SaTo_yu99’s blog

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マンチェスターユナイテッド vs クリスタルパレス PL 第1節  〜試合の考察とユナイテッドの課題〜

まず試合の第一の印象としては、ユナイテッドのコンディションがあまりに上がっていないである。

チームとしてパスの連携や守備の連動が上手くいっておらず、トランジションもかなり緩かった。

特にポグバやリンデロフは、万全な状態とは程遠いように感じた。

これに関してはチームでの練習期間が例年に比べて圧倒的に短いままシーズンが開幕したのと、それと同時にオフが短かったことで昨シーズンの過密日程による疲労が完全に回復していないことが少なからず影響しているはずだ。

スールシャール監督もコンディションが整い、チームとして上手くいくようになるまで1ヶ月程かかるという趣旨の発言をしている。

 

 

ただ一方で、私はパレスが良かったようにも感じた。走力、集中力が最後まで続く守備的な4-4-2、これがパレスに落とし込まれてて驚いた。
このフォーメーションの特徴は、FW、MF、DFがスリーラインで揃ってて且つコンパクトにして、サイドをスライドでカバーする戦術である。
去年もパレスと言えば守備的というイメージは変わらないと思うが、ミリボイエビッチをアンカーに置き、ザハが左サイドの4-1-4-1がベースだった。アンカーが増えて守備の人数かけられるからそっちの方が引いて守るには良いと思うかもしれない。

しかし1トップであるとCBへのプレスが難しく、コースカットだけになってしまうことが多い。両ウイングが連動して出て行くと中盤足りなくなってスライド間に合わない時が来る。

だから1トップである程度引くチームだとCBからどんどんボランチorアンカーにパス入るようになって結果的に崩されるパターンが多い。
ユナイテッドはブルーノフェルナンデス加入後この相手には勝てるようになってきていた。


しかし、今回のパレスはFW2枚が牽制程度でプレスに来なくてダブルボランチのパスコースをカットする、サイドハーフも絞って中固めてサイドにボールが出たら全員でスライドが徹底されてたんでブロックの外をずっとボールが回っている場面が非常に多かった。[図1、図2①参照]

f:id:SaTo_yu99:20201016155559j:image 図1   f:id:SaTo_yu99:20201016155616j:image 図2

中堅クラスのチームの場合これが上手く行っても0-0、若しくはどっかで失点して0-1とかのパターンになる事も多い。
実際、昨シーズンまで4-1-4-1でザハがサイドにいたので、前線1枚のアイェウにボールが渡っても直ぐ回収されてしまい、結果的にまた失うという繰り返しでパレスは中々点が取れてなかった。

 

だが、今シーズンはアイェウとザハが前に2枚残っていて、彼らはサイドに流れて仕掛ける事もでき、後ろからシュラップorエゼとタウンゼントが来るってこと考えると選手の特徴を活かしたパレスに合った合理的な戦い方であると感じた。

これらをホジソンが意図して行なっているのかどうかはわからないが、個人的には極めていけばアトレティコのようなチームになり得るのでは無いかと思う。

 

また、ラッシュフォードとショーの位置関係も良いものではなかった。

彼らの位置関係の問題はこの試合に限ったことではない。ビルドアップの時や押し込んだ状態でも尚、ラッシュフォードとショーが縦に2人並んでしまっているのだ。これはユナイテッドの試合を観ていれば、度々ある事だ。引いてブロックを固める相手にこの状況ではラッシュフォードにボールが渡った時、相手SBと戻ってくるSHと2対1の状況になってしまう。

そのためラッシュフォードの独力突破に頼る事になってしまってるというのが現状だ。

無論、彼のドリブル突破は魅力的であり、名だたるディフェンダーを何度も無力化にしてきたが、2人相手にそう何回も抜ききることは容易ではない。しかも今回の相手は引いてブロックを作り守っているため、なかなか相手選手が飛び込んでくることも無く、ブロックの内側のスペースは狭いため、この条件下で1試合に何度も突破することはかなり難しい。

その時、ショーは後ろにいるだけなので相手にとっては何の脅威にもなっておらず、結局ラッシュフォードも後ろに下げるしか出来ないので、ボールを支配していても相手を脅かす状況が作れなかったのだ。

[図2②参照]

 

しかし、逆サイドはさらに酷い状態だった。フォスメンサーの1stチョイスについてはワンビサカがコロナ関係でコンディション含めて厳しかったから仕方ないだろう。だから、右WGにダニエルジェームズを起用した。

普段先発のグリーンウッドは基本的に中央でのボールを受けたりプレーする事が多く、その方が彼の得意なシュートも活きてくる。また時折、逆サイドまで流れてプレーすることもある。だから右SBは高い位置を取らなくてはならない。そもそもこの役割をワンビサカにやらせて良いのかという問題はあるが、フォスメンサーであると更に難しいとスールシャールは考えたから、サイドに張って仕掛けられるジェームズを起用したのだろう。

だが、この起用は全く機能しなかった。ジェームズのドリブルは、サイドに張った状態から自身の前に広大なスペースがあってこそ並外れたスピードを活かせるのでとても脅威になるのであり、引いて守るスペースが無い相手には彼の特徴は出しにくい。[図2③参照]

勿論、左サイドと同様にWGとSBが縦関係になる事で崩せないという状況もできていた。

流石にスールシャールもハーフタイムでジェームズを下げたが、パレスがブロックを作り引いて守る相手であるということは対戦前から予想できたはずだ。

このような所がスールシャールが準備力、相手に対する戦術が無く、選手任せと言われてしまう要因であり、相手によってやり方を変える事ができずに勝ち点を落としてしまう試合が多い原因である。

 

 

ではどうすれば良かったのか?個人的な考察ではあるが、説明していこうと思う。

フォーメーションや根底の戦術、選手の意識やポジショニングをこの試合だけで変えることは現実からかけ離れるので、今回の考察は昨シーズンを踏まえつつ考えるとする。よって並びはいつも通りの4-2-3-1だ。

 

メンバーからいくと、私はリンデロフでは無く、スピードがあるバイリーを起用する。ザハ、アイェウ、エゼ等のスピードに付いていけるというのが主な理由だが、ユナイテッドのCBであるリンデロフ、マグワイア彼ら両方ともスピードに欠けるため、バックラインが上がりきらなかったり、1人前に出て行った後のカバーだったり、サイドにつり出されてスピード勝負になった時だったり、とどうしてもスピード要素が必要になってくるので、基本的に1stチョイスはバイリー、マグワイアのコンビが良いと思う。

特に今回の試合はパレスの前線にヘディングの得意な選手がいるわけでは無いため、バイリーのCBにしては空中戦がそこまで強くないという弱点や、前からハイプレスで来るわけでもないので足元の技術がそこまで高くないという弱点も出にくかったはずだ。

 

次に右SBであるが、ワンビサカを起用できないと考えると、ダロト又はブランドンウィリアムズを起用する。

確かにフォスメンサーは身体能力に優れていて守備の強度が高い良い選手ではあるが、今回のように相手が引いて守ってくる事が予想される試合で、高い位置を取り、相手を交わして精度の高いクロスを上げたり、その状況やWGのポゼッションに合わせてオーバーラップとインナーラップを使い分けたりと攻撃で違いを見せれる選手ではない事は明らかである。

そのため、攻撃的なSBを選択した。クロス精度の高いダロトと、内外走り分けられるウィリアムズと特徴は2人で異なるので、どちらを使うかは迷いどころだ。彼らのコンディションにもよるが、ブロックを作って中を固める相手に対して、ユナイテッドの攻撃陣はヘディングがとても強い選手がいないということを考慮すると、ウィリアムズを起用するだろう。

 

これに連動して右WGは基本のグリーンウッドに戻して使う。

 

ダブルボランチに関して、マクトミネイでも非常に良いのだが、この試合はある程度両SBが攻撃参加し高い位置を取ることが想定されるので、よりバランスを取れてカウンターの芽をつぐむことができるマティッチを先発で起用する。

他のところは特にいじらずにいつも通りのスカッドで挑むだろう。

 

f:id:SaTo_yu99:20201014182200j:image 図3    f:id:SaTo_yu99:20201016155616j:image 図2

 

このように引いてブロックを作り守る相手にはライン間でのクサビとサイドチェンジ等での揺さぶりが効果的である。

ハーフタイム、前半の内容を踏まえると、私ならやり方を変えるだろう。(0-1でリードされてることも踏まえて)

 

選手は交代させないまま、攻撃時可変3-4-3になるような形を取らせる。[図3参照]

 

まず、課題であったダブルボランチ2枚が2トップに抑えられているという点であるが[図2①参照]、これはマティッチにアンカーのポジションを取らせて、2トップの間で受けれるような形にする。

このようにすると、2トップのプレッシングが前半と同様であれば、マティッチが間で受けてボールを持ち運んだり、展開したりすることができる。

マティッチを見るために両FWが絞ったら、ラッシュフォードやグリーンウッドがライン間でボールを受ける事ができるし、相手FWの1枚がマティッチに付いたらバイリーやマグワイアが持ち運ぶことができる。

また、中を固めスライドで守備をする相手にはロングボールで展開して揺さぶり、それを繰り返すことでスライドのズレを作ることが効果的であるが、ユナイテッドのCBに正確なフィードを蹴ることができる選手はいない。

そのためにポグバをディフェンスラインに落としてビルドアップに参加させる。彼は世界トップクラスのロングキック精度を持ちあわせており、大外に張らせたSBのショーやウィリアムズの足元にボールを送ることは難しくないはずだ。更には、ラッシュフォードやグリーンウッドの裏を一気に狙っても面白いかもしれない。

以上により、ダブルボランチの1枚をアンカーに、1枚をバックラインにすることは、一石二鳥なのだ。これは状況によって、マティッチとポグバが逆になっても言えることだろう。

 

この時、ブルーノをフリーマン化させて自由な所に顔を出させることで、より良いアクセントとなるはずだ。なぜなら、彼は頭が良く、その時その瞬間の最適なポジションを取ることにとても優れているからだ。

図3で、彼は中盤にいるが、サイドで張ったり、ライン間でボールを受けたり、降りてきてビルドアップに参加したりと状況や相手によって様々な場所や局面でチームを助けることができる。

 

次に、両サイドのWGとSBの位置関係についてであるが[図2②、③参照]、これは両SBに高い位置を取らせて、WGが中に入ってシャドーのような形にする。

このようにすると、ライン間でボールを受ける選手がいて、相手の守る4-4のブロックの中にボールを送り込むことができるようになる。

こうして、SBが幅を取ることで、ラッシュフォードやグリーンウッドはよりゴールの近くでドリブルが仕掛けられるようになり、彼らの良さをより活かせるようになるのだ。たとえ前を向けなくともブルーノやポグバにボールを落とすことで次に繋がる展開を作ることができるようになる。

サイドにボールが入ったときもSB、WGとブルーノ又はポグバでトライアングルを作り、ボールを動かせば、彼らの類い希なるアイデアとそれに伴う技術で、面白く意外性のある崩しを見ることができる。

また、状況によって、WGが幅をとっていてそこにボールが出た時には、ショーやウィリアムズが内側を取り、インナーラップをしなければならない。これによりラッシュフォードやグリーンウッドのカットインをより活きるようになるだろう。

 

ただ、実際問題として、ラッシュフォードのオフザボールがあまり上手くないという難点がある。

普段のWGの時でさえ、味方と被ってしまいスペースを消してしまったり、ボールを引き出せなかったり、たとえ引き出せたとしても相手の視野の中や後ろを向いた状態が多くて良い体勢でボールを受けることができなかったりと、ポジショニングが的確でないことが度々ある。

CFを任されている時には、ポジショニングが悪く、ボールに触らないため試合から消えてしまっていることもあった。

確かに、彼はまだ若く、ポテンシャルや才能は間違いないので、この部分はこれから改善されると信じているが、今この試合においていうと、普段よりもオフザボールのポジショニングが重要になってくるシャドーで使うのは厳しいのかもしれない。試合の経過を見てだが、ラッシュフォードがあまり機能しなかった場合、私は直ぐに交代枠を使う。

彼の場所に今夏加わったファン・デ・ベークを投入するだろう。ファン・デ・ベークのシャドーのイメージはあまり無いかもしれないが、アヤックスの時の彼は、トップ下で自由に動き、ライン間にボールを引き出す動きが上手だったので、これらをユナイテッドでも見せてくれるだろうと期待しての起用ようである。

更には、ブルーノと状況に応じてポジションを入れ替える事で、彼の最大の特徴である後ろからゴール前への飛び出しも活かすことができるはずだ。

オフザボールが良く、ライン間でボールを引き出すということに関していうとユナイテッドにはもう1人得意な選手がいる。

ファン・マタだ。彼は、よく右サイドで使われているが、サイドに張らずに自由に動きながら中でのプレーを得意としているため、途中でグリーンウッドと交代させることで流れを変えてくれるかもしれない。

 

以上が試合を見ている中で感じた個人的な考察である。

私は、決してスールシャール監督解任派ではないが、開幕戦からあまりにも戦術的な準備や修正が見えなかったため、1サポーターとして不安である。

前述したように、確かに選手のコンディションが上がっていないという実態はあった。今後、選手のコンディションが上がっていったとき、ユナイテッドがどのように昨シーズン終盤の勢いを取り戻し、新たに新加入選手を加えて、どこのように優勝争いをしていくのか、不安と期待に胸を膨らませながら見ていきたい。



2020  9/24