SaTo_yu99’s blog

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プレミアリーグ前半戦総括(1-19節) 〜アーセナル〜


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目次

 

アーセナルの現在の状況
 

アーセナルはアルテタが就任して最初のシーズンであったものの、負けが重なり一時は15位まで沈んでいた。しかし、システムを変更しスミス ロウを起用したことで復調し、直近リーグ戦5試合無敗が続いている。

 

 

アーセナルの戦術
 

近年のアーセナルは、22年間指揮を務めたヴェンゲルが退任する間際から不安定な順位が続き、インビンシブルズと言われ、プレミアリーグ(PL)を代表する屈指の強豪クラブに相応しくない結果に留まっていた。

 

そんな中で、2019年のシーズン途中からシティのグアルディオラの下でアシスタントコーチを務めていたアルテタが監督として就任し、クラブは現在転換期を迎えている。

 

そのアルテタ擁するアーセナルは、5バックを採用すると共に前線でのプレスの改善など守備を整備し、トランジションの早いサッカーを理想としている。

 

f:id:SaTo_yu99:20210124151724j:image 図1

f:id:SaTo_yu99:20210124151728j:image 図2

 

まず前提として、アーセナルのフォーメーションは、攻撃時と守備時で変わるのが特色であるということを知っておかならねばならない。

ダウンスリーや偽サイドバック、フォルス9のようにその場面や状況に応じて選手が配置を変え、一時的にシステムが変化するチームはいくつも存在するが、攻撃時と守備時ではっきりフォーメーションが変化するチームは、殆ど無く、アルテタ色が強く出ている戦術である。

守備時に5-2-3のフォーメーション[図1参照]が、攻撃時は、左肩上がりとなり、サカをIHとする4-3-3又は、サカをトップ下とする4-2-3-1のようなフォーメーション[図2参照]となる。

(サカ→ナイルズ、エルネニー→セバージョス・トーマス、ウィリアン→ぺぺ・サカ、マガリャインス・ホールディング→ルイス・ムスタフィ等、負傷者や相手に合わせて、スカッドが変わるため、これといって決まったスタメンはない。)

 

個人的な予想であるが、恐らくアルテタは5バックをあまり好んで採用したくはなかったはずだ。

しかし、ルイスやホールディングは釣り出されたときの対人守備があまり得意ではなく、アーセナルは守備が不安定であった。

そのため、5バックにして後ろの枚数を増やしつつ、攻撃時は可変して4バックにすることで前に人数をかけられるようにしたのだ。

 

 

この形を基本として、アーセナルは、シーズンを通してどんどん変化している。

単に好不調の波があるように見えるがそうではなく、アルテタなりに試行と修正を繰り返している成長期であり、結果が伴わない試合もあるので、サポーターとしては辛抱の期間のはずだ。

 

今シーズンの中だけでアーセナルは転換期が多くあり、3つに分けることができる。

昨シーズン終盤から5節シティ戦まで(ここでは『I期』とする)、

6節レスター戦から14節エバートン戦まで(ここでは『II期』とする)、

そして15節チェルシー戦から現在19節ニューカッスル戦まで(ここでは『Ⅲ期』とする)、である。

 

アーセナルの波

I期:アルテタ戦術が浸透し始めて好調に

II期:アルテタ戦術の変化と相手による攻略で不調に

Ⅲ期:II期での試行と失敗の繰り返しから見事に修正して好調に

 

この3つの期間の観点からアーセナルの戦術とその変化を説明していく。

 

 

 

攻撃戦術

・ビルドアップ

 

アーセナルは、DF陣やGKが特段優れた足元の技術やキック精度を兼ね備えているわけでは無いのだが、ディフェンシブサードでも恐れずにパスを繋いでビルドアップする。

特にハイプレスを仕掛けてくるチームに対しては、かなり積極的に後ろで回して相手を引き込み、プレスを回避するのがとても上手い。

 

何故、そのような選手で、後ろからショートパスでのビルドアップが可能なのだろうか?

 

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それは、ゴールキックコーナーキックフリーキックのようにかなりデザインされているからである。

 

ビルドアップの配置は、両CBをGKのレノの脇まで降ろし、両SBのティアニーとベジェリンに高い位置を取らせ、Wを2つ並べたような陣形を作る。[図3参照]

 

後ろを3枚にすることで2枚に比べて選手間の距離が近くなり、中盤の2枚が後ろの3枚の間にポジションを取ることでパスコースの角度ができる。

そして、両SBが高い位置を取ることで、更にパスコースの角度ができる。

このようにビルドアップにおいて、受け手が角度をつけてボールを引き出すことが非常に重要だ。

なぜなら、受け手がプレスに行く相手選手とボールホルダーの直線上にいると当然ボールは出すことはできず、相手は一人で二人の選手を抑えることができてしまうからだ。

 

アーセナルのビルドアップの距離と配置 

後ろを両CBの2枚でビルドアップすると、中盤の2枚の選手とスクエアの形になってしまい、ボールホルダーと受け手がプレスにいく相手選手と直線上になってしまい、パスが出せなくなる。

後ろの選手と中盤の選手距離が遠いと、パスコースの角度が深くなりすぎてパスを出しづらくなるとともに、後ろからインターセプトを狙われやすくなる。逆に距離がこれ以上近いと、そもそもパスが回すことが難しくなり、相当高い技術が必要となってしまう。

また中盤を1枚にすると、GKやCBがボールホルダーのときに相手のCFやWGの選手が中盤へのパスコースを限定しやくなり、縦へのパスが入らなくなってしまう。

SBの位置が低すぎると、相手FWがパスコースを切りやすくなるとともに、距離が近すぎて相手の頭を越すような浮き球のパスが出せなくなる。仮にパスが出せたとしても相手FWはすぐに二度追いできてしまう。

このように、アーセナルのビルドアップの時の選手の距離と配置は、それぞれに意図があり、それを考慮して最適に作られている。

 

具体的にみていくと、アーセナルは基本、GKと両CB、そして両DMFの5枚でビルドアップする。

 

※GKを含めたビルドアップ

GKを含めたビルドアップの最大の利点は、必ず一枚多い人数でボールを回すことができる点である。なぜなら、仮に相手が全員にマンマークで守備をするとしても相手GKが誰か選手をマークをすることはないからだ。

そのため、GKがビルドアップに参加できれば、十対十一となり攻撃側が必ず有利となる。

 

この中盤の2枚もビルドアップの中心となることに違和感を感じるかもしれない。

なぜなら、後ろからのマークと横からのプレスで挟まれるためとてもリスキーであり、ボールをロストしたらそのまま失点に繋がるからである。

 

ではどうしているのか?

 

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中盤の2枚は、ボールが入っても1タッチか2タッチですぐに捌くのが基本である。相手のマークが密集したエリアでもダイレクトでのパスなら味方の選手に送ることは可能だ。

5枚には常に安全なパスコースが2つ以上あるように配置されているので、特段優れた足元の技術やパスの精度がなくとも、巧みにパスを回すことができるのだ。

5枚でボールを回し、プレスに隙が生まれたところでSBに展開する。

ここで相手SBが釣り出されたら、曖昧なポジションを取るサカやラカゼットにパスを出したり、前にいるWGにパスを出したりすれば良いし、

釣り出されなければ、ドリブルで持ち運ぶことができ、どちらにしても一気にチャンスとなる。

勿論、前線の選手はスピードとドリブルが持ち味であるため、この状況で防ぐのは簡単でない。

 

 

つまり、アーセナルの後ろからのビルドアップは、敢えて、相手チームを引き込み、ラインを押し上げさせることで、前に広大なスペースを作り、その状況でプレスを回避することで、自らカウンターのシュチュエーションを作り上げているのだ。

 

ゴールキックなど自陣深い位置の時点で、既に疑似カウンターを想定してパス回しを行なっているのである。

 

 

ただ、ミドルサードでのビルドアップは、ディフェンシブサードのビルドアップに比べるとあまりデザインされていない。

 

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基本的に、ジャカがLCB脇に降りるかエルネニーがCB間に降りるかなど、後ろ3枚でビルドアップを行う。

このときも、両SBが高い位置を取り、それによりLWGのオーバメヤンが内側にポジションを取る形となる。

ミドルサードのビルドアップで鍵となっていたのはティアニーやルイスはロングパスだ。ルイスのロングフィード力は世界屈指のレベルでありDFラインとの駆け引きも上手く、快速のオーバメヤンが一気に裏を取ることができるからだ。

また、ロングパスが繋がらなくとも相手DF陣はオーバメヤンが怖いのでDFラインを上げづらくなる。相手のブロックの2ラインが広がれば、ライン間でボールを引き出すのが抜群に上手いラカゼットやサカがよりパスを受けやすくなる。[図5参照]

 

 

 

I期のビルドアップは、このような形で行われていたが、II期になると少し変化する。

 

アルテタの指示なのかそれともジャカの判断なのか理由は定かではないが、ジャカがより降りてくるようになったのだ。

 

f:id:SaTo_yu99:20210212112420j:image 図4

f:id:SaTo_yu99:20210124191949j:image 図6

 

前述したように、このディフェンシブサードのビルドアップは、絶妙な距離で選手が配置されていることによって、特別な技術がなくとも上手くボールを回せていた[図4参照]のだが、ジャカがかなり低い位置まで降りてくるのが増えたことで、相手は自分のマークがはっきりし、マンマーク化することができるようになる。

これで、CFがジャカのパスコースを切りながらプレスに行けば、レノは完全にパスコースを失うことになってしまう。[図6参照]

 

この状況でも、CBとDMFに特段優れた足元の技術とキック精度が備わっていれば、プレスを回避できるし、GKのロングパス精度が世界最高レベルであれば、キープ力のあるラカゼットにパスを送ったり、一オーバメヤンやウィリアンの裏へフィードし、一気にチャンスを作り出せるのだが、あいにくアーセナルはそのような選手を揃えていない。

 

このような事からディフェンシブサードでのビルドアップが上手くやりづらくなってきていたのと、同じくして、アーセナルがディフェンシブサードのビルドアップからの疑似カウンターが得意であるということが、各チームに認知され始めるようになってきた。

このとき、アーセナルミドルサードでのビルドアップも得意としていたら、相手チームは前からプレスに行かざるを得ないが、そこまで得意とはしていなかったので、ハイプレスをかけるのではなく、牽制やリトリートするチームが増えてきた事により、ディフェンシブサードでのビルドアップによる疑似カウンターでの得点パターンは、見受けられなくなってしまった。

 

 

ミドルサードでも引き続き、ジャカのDFライン落ちは行われる。

ミドルサードでジャカが降りるのは、I期も同様にやっていて上手くいっていたのではないかと思われるかもしれない。

しかし、I期では、ビルドアップ時にダウンスリーのように一時的にLCBの位置にポジショニングするのであり、ジャカはあくまで中盤の選手としてプレーしていた。

それに対して、II期になると、ビルドアップ時にLSBに近いようなポジショニングをし、ボールが前進しても固定的にSBのポジションに留まることが多くなったのだ。

これはジャカだけでなくて、エルネニーやセバージョスにも、同様のプレーが目立つようになっていった。

 

f:id:SaTo_yu99:20210126114611j:image 図7

 

また、ジャカ、エルネニー、セバージョスの3人(特にエルネニー)とも、低い位置でボールを受けて捌きたいので、相手がプレスをかけていなくても、CBのすぐ側まで降りてボールを引き出すことが多い。

(両SBが高い位置を取るのでリスク管理という役割もあるのかもしれないが。)[図7参照]

 

※相手が前からくるハイプレスの時ビルドアップでは、逆にエルネニーのポジショニングは気が利いていて良い方向に働く事が多い。

 

f:id:SaTo_yu99:20210125014011j:image 図8

 

これらのことから、元々2枚しないない中盤の2人が低いポジショニングを取る配置となると、前線と後方が分断され、縦にパスが入らないという現象が往々にして見受けられるようになった。[図8参照]

 

このときルイスがいれば、彼はビルドアップを武器とするので、中盤が降りる頻度も減るし、必要のない時に降りてこようとすれば、味方に指示してポジショニングを直させることもできる。

またなんといっても、彼はロングフィードでの一発で相手DFラインの裏を狙い、それによりDFラインを下げさせてライン間にボールを入れやすくすることができるが、マガリャインスやホールディング、ムスタフィはそのようなフィード力を持ち合わせていない。

代わりに彼らは、鋭いくさびの縦パスが非常に得意であるのだが、このような陣形では出しどころが無く、彼らの長所を活かすことはできない。

 

※ダウンスリーのように中盤な選手がDFラインに降りるとどうなるのか。

通常の配置だと、

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4-3-3:2枚の前線の選手がお互い距離を適切に保ちながらアンカーを消してプレス。両WGが両SBをマーク。パスコースがなく、CBでしかボールを回せない。
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4-3-3:2枚の前線の選手が縦関係になり、1人がアンカーをマンマーク、1枚がプレス。パスコースがなく、後ろ4枚でしかボールを回さない。

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4-2-3-1:2枚の前線の選手が2枚の中盤を消しながらプレス。パスコースがない。

 

中盤がDFラインに降りると、

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相手の2枚に対して3枚となり、数的有利に。

尚且つ、SBが高い位置を取ることができる。

それによりWGが内側にポジションを取れ、ライン間でパスを引き出しやすくなる。(相手WGのマークが混乱する。外を気にしすぎると縦はボールをつけられてしまい、中を気にしすぎると高い位置を取るSBにボールが出ると一気に運ばれてしまう。)

・相手の前線2枚がお互い距離を適切に保ちながら中盤を消してプレスをかけてくる。

→3枚で揺さぶり、機を見て縦へくさびのパスが可能に。逆まで展開すれば、相手の前線の脇のスペースにドリブルで持ち運ぶこともできる。

・2枚の前線の選手が縦関係になり、1人がアンカーをマンマーク、1枚がプレスをかけてくる。

→1枚に対して3枚なのでかなり余裕を持ってドリブルで持ち上がることができる。ドリブルで持ち上がることで、他の選手がボールに行くのでマークがズレ、縦へのくさびのパスが可能に。

・2枚の前線の選手が2枚の中盤を消しながらプレスをかけてくる。

→3枚で揺さぶり、機を見て縦へくさびのパスが可能に。後ろ3枚なので中盤の選手に対してより角度が作れる。そのため相手はパスコースを消しつつもボールホルダーへ圧力をかけるのがそもそも難しい。更には中盤の2枚の片方が動いてボールを受ければ相手のパスコースカットは完全に無効化。

 

そもそも、一般的にダウンスリーのように中盤の選手がDFラインに降りるということは、パスコースに角度ができて選択肢を増やせる、それによりSBが高い位置で攻撃参加できる、それによりWGがライン間でボールを受けやすくなる、それにより結果的に中盤にもパスコースができる、というふうにメリットが多く生まれるから採用されているのである。

 

f:id:SaTo_yu99:20210126131649j:image 図9

 

しかし、中盤の選手2枚が低い位置まで降りてきて、SBのポジションを取れば、それは元の4バックとなんら変わりはないどころか、中盤の選手が降りるため、アーセナルの殆どの選手は相手のブロックの外側に配置され、その結果ボールがブロックの内側に入らないという本末転倒の状態になっている。

ひたすらボールがブロックの外を回っていると、当然相手としては非常に守りやすく、これを崩すのはとても難しい。[図9参照]

 

結局、アーセナルがボールを保持はしているものの、決定機は作ることができず、何からのかたちで失点を喫して勝ち点を落としてしまうというお馴染みの展開が増えるようになった。

 

 

では、Ⅲ期でどのように改善されたのか?

 

アルテタは、スミス ロウをトップ下とする4-2-3-1にシステムを変更した。

 

 f:id:SaTo_yu99:20210202143115j:image 図10

 

トップ下を置き、ライン間やサイドに自由に顔を出させると共に、中盤の選手の常時ダウンスリー化を止めて基本は中でボールを引き出させ、状況に応じて一時的に中盤の選手を降ろすことで、ボールがブロックの外を回っていた問題を解決したのだ。[図10参照]

 

更には、ルイスの復帰も大きな影響をもたらした。

前述したように正確なフィードを蹴れるルイスがCBに戻ってきたことで再び、一気に展開したり、裏を狙ったりできるようになったからだ。

 

また、キーパーからデザインされたビルドアップの頻度を大幅に減らし、アバウトに前線に向かって蹴る頻度を増やすようになった。

 

 

※ビルドアップ時の中盤のポジションとスミス ロウによる変化
f:id:SaTo_yu99:20210126150720j:image I期
f:id:SaTo_yu99:20210126144721j:image  II期

f:id:SaTo_yu99:20210128130229j:image Ⅲ期

 

 

・崩し

 

速攻が得意なアーセナルであるが、遅攻に対しては、多彩の崩しの型を持っていない。

 

崩しのメインは、クロスである。

実際、現在までPLでアーセナルのオープンプレーによる得点は16点であるが、そのうち13点はクロスからのゴールである。

 

特にアーセナルは、ティアニー、サカ、オーバメヤンが絡む左サイドでの攻撃を得意としている。

データから見てもわかるように、攻撃が左寄りであることは、明白だ。

 

f:id:SaTo_yu99:20210126154724j:image PL19節までのアーセナルの攻撃サイドの割合

https://www.whoscored.com/Teams/13/Statistics/England-Arsenal

 

ここで特筆すべき選手はサカだ。

元々SHの選手ながら、優れた技術と頭の良さを兼ね備えていることから、LSB、LWB、IH、LWG、RWGと10代ながら、SBより前のポジションは殆どこなせる能力の高さを持っている選手だ。

彼の最大の特徴は、オフザボールに非常に優れていて、ライン間では絶妙なポジションを取り、味方からボールを引き出せることだ。いわゆる捕まえられない選手である。

引き出した後の技術も高く、少々雑なボールでもしっかりとトラップして収めたり、飛び込んできた相手を巧みなトラップで相手をかわしたりすることができる。

また、このような選手には、珍しく、スピードに乗ったドリブルも得意であり、一対一でも積極的に仕掛ける。

 

※サカのオフザボール

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ブロックを形成する相手のライン間にポジションを取り、ボールを引き出すと、

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左足でのワントラップで一気に前を向き、加速する。

 

フィジカルコンタクトや決定力という短所があるものの、今シーズンはかなり彼のところからチャンスを作り出している。

 

※サカの起用法

現段階でサカは、LWBとして攻撃時に中盤に入るのでLWGとIHの間ようなポジションに配置されている。

この微妙なポジションは、オフザボールに優れたサカの能力があるからこそ務まるのであり、彼の能力を良く引き出せるポジションといえる。

実際、中断明け以降PLでのアーセナルの敗戦は11であるが、アストン ヴィラとの2試合を除く9敗は、サカがLWBで起用されていないかスタメンで出場していない試合である。

(近年のアストン ヴィラとアーセナルは相性が悪い。)

また、無得点で終わったドローの2試合のいずれもサカはLWBで起用されていない。

LWBのサカがいかに重要かがわかる数字である。

(IH:攻撃時は良いものの、守備負担が大きくなる。

LWG:相手マークがはっきりするのと、サイドでのプレーがメインとなり、中央でボールに絡んだり、時には逆サイドまで流れたりしにくくなる。

RWG:LWGと同様。右だとカットインがあるものの、ライン間でボールを引き出しても利き足が左のため、前を向くゴール方向へのトラップが難しくなる。

Ⅲ期では、LWBが無いのでRWGでの起用が多く、それなりに上手くいっているので賛否はあると思うが、個人的にはLWB又は、

このような特性を踏まえてトップ下での起用がより彼の良さを引き出ると思うので、ラカゼットとの補完性は未知であるが見てみたい。)

 

そんなサカとティアニーは共に内外を絶妙に使い分けることができるので、彼らのところで上手く崩し、キック精度の高いティアニーやサカからクロス攻撃がメインとなる。

 

※PLでのアーセナルのクロス本数ランキング

1位、サカ→85本 (PL全選手中14位)

2位、ティアニー→80本 (PL全選手中17位)

3位、ウィリアン→71本 (PL全選手中20位)

 

崩しのパターンとしてクロスがメインのアーセナルであるが、前線にヘディングを武器とする選手はいない。

 

ではどのように得点を取っているのか?

 

f:id:SaTo_yu99:20210128021917j:image 図11

 

ニア、中央、ファー、PA角、とクロスに対して、選手の入り方がしっかりデザインされている

 

ティアニーやサカがクロスを上げる体勢に入ると、基本的に、CFのラカゼットがニアへ走り込む。WGのオーバメヤンがプルアウェイの動きで中央にポジションを取り、逆サイドのWGのウィリアンがファーに入り込む。更に、逆サイドのWBのベジェリンがPA角に走り込むので、ボックス内に4人の選手が入っていることとなる。[図11参照]

 

このように、クロスに対してはしっかりと人数をかけつつも、入り方にも工夫がなされている。

 

 

また、からしっかりとプレスをかけて、高い位置でボールを奪い、ショートカウンターの形からの得点も多い。

これはアルテタ就任して以降、重要視されているトランジションの早さをしっかりと実行されている証拠である。

 

 

I期では、これらを上手く体現できていた。

 

 

しかし、II期では、選手の不調も相まってか、これらが上手くいかなくなった。

 

この要因は、大きく分けて3つある。

 

f:id:SaTo_yu99:20210130165319j:image 図12

 

1つ目は、中盤が降りることによる中央の空洞化である。

その弊害として、3列目からの飛び出しやサイドでのパス交換など中盤の選手がフィニッシュワークで絡まなくなり、ブロックを崩すのに、サイドの選手の独力突破や外からのクロス頼みになってしまったのだ。[図12❶参照]

 

しかし、クロス攻撃も上手くいかない

 

なぜなら、前述したようにボールがブロックの内側に入らなくなり、ブロックの外を回ると、相手はスライドが簡単であり、常に視野の中で守備をできるようになるので、ブロックが崩れることはなく、ブロックの外からクロスを上げることになる。[図12❶参照]

 

その結果、I期同様にクロスメインの崩しではあるものの、相手の陣形が整った状態からのクロスとなる。アーセナルの前線にヘディングを武器とする選手はいないので得点が生まれなくなってしまったのだ。

 

また、クロスを上げてもバイタルエリアに人がいないため、ボールを回収して二次攻撃、三次攻撃をすることも難しくもなってしまった。[図12❶参照]


 2つ目は、得意な左サイドでの攻撃の停滞だ。

元々ライン間でボールを引き出すのが得意ではないオーバメヤンが、アーセナルの押し込む展開が増えたこともあって、サイドに留まるようになったからである。

中央でフィニッシャーとしてこそ活きるオーバメヤンにライン間やサイドにポジションを取らせることは決して最適とは言えないのだが、前述したように中央にいてもボールが来ないので自ら流れてボールを受けにいくようなったのだ。

サイドに留まることが増えたことで、結果的に左サイドではかなり3人が重なり、だぶつくシーンも目立つようになった。[図12❷参照]

 

3つ目は、ベジェリンの攻撃参加である。

ベジェリンは元々高い位置で攻撃に絡むのを武器とする選手ではない。

これはI期から多少問題となっていたが、Ⅱ期では押し込む展開が増えたことと中盤が降りてビルドアップするようになったことが相まって、ベジェリンがかなり高い位置にポジションを取って、プレーするようになったのだ。

彼は、クロスやシュートが得意なわけでもなければ、ドリブル突破ができる選手でもないので、右サイドの攻撃も停滞してしまう。

しかも、アルテタの指示なのか、WGのウィリアンやぺぺが外側に張り、ベジェリンが内側にポジションを取る、より高度で難しいインナーラップのかたちを採用していた。[図12❸参照]

 

※SBのオーバーラップとインナーラップ

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オーバーラップ - ボールホルダーの外側を周り、追い越す動き。

基本的な特徴

WGとSBが縦の関係になりやすく、相手選手の視野の中で動きが多くなるので、相手のブロックの中に入り込みにくい。一方で、SBが後ろにポジションを取っているので、ボールを失ったときにDFの人数が担保されていてフィルターとなる事ができる。

SB : 単純に外を回るだけなので、アップダウン系の選手や攻撃があまり得意でない選手に推奨。

大外からのクロスになりやすいので、クロス精度が高いと良い。

WG : SBが外のスペースを使うので、サイドにずっと張ってプレーする選手より、内側にポジションを取って中でコンビネーションなどができる選手が好ましい。また、SBのオーバーラップに対して相手のマークが混乱し、内側のスペースが空くのでサイドとは逆足でカットインもできる選手の方がより好ましい。

チーム : 外からのクロスに対して前線に空中戦の強い選手が揃っていたり、ハーフスペース(相手のCBとSB間でインナーラップの場合SBが走り込むスペース)に走り込むのが得意な中盤の選手がいたりするとより好ましい。

 

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インナーラップ - ボールホルダーの内側を走り、追い越す動き。

基本的な特徴 

WGとSBが横の関係になりやすく、相手選手の視野の外での動きが多くなるので、相手のブロックの中に入り込みやすい。一方で、SBが内側を走り抜けるので、ボールを失った時にDFの人数が少なく、サイドに広大なスペースができてしまう。

SB : WGが外のスペースを使うので、内側にポジションを取って中でコンビネーションできたり、走るコースやタイミングなどオフザボールに優れていたりする攻撃的な選手に推奨。

相手陣内の深くまで入るので、テクニックがあった方が好ましいものの、オーバーラップに比べるとよりゴールに近い位置なのでクロス精度はそこまで重要ではない。

WG : サイドに張った状況が多く、相手SBと一対一もしくは相手WGも含め二対一となることが多いのでドリブルで独力突破できる選手や大外からのクロスが得意な選手が好ましい。

チーム : 後ろからPA内に飛び込める中盤の選手や空いたサイドのスペースを埋めることができる選手がいるとより好ましい。

 

インナーラップの特性を踏まえても、ベジェリンがそのような役割が得意でない選手であるのは明らかである。

 

更には、ベジェリンが内側にポジショニングすることとのWGの補完性も決して良いものではない。

 

ウィリアンは元々ドリブラーの選手であり、縦への突破やクロスを武器としているが、年々その能力は衰えており、代わりに内側でのコンビネーションやライン間でのボールの引き出しを得意とするようになってきている。また、縦にドリブルで突破してクロスを上げたとしても、前述したようにアーセナルの前線に空中戦を得意とする選手はいないので、相手に跳ね返されてしまう。

一方で、ぺぺは独力突破に優れており、左利きでカットインを武器しているが、左足でのプレーに偏っているので縦への突破は苦手である。そのときにベジェリンが内側にいるので、相手DFが内側を抑えるような守り方をすると、中々カットインできず、攻撃が停滞してしまう。

 

 

このように中盤が無意味に降りることで、連動して他の場面や選手にも弊害が起きるようになり、結果、アーセナルの攻撃は単調化し、停滞するようになった。

 

 

では、Ⅲ期どのように改善されたのか?

 

f:id:SaTo_yu99:20210202150444j:image 図12

1つ目の中盤が降りることによる中央の空洞化の問題は、ビルドアップ時にも述べたように中盤の選手がII期よりも高い位置にポジショニングすることで解決した。[図12❶参照]

 

2つ目の左サイドでの攻撃の停滞の問題は、1つ目の中盤の選手により高い位置でプレーさせたことに連動してくるのだが、彼らが中央にいることでボールの動きが活性化するようになったのだ。

そこで、サカを右に、スミス ロウをトップ下に起用し、左右関係なくボールサイドでプレーさせること(特にスミス ロウ)で、ボール回しをより活性化させると共に、オーバメヤンに本来のストライカーとしての役割をさせるためにより内側にポジショニングさせることで、左サイドの攻撃が活性化するようになった。

[図12❷参照](勿論、スミス ロウが中でオーバメヤンが外にいることもある。)

また、ライン間で引き出せる選手がラカゼットとサカしかいなく、彼らも引き出した後に周りのサポートが少なく孤立しがちだったのが、II期までのアーセナルの状況だったが、スミス ロウの起用によって新たにライン間で引き出せる選手が一人増えただけでなく、前線と後方を繋ぐリンクマンとなれる選手がピッチにいることで左サイドだけでなく、アーセナルの攻撃全体が活性化するようになった。

 

スミス ロウの特徴

最大の武器は、サイドに流れて相手のブロックの外でと、ライン間での両方でボールを引き出すことができ、そのときの状況に応じてワンタッチで捌いたり、ドリブルで突破したりと、アーセナルの攻撃のスイッチとなるプレーをできることだ。

本来は、相手にどんどん仕掛けていくドリブラーのタイプであったが、今シーズンはライン間のポジショニングなどのオフザボールの能力とボールを受けた時の状況判断の能力が抜群に上がり、チェルシー戦(Ⅲ期の始まり)で今シーズン初出場して以来、Ⅲ期好調の最大の要因となっている。(マンチェスター・ユナイテッドにブルーノ・フェルナンデスが加入して攻撃がより活性化したような現象に近い。)

また、20歳ながらに、低い位置に降りてきてビルドアップに絡んだりして攻撃のリズムを作りつつもテンポを変えるようなプレーをできるゲームメーカーの側面や、トップ下からゴール前に走り込む二列目からの飛び出しの側面も兼ね備えている非常に万能な選手である。

f:id:SaTo_yu99:20210206104042j:image今シーズンのスミス ロウのプレーエリア

https://www.sofascore.com/player/emile-smith-rowe/867445

このようにデータで見ても、トップ下と中央のポジションながら両サイドをメインに幅広く様々なところでプレーしていることがわかる。

また、アーセナル攻撃の核であるサカとは、ユース時代からともにプレーしている関係であり、コンビネーションは抜群である。

 


3つ目のベジェリンの攻撃参加の問題は、2つ目のサカのRWG起用に連動してくるのだが、サカは前述したようにライン間でボールを受けるのを非常に得意としながらも、ドリブルなど個で打開することもできる選手である。

そのため、当然、サカは内側にポジションを取り、その結果ベジェリンは、低い位置にポジションを取りつつも攻撃時にオーバーラップするというようにⅡ期と比べてより単純になり、自身の武器を活かせる適正な役割をこなせるようになったのだ。[図12❸参照]

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f:id:SaTo_yu99:20210202175511j:image II期の試合でのベジェリンのヒートマップ
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f:id:SaTo_yu99:20210202175503j:image Ⅲ期の試合でのベジェリンのヒートマップ

https://www.whoscored.com/Teams/13/Statistics/England-Arsenal

 

データから見ても、ベジェリンが明らかに外側の低い位置でプレーするようになっていることがわかる。

 

この変化によって、ベジェリンとサカのお互いの武器を活かすことができ、右サイドも攻撃が活性化するようになった。

 

 

このように、中盤のポジションを上げ、サカをRWGに、スミス ロウをトップ下に起用し、ベジェリンに低い位置を取らせるというようにそれぞれの選手の適材適所を考えた配置に修正することで、アルテタはII期で起きていた攻撃面での問題全てを解決したのだ。

 

フィニッシュワーク時の中盤のポジションとスミス ロウによる変化

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f:id:SaTo_yu99:20210206135409j:image I期

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f:id:SaTo_yu99:20210206135544j:image II期

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f:id:SaTo_yu99:20210206141207j:imageⅢ期

 

 

 

守備戦術

 

前述したようにアルテタは、就任当初まず守備の改革に取り組んだ。

具体的には、トランジションの強化、プレッシングのデザイン、システムを5バックにしてCBの枚数の増加、などである。

また、今シーズンから昨季までブレントフォードでセットプレーをデザインしていた専門のコーチを招聘し、改善を試みた。

その結果、昨シーズンはセットプレーからの失点ワースト3位の15点と大きな失点源だったのが、今シーズンは前半戦終了時点で僅か2点とリーグトップの少なさとなった。

 

 

・プレッシング

 

f:id:SaTo_yu99:20210206144144j:image 図13

 

5-2-3のシステムを採用していたI期とII期では、相手のバックラインに対して3トップでプレッシングを行い、後ろの選手が連動して圧力をかけていた。

前線3枚が剥がされるとWBや中盤が積極的に出てボールを奪いにいき、後ろがそれに連動してマークをスライドし、対応していた。[図13参照]

よくハードワークする両WGは、前線でプレスが剥がされてもスプリントしてプレスバックを行い、より相手に圧力をかける。

 

このような積極的なプレッシングにより、相手チームは後ろからのビルドアップに苦戦していた。

実際、アーセナルは前からの積極的なプレスでボールを奪取し、そのまま得点に直結させるシーンが何度も見受けられた。

 

f:id:SaTo_yu99:20210206144325j:image 図14

 

一方で4-2-3-1に変更したⅢ期では、両WGがサイドに、スミス ロウとラカゼットが中央にポジションを取る4-4-2のような布陣でプレスを行う。

両WGは、相手のSBのパスコースを切りながら牽制し、ラカゼットとスミス ロウのどちらかが相手の中盤の選手1人のパスコースを切りながらプレスをかけ、どちらかが相手の中盤の選手もう1人に付いてパスコースを消して牽制する。[図14参照]

 

f:id:SaTo_yu99:20210206162022j:image 図15

 

ボールがサイドに流れると4-4-1-1の布陣となり、ラカゼットかスミス ロウがトップ下の位置にポジションを取ってボールホルダーのパスコースを消し、WGの選手と挟み込むようにしてボールを奪いにいく。[図15参照]

 

 

・ブロック

 

f:id:SaTo_yu99:20210206162731j:image 図16

 

基本は、5-4-1の布陣でブロックを作る。

CBが3枚と後ろの枚数が揃っているため、縦にくさびのボールをいれられてもCBが積極的にボールホルダーに潰しに行くことができる。

両WGはボールが自分のサイドにあるときは、しっかり牽制をしつつ、相手に自陣深くまで押し込まれるとボックス内までしっかり戻って守備をする。[図16参照]

また、ラカゼットもかなりハードワークできる選手なので、必要に応じて後ろまで下がり、全員でブロックを形成することもあった。

 

ただここで問題が二つ生じる。

一つは前線の選手が下がりすぎるのでカウンターができなくなるとともに攻め続けられること

もう一つは5-2-3というDFが多くてMFが少ないシステムの守備の弱点を補えていないこと、である。

 

1つ目の問題についてであるが、CFや両WGがしっかりと戻ることで守備ブロックがより強固になる一方で、前線の枚数がいなくなりボールを奪ってからの素早いカウンターはできなくなる。

ただ、I期では、全員で守ってもゴールキックにすれば、そこから疑似カウンターができていた[図4参照]ので、そこまで問題にはならなかった。

しかし、II期では、前述した通り、疑似カウンターもできなくなり[図6参照]、ゴールキックも回収されてしまうことが多くなったのでボールを回収できず、二次攻撃、三次攻撃と相手に攻め続けられてしまう状況が増えてしまった

 

f:id:SaTo_yu99:20210206171727j:image 図17

 

続いて2つ目の問題についてである。

そもそも5-2-3の弱点としては、中盤の人数が少ないことと、後ろに人数が多いためラインコントロールが難しいことなどが挙げられるが、攻め続けられることの増えたII期では、特にこの弱点が目立つこととなった。

後ろのラインコントロールが統一されずにオンサイドでシュートを打たれてしまったり、MFの2人が中央のバイタル近辺にいて、誰がボールサイドのフォローに行くのかがはっきりしていないので簡単に崩されてクロスを入れられてしまったりしていた。[図17参照]

 

また上記のように、5バックのメリットとしてはCBが3枚いるので、CBが後ろから積極的にボールにチャレンジできることであったのだが、CBがボールにチャレンジしすぎて釣り出されて(特にサイドに人数をかけて攻撃を行う相手に)、WBのサカやベジェリンとポジションが逆になり、彼らWBが内側の守備をして、CBが外側の守備をしているという場面も目立った。

当然ながら、大外を守るWBと内側を守るCBでは役割が異なるので、WBに内側をカバーさせるのはリスクが伴う。

ここで、釣り出されたCBがボールを奪うか、奪えずともクリアやタッチラインに逃げるなどができれば良いのだが、これを回避されて崩されるシーンがたびたび見受けられた。[図17参照]

 

アーセナル3バックのホールディングとマガリャインスとティアニー

ホールディングは、そもそも対人が強くなく、相手の個人の能力が高いとシンプルに剥がされる。

ガリャインスは、対人も強くてかなり出ていって相手を潰すことができるが、彼が出て行ったスペースのカバーリングがあやふやでデザインされておらず、パスなどで上手く繋がれて剥がされることがある。

(現在のアーセナルは、マガリャインスがDFの主軸となっているが、ディフェンスリーダーの相方としての方がより能力を発揮できるようにも思える。)

ティアニーは、本職がSBであるように元々CBの選手ではない。攻撃の時に可変して高い位置で違いを作れるという面では非常に欠かせない選手であるが、守備面でスペースのカバーリングや対人を武器としている選手ではない。

 

また、幾度となく取り上げている中盤が降りることによる中央の空洞化問題は、守備時にも影響する。

中途半端にボールを失うと、中央にストッパーとなる人がいないので一気に持ち運ばれてカウンターを食らうこととなる。[図9参照]

このとき、両SBはかなり高い位置をとっているので(前述したように右のベジェリンは内側に入っているので特に)、CBが出て行って守備をしないといけなくなり、結果、上記したCBがサイドに釣り出される問題ともリンクして、カウンターから危ないシーンを迎えることも増加してしまった。

 

 

では、Ⅲ期でどのように改善されたのか?

 

f:id:SaTo_yu99:20210214110829j:image  図18

 

これは、前述したようにシステムを4バックにして、

状況に応じてこそ下がるものの、WGやトップ下、CF全員が、ブロックの深い位置まで下がるということは無くなった。

これにより、ボールを回収しやすくなったため二次攻撃、三次攻撃と攻め続けられにくくなるだけでなく、自らのカウンターにも備えられるようになって、1つ目の問題を解決した。[図18参照]

 

また、DFの選手を削ってMFの選手を増やした4-2-3-1のシステムを採用したことで、三列目の選手がスライドしてよりサイドまで出て行ってカバーできるようになったのとともに、4バックなのでCBがそこまで積極的にチャレンジしなくなって(相手のカウンター時など守備の人数が足りていないときも大外を捨ててSBが絞って対応)、2つ目の問題を解決した。[図18参照]

 

※ディフェンシブサードでのWGの守備

元々深くまで戻っていたWGが戻らないことでボールを回収しやすくなり、カウンターにも備えられるようになったのだが、そもそも守備ブロックが脆くなるのではないかと疑問に思うかもしれない。

f:id:SaTo_yu99:20210214110829j:imagef:id:SaTo_yu99:20210214120510j:image

これはアーセナルに限らずであるが、DMFがスライドしてサイドまで出て行って守備をすると、基本的にはもう一人のDMFとトップ下が中央のスペースを埋める。

この時、更に、ボールサイドではないWGがある程度絞ってスペースを埋めるのだが、ここで重要なのは自分のマークとの距離感である。

どういうことかというと、自分(WGの選手)はセカンドボールを拾ったり、カウンターに繋げられたりできるようにある程度前にポジショニングするが、相手がサイドチェンジなどで大きな展開をしてくる場合や、クロスに逆サイドのSBが飛び込んでくる場合には、備えられるような距離にいるということだ。

ボールを奪ったら素早く前に出て行けるが、展開されたときはボールの移動時間でスプリントして戻れる距離ではある絶妙なポジションを取ることで、守備ブロックが脆くなることを防ぐ。

 

 

前線の選手のブロック時のポジショニング

f:id:SaTo_yu99:20210211180149j:image I期、II期
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f:id:SaTo_yu99:20210211180155j:image Ⅲ期

 

 

選手

MVP

ブカヨ・サカ

上記で述べた通り、オフザボールのポジションがずば抜けて上手いが、ドリブルで仕掛けるなどオンザボールでも違いを見せられるアーセナルに欠かせない選手。


印象的な選手

エミール・スミス ロウ 

上記で述べた通り、アーセナル復調最大の立役者。


注目選手

エンズリー・ メイトランド・ナイルズ

エメリ時代から徐々に起用され、アルテタ就任以降はサカと同じく、I期に可変システムで重宝されていた。

現在の本職はSBながらも、ユース時代にやっていたWGや、アルテタ就任当初は偽サイドバックもこなしていたことから中盤のポジションなど、CBとCF以外はどのポジションもこなすことができる能力の高さを持っている。

長所は、そのユーティリティの高さと、オフザボールのポジショニングが良く、ライン間でボールを引き出す上手さ、そしてプレミアでも屈指のレベルのスプリント力である。

それだけではなく、持ち前のスプリントを活かした推進力を武器にサイドや中央など関係なく、ボールを運べる強さがある。

一方、クロスや守備能力はあまり得意であるとはいえないので、起用法は少し悩むところである。

実際、ナイルズ自身もあまりSBやWBでプレーしたくないと表明しており、その関係と練習態度の悪さが重なって、現在はスタメンから遠のいている。(アーセナルはSBの選手が負傷者も出ていて人が足りていないが、中盤やWGには名手が揃っていて、ナイルズといえどもスタメンを確保するのは簡単でない。)

実力とポテンシャルはあるだけに、今後は自身の考えを改めてSBとしてプレーするのか、それともより能力を上げてWGとしてプレーするのか、はたまた他のクラブに移籍するのか、今後の動機に注目である。

 

 

今後の展望

 

現在もまだ本来の順位とは程遠い位置にいるアルテタ率いるアーセナルであるが、試行と修正を繰り返して、確実に進歩していっていることは確かであるので、目先の結果ではなく、長い目で見ていくことが大切である。

 

ただ、リーグでの優勝は難しくなってきており、CL圏内も少し危ういように目標が難しい順位であるが、グループリーグ全勝と圧倒的な強さを見せて決勝トーナメントに勝ち進んだELは、アルテタがトーナメントを得意としていることも相まって、期待ができる。

 

 

選手の起用法について私は、今も上手くいってはいるものの、新たなオプションとして、ラカゼットとサカをよりチームの核として起用しても良いのではないかと思う。

ラカゼットはリヨン時代ストライカーとして名を馳せた選手であるが、アーセナルに加入してオフザボールを磨き、中盤に降りてきてボールを引き出すフォルス9のような技術を向上させた。

更に、ダイアゴナルに走り込むのが得意であるオーバメヤンやマルティネッリ、サカなどの選手がいるものの、ラカゼットを0トップとした起用はあまり見られない。

彼らで3トップを組ませ、ラカゼットが降りてきたスペースにWGがダイアゴナルに走り込むような攻撃のデザインがあっても面白いかと私は思っている。

 

※0トップとは

0トップとは、バルセロナ時代メッシを活かす戦術としてグアルディオラが浸透させたCFが下がってゲームメイクに参加する戦術のことであり、その特性からフォルス9や偽9番とも呼ばれる。

CFが降りることでマークが混乱し、フリーになりやすいのが特徴だ。

フリーにさせまいとCBが寄せてきたらスペースが生まれ、そこにWGがダイアゴナルに走ることで得点チャンスとなる。

偽9番のCF:タイミング良く降り、ボールを捌ける能力。当然、DFを背負ってのプレーが多くなるので、背負ってもプレーできるフィジカルや背負っても失わないテクニックも必要。

(例-グアルディオラ時代のメッシ、リバプールのフィルミーノ、マドリーのベンゼマ、今シーズンのスパーズのケイン)

→ラカゼットは、タイミング良く降り、ボールを捌けるのは勿論、強いフィジカルからポストプレーもでき、さらにはトランジションの早さやプレスバックなど守備でも貢献できる。

偽9番のときのWG:CFが空けたスペースにダイアゴナルに走り込めるオフザボールの技術。IHが二列目から飛び出すパターンもあるが、基本はWGができるのが好ましい。

(例-グアルディオラ時代のペドロ、サンチェス、ビジャ、リバプールのマネ、サラー、マドリー時のロナウド、今シーズンのスパーズのソン)

 

サカについては、彼は将来世界屈指の選手になるポテンシャルを持つ選手である。

アルテタは、誰かを特別扱いしチームの中心とすることを好まない監督ではあるため現実味には少し欠けるが、サカを中心とするチームを作っても面白いのではないかと私は思っている。

 

サカ以外にもアーセナルは、世界でもトップクラスでポテンシャルの高い若手がたくさん在籍している。

 

彼らの今後の成長して、どういう風にレギュラーとなっていくかも今後楽しみである。

 

 

 

 

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