

しかし、LSBを下げてRSBを前に出す3バックに可変することで、相手の前線二枚に対して数的有利な状況を作れるだけでなく、中盤へのパスコースに角度がつくので、パスを送れるようになる。[図9参照])

 

リバプールの場合は、ポゼッション化する狙いで3-1-1-5や4-1-5に可変しているので、当然、後者のチーム全体に視点を当てた「チームの戦術を際立たせる」ことを狙いとした可変である。

 

前述したようにリバプールは、元々昨シーズンまでは可変せずに4-3-3のシステムを貫いており、その戦術を最適解とする選手が揃っているのだが、3-1-1-5や4-1-5に可変することで当然ながら役割が大きく変わる選手が出てきてしまう。

リバプールは、非常に素晴らしい選手たちが集まっているので自分の最適解でなくとも高いレベルでプレーすることが可能であるが、それでは彼らを最大限に活かさせているとは言えない。

 

つまりクロップは、各選手に最適解の役割を与えることよりもチーム全体としての狙い(=ポゼッション)を優先しているのだ。

 

個人的に見ていてシステムの可変によって自分が一番プレーしやすいところでプレーできていない選手は、サラーとマネ、そしてアーノルドである。

 

f:id:SaTo_yu99:20210501175204j:image 図10

アゴやジョーンズが低い位置にポジションを取ることで両SBが押し上げられて高い位置で幅を取り、それに連動して両WGが内側に入るようになる。

 

確かに昨シーズンも0トップのフィルミーノが中盤まで降りていき、2トップのような陣形になる事はしばしば見受けられたのだが、これは一時的な状況であり、あくまでマネとサラーはWGとしてプレーしていた。(勿論、バイタルエリアペナルティーエリア内ではポジショニングが不規則に変わるし、彼らはヘディングでの得点もできるので中央にいることも多かった。)

 

しかし、今シーズンになって彼らがより内側でプレーすることで、破壊力抜群のドリブルの仕掛けや相手DFラインへの裏抜けが減少しており、長所を最大限に活かしきれておらず、試合によっては攻撃の単調化に繋がっている。

 

f:id:SaTo_yu99:20210502100356j:image

https://www.sofascore.com/player/trent-alexander-arnold/795064

また、アーノルドが、昨シーズンよりも高い位置を取るようになったのだが、これが彼が不調と言われている原因はここにあるかもしれない。

彼は、ずば抜けて精度の高いアーリークロスを武器としてので、少し低い位置にポジションを取ることを好むのだが、今シーズンはより高い位置で幅を取るWGのような役割をこなす試合や状況もあるので、可変によって彼の長所が活かされなくなっている。

(最近では攻撃時になると低い位置から前に出ていくようになりだいぶ改善されている)

 

最適解については、システムの可変とは関係ないが、ワイナルドゥムも彼が一番活きるポジションでプレーできていない。

※ワイナルドゥムのプレーの主な武器

  • リバプールで求められるトランジションの早さ、インテンシティの高さ
  • 推進力の高さを活かした前に持ち運ぶドリブル
  • 中盤からハーフスペースやゴール前に飛び出していく動き
  • クロスに対しての空中戦の強さ
  • 欠点が無いオールラウンダーで、全てを水準以上でこなすことができる器用さ

 

選手層がとても厚いわけではないリバプールに怪我人が続出したこともあって、アンカーのファビーニョはCBを主戦場とするようになり、シーズン途中からは中盤のヘンダーソンもCBにコンバートされるようになった。

これによって代わりにアンカーを務めるようになったのが守備の面である程度計算が立つIHのワイナルドゥムである。

しかし、リバプールファビーニョが行なっていた役割は、片手間ではできないくらい難しく、重要なものであった。

※アンカーにおけるファビーニョの役割と彼のプレーの主な武器

攻撃: ビルドアップ時は相手の第一防波堤(ファーストディフェンダー)の背後や間でパスを引き出して組み立てを補助しながらボールを捌く。

ビルドアップ時以降もバランスを取りつつ基本的にはしっかりとパスを繋いでリズムを作るが、時折、リズムを変えるようなパスを送ってチャンスメイクも行う。(DF陣のようにサイド to サイドのようなロングフィードも用いるが、それよりも短めのミドルパスを多用する)

  • バランスを取りつつ要所で顔を出して補助するポジショニングの良さ
  • 中距離を展開するパス
  • 相手DFラインの背後に落とすようなパス
  • 鋭いスルーパス
  • 弾丸のミドルシュート

守備: 基本的に高い位置にポジションを取るIHとのバランスを取りながら、彼らが剥がされるとその後ろでボールを回収する。

プレス時には中央の広いエリアをカバーし、ブロック時には圧縮して自らもボールを奪取しに行く。

また、SBやCBが出て行ったときのカバーリングも行う。

  • セカンドボールを拾う予測能力とポジショニング能力の高さ
  • カウンターの起点にもなれるマンパワーでボールを奪い切る能力の高さ
  • 地上戦、空中戦共に負けない対人の強さ(インテンシティの高さ)
  • カバーリング能力の高さ
  • ボールを奪いにいくのか攻撃を遅らせるのかなどを瞬時に選択できる状況判断力の的確さ
  • リーチの長さを活かしたタックル

 

確かにワイナルドゥムは沢山のポジションをできる器用で素晴らしい選手であるので、アンカーでも攻守共に水準以上の働きをしているのだが、やはり本職のファビーニョには敵わない。

 

攻撃面では、バランスを取りつつしっかりパスを繋いでリズムを作ることはできているが、リズムを変えるパスはあまり出せていない印象だ。

勿論、出し手というよりはどちらかと言えば受け手である彼にこれを求めるのは酷であり、決して彼に非があるわけでは無いのだが、各駅停車のパスが多く、攻撃が単調になって停滞しているのも現状である。     

 

(      ファビーニョ    ワイナルドゥム

パス成功率     87%                      93%

キーパス本数  0.7                         0.5

ロングパス   2.9                         1.2

ミドルパス   2.4                         1.1

              1試合あたりの平均  )

https://www.whoscored.com/Players/115916/Show/Fabinho

実際、昨シーズンのファビーニョとのパスデータを比べてみても、パス成功率は上回っているが、ロングパスとミドルパスは極端に少ないことから、リスクを回避したパスが多く、相手にとって脅威なるパスをあまり送り込めていない。

 

また、守備面でも、同様に水準以上の働きはできているものの、IHとは微妙に違うポジショニングであったり、どうしてもマンパワーで奪いきれなかったりしてファビーニョのクオリティは出せていない。

 

これらを考えると、怪我人続出の中においてそれなりに良い活躍をしているように見えるし、実際その通りである。

ただ、忘れてはならないのが、推進力の高さを活かした前に持ち運ぶドリブル、中盤からハーフスペースやゴール前に飛び出していく動き、クロスに対しての空中戦の強さなど彼の武器を全く活かせていないということであり、それによって攻撃の厚みが落ちているのは確かである。

 

 

低調な状況を抜け出す改善策〜個人的な見解〜

クロップリバプールらしさの回帰

"そもそもポゼッション化することが困難"で記述したようにリバプールの選手のプレースタイルを考慮すると、やはり完全にポジション化するのは勿体無いし、効果的とも言えない。

恐らく過密日程の影響などから疲労がより軽減されるポゼッションサッカーに移行したのだろうが、その結果チームのクオリティが落ちて優勝争いどころかCL出場権すら危ういのでは本末転倒だ。

過密日程や負傷者続出などから、トランジションに重きをおき、運動量をベースとしたインテンシティの高いプレッシングを特徴とするサッカーで昨シーズンのようなクオリティを出すのは難しいとしてもこのスタイルをベースにプラスアルファとしてポゼッションスタイルも取り入れるべきであるというのが私の見解である。

 

・中盤の選手が高い位置にポジションを取る

中盤の選手がDFラインに降りて低い位置にポジションを取ることを辞めて、高い位置にポジションを取れば、攻撃時に後ろ重心になる、中盤が空洞化する、攻撃に厚みが出なくなるという問題の殆どは解決されることになる。

 

※中盤のポジション

f:id:SaTo_yu99:20210502140231j:image
f:id:SaTo_yu99:20210502140227j:image昨シーズンとのCBの違いのリスクとポゼッションスタイルも少し取り入れるということを考えると、このようにIHがかなり前に出て相手のMFラインの背後にポジションを取るのは今のリバプールにはリスクが高く、難しいかもしれない。

 

f:id:SaTo_yu99:20210502140224j:imageだが、相手のFWラインの背後や中盤の脇にポジションを取ることなら可能であるはずだ。

常に中盤の選手がDFラインまで降りるのではなく、相手のFWラインの背後にポジションを取ってボールを引き出すだけでも、中盤の選手がDFラインに降りて低い位置にポジションを取ることによる弊害はだいぶ解決されるはずだ。

 

実際に、第28節ウルブズ戦では、IHに起用されたワイナルドゥムが自身の特徴を活かしてこの役割を果たせていた。

 

※IHのワイナルドゥムのポジショニング

ファビーニョがアンカー起用されたこの試合は、IHのワイナルドゥムは比較的に下がらずにプレーできる。

f:id:SaTo_yu99:20210502152125j:imageワイナルドゥムは相手のMFラインの脇にポジションを取っている。一瞬3トップの陣形が崩れ、カバクに余裕を持たせてしまったウルブズであるが、カバクはそれを見逃さずにチアゴに鋭い縦パスを入れ、相手のFWラインを突破。

f:id:SaTo_yu99:20210502152112j:imageアゴが持ち前のテクニックで鋭いパスを簡単にトラップして前を向くのと同時にワイナルドゥムは前に走り出してゲートを通すパスが繋がって相手のMFラインを突破。

f:id:SaTo_yu99:20210502152109j:image

ワイナルドゥムが走り出したのと同時くらいにマネが持ち前の抜け出しの巧みさを活かしてダイアゴナルに走り、最終ラインを崩壊させて、相手のDFラインを突破。


f:id:SaTo_yu99:20210502152121j:imageワイナルドュムはやはり相手のMFラインの脇にポジションを取っている。DFラインに降りて受けたファビーニョがフォルス9の動きをしたマネにくさびの縦パスをつける。
f:id:SaTo_yu99:20210502152118j:image相手DFがマネに付いていって対応。ワイナルドゥムが二列目から走り込んで相手CBが空けたスペースを上手く使った。

 

このようにIHがDFラインまで下がらずに、FWラインの背後や中盤の脇にポジショニングすることで、後ろ重心になることもなく、ブロックの中にボールが入るので攻撃に厚みが出て活性化するようになる。更には守備に切り替わっても中盤が空洞化することもなくなる。

 

・選手の配置の最適解を優先させる

リバプールは中盤の選手がDFラインまで降りなければ、基本的にあまり可変することはないので、サラー、マネ、アーノルドの問題は解決することになる。

 

一方で、ワイナルドゥムの起用についてであるが、前述してきた武器や特徴を考えると当然IHでのプレーが最適解であり、アンカー起用には反対であり、従ってファビーニョのCB起用にも反対である。

(当然、クロップもこれらのことなど承知の上で起用しているのだが。)

〔細かい理由は、後述の具体的な戦術のところで触れている。〕

 

・中盤の強度を向上させる

〔これも同様に後述の具体的な戦術のところで触れている。〕

 

具体的な戦術

やはりアンカーのポジションは代えが効かないので、負傷離脱などでDFの駒が不足していても、私はファビーニョをCBで起用することは基本的に反対である。

また、前述したように攻撃に厚みを持たせるために基本的にIHはワイナルドュムとヘンダーソンであるべきだと考えている。

つまり、中盤はファビーニョ、ワイナルドゥム、ヘンダーソンをベースとするべきであると私は考えている。

この起用によってチアゴ、ジョーンズと比べると格段にインテンシティが上がるが、何度も言うように彼らはこのようなオンザボールのプレーだけでなく、ライン間にポジションを取ってのプレーやランニングなどオフザボールでも違いを出すことができる。

 

※再びアンカー起用され始めたCLベスト16 2nd legライプツィヒ戦以降のファビーニョ

ビルドアップ時、ファビーニョは基本的にDFラインまで降りることはなく、第一防波堤(FWライン)の後ろで構えてパスを捌く。

 

2トップでプレスをかける相手に対しては、彼らの間にポジショニングを取ってボールを引き出す。
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f:id:SaTo_yu99:20210511213847j:image2トップの間にポジションを取りつつ、サイドにボールが入っても引き続き相手のブロックの間にポジションをとってボールを捌いたり、時には持ち運んだりする。

彼がアンカーに入ると、中盤がDFラインまで降りてビルドアップする頻度は低くなる。(それでもやはり昨シーズンと比べると高いようには感じる)
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f:id:SaTo_yu99:20210511214809j:imageそのため、中盤の選手がゴール前まで入っていく頻度も高くなった。


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f:id:SaTo_yu99:20210511213853j:imageよってIHが前に押し上げてセカンドボールを回収できる頻度も高くなった。
f:id:SaTo_yu99:20210511214020j:image勿論、バランスを取るのも絶妙でIHのミルナーが下がってボールを捌いている時、ファビーニョはIHの位置にポジショニングしている。f:id:SaTo_yu99:20210511213850j:imageその結果、セカンドボールを上手く回収している。

 

f:id:SaTo_yu99:20210511214014j:image中盤に広大なスペースができてしまったリバプールはカウンターを受けるピンチとなる。ここでファビーニョは後ろのケアを他の選手に任せて自分が出ていくことを選択する。

f:id:SaTo_yu99:20210511214154j:imageパスコースを消しながら徐々に間合いを詰めることでドリブルするスペースを消すことに成功。見事に相手を後ろに向かせてカウンターを未然に塞いだ。

 

※IHのワイナルドュムとヘンダーソン

f:id:SaTo_yu99:20210502140359j:imageIHのワイナルドゥムがライン間にポジションを取る。

f:id:SaTo_yu99:20210502140356j:imageフォルス9の動きでボールを引き出したマネのサポートとなり、彼は前に向けないが、ダイレクトで落とすことによってワイナルドゥムが相手の嫌なところで前を向ける。

 

f:id:SaTo_yu99:20210502155757j:image19/20シーズンのコミュニティーシールド決勝でシティとの一戦では、ヘンダーソンファビーニョ、ワイナルドュムの中盤3枚である。

4-2-4のブロックで激しく圧力をかけてくるシティに対して、4バックのままビルドアップを行うリバプールは、IHのヘンダーソンが降りてボールを受ける。勿論これは一時的なものであるが、ここで重要なのはファビーニョとワイナルドゥムは定位置にいることだ。今シーズンのように中盤の選手が何枚も降りてくるとライン間に選手がいなくなってしまうが、この場合はヘンダーソンが上手くいかないビルドアップに対して臨時で補助したかたちである。
f:id:SaTo_yu99:20210502155725j:image実際ボールを受けてからパスを捌くとすぐにIHのポジションまで戻っているのがわかる。

f:id:SaTo_yu99:20210502155754j:imageシティの巧みなプレッシングからビルドアップの枚数と数的同数とされるがそれでも臆することなく、縦にボールをつける。f:id:SaTo_yu99:20210502155733j:imageこの時、中盤の脇からワイナルドゥムが降りてボールを受ける。相手も素早く寄せたことでワイナルドゥムに余裕はないが、ダイレクトならパスができる。彼の巧みな技術でWGのサラーに落としてボールを前進させただけでなく、前がかりとなっていたシティのプレスを後ろに人数をかけずに剥がしたことでチャンスとなった。


f:id:SaTo_yu99:20210502163510j:imageやはりCBの2枚を中心に4バックでビルドアップするリバプールに対して、4-2-4でブロックを組みながら前に出てくるシティという構図。今度はヘンダーソンもIHの位置にいて、ワイナルドゥムと共に相手の中盤の脇にポジショニングしている。

f:id:SaTo_yu99:20210502163506j:image高精度なボールを蹴ることができるアーノルドにボールが出たタイミングでIHのワイナルドゥムがハーフスペースは走り込むので、相手DFはそちらに気を取られることになる。
f:id:SaTo_yu99:20210502163520j:imageワイナルドゥムのランニングによってサラーは余裕を持ってカットインドリブルをすることに成功。このタイミングで0トップのフィルミーノがフォルス9の動きで降りてボールを受けにくる。

相手CBが食いついてきたので、もう片方のIHヘンダーソンが二列目からフィルミーノが空けたCBのスペースに走り込む。

これぞまさにリバプールといったかたち。


f:id:SaTo_yu99:20210502155748j:image今度はサラーが下がってボールを受けに行き、サラーに気を取られたところにヘンダーソンが内側から走り込む。
f:id:SaTo_yu99:20210502155719j:image相手ゴール前までボールを前進させることに成功。


f:id:SaTo_yu99:20210502155737j:imageCBの2枚を中心に4バックでビルドアップするリバプールに対して、4-2-4でブロックを組みながら前に出てくるシティという構図は変わらず。

しかし、ワイナルドゥムが少し下り目でバランスを取り、ヘンダーソンとフィルミーノが相手の中盤の脇にポジショニングしている。
f:id:SaTo_yu99:20210502155740j:imageそこにボールが入ったので、相手のFWラインとMFラインを省略して突破。

食いついてきたCBに対してヘンダーソンがダイレクトでサラーの裏へパスを出したので相手のDFラインも突破。

後ろからのビルドアップだが、ものの数秒で相手のDFラインまで攻略している。

 

f:id:SaTo_yu99:20210502172310j:image降りてきたフィルミーノが逆サイドのサラーへ展開しようとする。
f:id:SaTo_yu99:20210502172307j:imageしかし、ボールは届かずに簡単にヘディングで返されて、シティはCBからのビルドアップを試みる。

この時高い位置にいるIHのヘンダーソンが前からプレッシャーに行くことでCBはボールをクリアせざるを得なくなった。
f:id:SaTo_yu99:20210502172313j:imageクリアに対して味方競り勝ってボールを再び跳ね返す。

ヘンダーソンがボールを拾ってフィルミーノに落とし、チャンスとなる。

サラーへのフィードが繋がらなくとも自主的にトランジションの局面を作り出すことができたので、リバプールの特徴であり長所であるトランジションに重きをおき、運動量をベースとしたインテンシティの高いプレッシングを最大限に活かせたかたち。

 

オンザボールとオフザボールのどちらにも優れ、高い位置にポジショニングし、クオリティの高いプレーができることで、後ろ重心にならず、攻撃に厚みを出し、守備に切り替わっても中盤が空洞化することもなくなるので、IHからワイナルドゥムとヘンダーソンを外すことはできないと私は考えている。

 

そして、中盤の次の序列はワイナルドゥムやヘンダーソンと似た役割をできるミルナーチェンバレンにするだろう。(実際今現在、ヘンダーソンは負傷離脱中)

 

ただ決してチアゴやジョーンズが戦力外という訳でなく、相手チームや試合状況によっては勿論彼らの方が活きる場面も出てくるので、その時にリズムを変える役割として起用していくべきである。

 

ただ、ここで問題となるのが、DF陣の選手の起用だ。ファン ダイク、マティプ、ゴメスがいないと仮定し、ファビーニョヘンダーソンが中盤として固定されると、CBに入る選手は若手選手しかいないのだが、私はカバクとウィリアムズ、フィリップスの併用でいけるのではないかと考えている。

※カバク、ウィリアムズ、フィリップスの武器とプレースタイル

カバク

  • 身体能力に優れ、高いレベルにあるスプリント、アジリティ、フィジカルを活かした対人守備
  • 前に出て行き、パワーとスピードを活かしてアグレッシブにボールを奪う能力の高さ

スピードを駆使したカバーリングはできるが、ポジショニングや出ていく状況判断力はこれから。

ビルドアップにも大きな問題はない。視野が広く受け手の動きが見えているのだろうが、キック精度が伴わない場面も。

ウィリアムズ

  • 長身を活かしたヘディングの高さ
  • 後ろの向きの相手に対してインターセプトやタックルなどで自由を与えず跳ね返す能力の高さ

ユースでの試合やカップ戦を見ると、リバプールのCBらしいロングフィードや縦パスを蹴れていたが、リーグ戦では降りてくる中盤に簡単につけるシーンが目立つ。

サイドに釣り出されたり、DFラインの裏に走られたりして、相手にスペースなどの余裕がある状態での対人守備やハイラインのラインコントロールはあまり得意ではない。

フィリップス

  • 体格とジャンプ力を活かした圧倒的空中戦の強さ
  • ポジショニングや対人守備、カバーリング、ビルドアップなどCBに必要な能力に大幅な欠点がない万能さ

シーズン序盤は、恐らくビルドアップを苦手としていたのかウィリアムズ同様に降りてくる中盤に簡単につけるシーンが目立ったが、その後得意とまではいかないものの、丁寧にパスを繋いでビルドアップを行えている。

 

なぜなら、ファン ダイク、マティプ、ゴメスと比べるとフィードの精度にこそ違いがあるものの、全員がビルドアップに大きな問題は無いので、可変せずに組み立てることが可能であるからだ。

また、確かにフィードの精度の違いは重要なポイントだが、フィードが通らなくとも、自主的にトランジションの局面を作り出すことができ、中盤にワイナルドゥム、ヘンダーソンファビーニョを起用すれば、リバプールの特徴であり長所であるトランジションに重きをおき、運動量をベースとしたインテンシティの高いプレッシングのスタイルを最大限に活かすことができるので、そこまで大きな問題ではないはすだ。

 

 

私はこれが今後のリバプールの最も理想的なかたちであると考えているが、もう一つ興味深いかたちをクロップが行っていた。

 

それは、第30節のアーセナル戦の61分にジョタが投入されて4-2-3-1のシステムに変更したことである。

怪我の影響とフォーメーションの関係で、マネ、フィルミーノ、サラーとジョタの全員が併用されることは殆ど無く、4-2-3-1というシステムも殆ど採用しないのだが、この試合はそれが実現した。

 

リバプールの4-2-3-1(アーセナル戦)

f:id:SaTo_yu99:20210511224400j:imageサラーが相手を引きつけてアーノルドにパス。この時、フィルミーノが内側を走って相手CBを引きつけることで、アーセナルのDFはボックス内に入るマネとジョタに対して数的同数となった。

その結果、ジョタのヘディングで先制点を獲得することになる。(勿論、アーノルドの超高精度のクロスも素晴らしかったのだが)

 

このシステムはフィルミーノとジョタを同時に起用することで、サイドにおいてWGとSBだけの関係となってハーフスペースに走り込む選手がいないという問題や、そこでSTがサイドに流れると中央で高さを取ったり、クロスに対して合わせる選手がいなくなるという問題を同時に解決するだけでなく、破壊力抜群の前線4枚とSBである程度の攻撃は完結してしまうので、チアゴに少し下がった位置でバランスを取りながらゲームメイクに専念させることができるのだ。

三列目はファビーニョとコンビを組めば補完性も良く、チアゴを上手く機能させるシステムでもあるといえる。

 

私は、勿論、4-1-2-3のシステムで中盤にファビーニョ、ワイナルドゥム、ヘンダーソンを起用する前述したような戦術が最適であるという考えに変わりはないが、チアゴの併用とボールポゼッション、守備のリスクなどを考慮するとこの4-2-3-1も一つのプランとしては良いのではないかと思っている。

 

 

リバプールは今後どうなるのか?

 

ライプツィヒ戦以降の直近の試合では、全てファビーニョをアンカー起用しており、それによってワイナルドゥムをIHで起用できていたので、マドリーにこそ負けてCLは敗退してしまったものの、ウルブズ、アーセナルアストンヴィラと難敵に三連勝し、一時期の不調を抜け出したかのように思える。

PL残り7試合、前半戦でリーズとパレス以外の相手には勝てていないリバプールとはいえ、このまま、ファビーニョをアンカーにしてワイナルドゥムを一列前で起用できると、攻めあぐねて勝ち点を取りこぼすような試合も減少するであろうから、対戦相手を考慮してもCL出場権の獲得は難しくないはずだ。

(文章を記載した4/12の時点では、全てファビーニョはアンカー起用であったが、そのあとのリーズ戦、ニューカッスル戦共にCB起用でどちらの試合も勝ちきれなかった。)

 

 

 

 

4/12